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07 ノー・スモーク・ノーライフ No smoking no life

さぁ…何のパロが仕込まれているでしょうか

 アズサ=バトン先輩との対人訓練から数日。

俺は意識を取り戻してから最大の問題に直面している

そして今、それを打開するべく無い頭をひねり

深夜にLHC社私兵の兵舎ビルを目指していた。


 俺には外出制限がかけられているものの

LHC社の施設内に有ると言う事で

何とかこの兵舎は活動可能範囲に入っている。


「アン…目的の部屋は?」


「3階の東側…304号室デス…」


「了解…」


「アタル…本当二やるんデスか?」


「あぁ…もう限界だ…

 現状ではこれしか手段が思いつかない…」


「ソウですか…正直、私はドうかと思いマスが…」


 アンの言わんとしている事も判る…

しかし俺はもうこの現状に耐えられないのだ…


 そうこうしているうちに

目標の部屋の前までたどり着いた。


「アン…どうだ?」


「室内に生体反応ガ有りマス…目標かと…」


「よし…この時間にして正解だったな…」


 部屋の主はルドルフ=ヤン、

訓練初日絡んで来た同じ隊の懲役兵だ。

コイツなら今の俺の状況を打開できるはずだった。


「ベルを鳴らしマスか?」


「いや…拒否されたりしたら面倒だ…

 奇襲をしかける…解錠してくれ…」


 本来なら施設内でのハッキングはご法度

しかしアンも止むおえないと思っているのか

言われるがままハッキングを開始する


「解錠出来まシた…」


 アンの言葉と同時に

解錠を知らせる小さな電子音が鳴る、

しかし室内のルドルフは気づいている様子はない


「行くぞ!!」


 そう言って俺達は勢いよく部屋に入る


「───っな! お前ら!!」


 室内に入ってすぐルドルフはこちらに気づいて

飛び出してきた、だがそれも予定通り…

むしろ気づいてもらう為に派手に入ったのだ


 ルドルフと視線が合う、すかさず俺は

古来より伝わる奥義を繰り出す

おそらく同じアジア系のルドルフには

効果があるはずだ……………それは…



 ─────土下座!!



 構えを取ろうとしていたルドルフも

俺の奥義に面を食らい、硬直している


 さぁ…ここが正念場だ……

一瞬でかつ明確に俺の意図を伝える方法

そんな場合はシンプルが一番だ…

だから俺はこう言い放った…



 ────タバコくださいっ!!













「──っで…そんな事の為にアンタ等は

 俺の部屋に不法侵入をして土下座したと…?」


「まぁ…要約するとそうだな…」


 呆れ顔をしているルドルフの横で

俺は約3週間ぶりになる至福の一服を堪能していた。


「なんで俺のとこな訳よ?」


「お前が喫煙者だと小耳に挟んでな…」


 俺が生きていた時代でも喫煙者多くなかった

ましてや月では空気を汚し健康を害する烟草など

百害あって一利なしの趣向品。


 しかし150年経った今でも価格は上がったが

ごくごく少数の愛煙家が存在している

一体、人類はどれだけ烟草が好きなのか…


 そんな事を考えながら煙を吐き出すと

ルドルフが尋ねてくる


「アンタ…レベル4以上だろ?

 欲求制御とか出来るんじゃねぇの普通?」


「いや…これは無理だった…」


 そう言ってアンの方を見ると

同意するようにモノアイが明滅する


「痛覚や各種欲求ハ私の方で

 バランスを取ル事ができるのデスが

 何故かこれだけは無理だっタようデス…」


「なんだそりゃ…

 最高の支援ユニットAIなんて言わてるけど

 そんな事も出来ないんじゃ大した事ねぇな」


 そう言ってルドルフはアンに紫煙を吹きかける。


「目が! 目ガァァー!!」

「いや…アンタ…目しかないだろ…」


 的確で鋭いルドルフの突っ込み…

それに激しくランプを明滅させ抗議の意を示すアン

しかし俺はこの目玉の抗議の真意を悟り通信で諌める


 《アン…普通のヤツには判らないから

  会話に仕込むのはやめろよ……》


 《……さテ…何の事でしょウ…?》


 俺とアンの間に流れる一瞬の間、

当然、ルドルフには俺たちの通信は聞こえていない

そんな俺達をルドルフは不思議そうな顏で眺めるのだった。



「そう言えばアンタ…酒は飲めるのか?」


 暫く、隊の話しや世間話をしていると唐突に

ルドルフが聞いてきた


「あぁ…酔えるかどうかは判らんが

 昔は結構飲んでたぞ……それがどうした?」


「いや…今度の合同訓練の後に隊長やバトンさんが

 アンタ等の歓迎会をしようって言っててな」


 なるほど…隊の結束と親睦を深める

所謂、”飲みニケーション”ってヤツだな…

俺の時代では既に死語となりつつある言葉だったが

俺自身はその発想は嫌いじゃない

だが俺はこのLHC社の敷地から出れない。

きっと市街地のバーでやろうとしているのかも

知れないが残念な事だ


「あぁ…行きたいのは山々だが

 俺はここから出れな──────」


「大丈夫…持ち込みで兵舎でやる予定だ

 それに俺も行動制限がかかってるしな」


 そう言って苦笑いを向けるルドルフ

そう言えば懲役兵にも行動制限が

掛かっている事を思い出す。


 自業自得かも知れないが

ルドルフも俺と同じ籠の鳥なのだ

境遇は違えど共通点はあるこの男と

俺は少し距離を縮める事が出来たような気がした。







 あれから数日、

今日は俺が楽しみにしていた合同訓練の日

いや…正確には楽しみにしていたのは

合同訓練の後の歓迎会で出てくる酒であって

決して訓練が好きとか言うマゾ体質ではない…


「ヒノモリさん何だか楽しそうですねぇ」


 そう俺に声を掛けてきたのは

自分の義足の調整をしている

同じ隊のアルバート=フォスターだった。


「いや…自分は別に…」


 アルバートに返事をしようとすると

アンが割って入ってくる


「イエ…私にハ判りますヨ…アタルがこの日を…

 いえ…お酒ヲ楽しみにしてイタ事は…

 隠しテいタとしても私には

 ホルモン値デ全てまるっとお見通しデス!!」


 もはやネタなのか素なのか判らない

アンの言葉…支援機能はともかく

ちょっとウザい所に目をつむれば

会話の相手としてはある意味最高レベルだろう


「相変わらずヒノモリさんの支援AIは

 面白いですねぇ…僕の家にも最新AIが居ますが

 こんな事言いませんよ?」


 そう言って笑うアルバート、

当のアンは表情は判らないがランプの明滅からして

人間で言うドヤ顏ってところだろう。


「いや…本当よく判らんヤツだよ…

 俺とセットで凄い力を発揮するらしいが

 今のところ活躍してないから何とも言えないしな」


「…………」


 …うん…悪かった…だからそんな望遠モードで

射抜くようにこっちを見ないでくれ…アン


 射抜く視線のアンに苦笑いを浮かべるアルバート

これからの訓練内容を考えると緊張感がないのかも知れない

それを察してか後方からクリス隊長の声がかかる


「さぁ…そろそろ気を引き締めて行こうじゃないか」


 その声を合図に俺たちはブリーフィングルームへ向かった。


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