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01 お前はもう死んでいる-You're already dead

もはやミームを入れたくて書きはじめたみたいなものです

 今、俺は目の前に浮かぶバレーボールもどきと対峙している。

おそらく病院の看護ドローンか何かなのだろうが

こういう所のドローンはもう少し人型に近づけた方が良いと思う。


 そう思っていたら看護ドローンは一回転する

すると今まで後ろにあったモノアイが正面を向いて目玉の様になり

俺の方を見つめるように光りだした。


「早上好,你感觉怎么样?」


「は…?」


「좋은 아침 기분은 어떻습니까?」


「いや…何言ってるかわからねぇし…」


 看護ドローンから出た言葉が分からず思わず

素の言葉使いで突っ込んでしまった。


 電子音が少し混ざったような声だが女の声だ。

以前、出ていったカミさんに言葉遣いが悪いと

注意されたのを思い出し少し反省する。


「おっと失礼…そう言えば使用できるのは日本語のみでしたネ」


 看護ドローンが詫びるように日本語で切り替えしてくる。

おそらく別の部屋で一人の看護師が数台のドローンを見てるのだろう。


「五ツ星の資料にもそう書いてあるでしょ…頼みますよ…看護師さん」


 俺の言葉を聞くとフヨフヨと横へ移動して

モノアイを明滅させる看護ドローン。

これで返事のつもりなのだろうか…俺は少しイラッとした。


「ところで、もう話し聞ける状態になったと思うので

 お医者さん呼んでもらっていいですか? 何処らへん義体化したか知りたいんで

 あ〜あと治療費とか保険とか諸々の話ししなくちゃならんので…」


「医者ですか…強いて言うなら私ですネ」


「は…?」(おっとまた素の反応をしてしまった…)


「申し遅れましタ、私、LHC社の汎用型支援AI LHC-SCS111と申しまス」


「はぁ…」


「あ…製品番号ですか? そんな……イキナリ初対面の方二…」


「いやいや…スリーサイズ聞いてるわけじゃねぇから…」


 こいつがAI ? 俺の知ってるAIはこんなハッキリ会話なんて

出来た記憶はなかった、出来たとしてもそれは研究機関で試作途中だったと

ニュースで見た事がある…それにコイツは今冗談を言った。

俺の知識ではそんなAI聞いたこともない…


「困惑してるようですネ」


「あぁ…俺の知識にはお前の様な高性能なAIはないからな…」


 AIだったら別に言葉遣いなんてどうでもいいよな

こちとら人間様だし…俺はそんな事を思った。


 するとLHC-SCS111がモノアイが点滅させながら上下にフヨフヨと動く

何故か俺はこのリアクションにイラッとした。


 こちらの反応を察知したのか動きを止める"目玉AI"

そしてゆっくりと話しだす。


「あなたにお話があります…いいですか?

 どうか 落ち着いて…あなたは…」



 ―――― 1度死んだのです。


「な…」



「そしてあなたが死んだ日から…」



 ―――― 150年経ちました。



「じゃぁ…ダニーは」


「一緒に居た方ですカ? 彼はミサイルの直撃で即死だったようでス 」


「…………カミさんは…」


「…………詳しくは存じませんが 常識的に考えて

 お亡くなりになっているでしょう」


「なら五ツ星重工は…今どうなってる…?」


「115年前に系列企業ごと買収されました

 今は五ツ星の名がつく企業は月にも地球にもありません」


「じゃぁ…誰が俺の蘇生を…そもそもどうやって…?」


「焦ることはありません

 それを今から順を追って説明していきます…」












 LHC-SCS111が言うにはこういう事だった。


 俺がミサイルの直撃を受けた日、

あの後に五ツ星の部隊が来たらしい、

目的は不明らしいがどうせ後始末とかだろう。

その時かろうじてまだ息のあった俺を本部へ連れ帰り

治療を施す、しかし回復は難しいと判断した医師は

当時まだ実験中だったナノマシンを俺に投与したそうだ。


 だがすぐには結果は出ず弱コールドスリープと言う形で

様々な実験をしつつ経過を見る事になった。

しかしその後に五ツ星はドイツ系企業のVH社に買収され

五ツ星の資産扱いとなった俺はそのままVH社の実験体となった。

そこから紆余曲折あったようだが30年前にLHC社が俺を買い取り

今に至る。


「っで……今更、骨董品みたいな俺を叩き起こした理由はなに?

 実験か? 1度死んでるとは言えあんまり痛いのは止めてくれよ」


「いエ…それよりも遥かに過酷かト…」


 人体実験より過酷って何だよ…


 LHC-SCS111の言葉に俺は思わず息を呑んだ。



 ―――― 貴方には兵士としテ戦ってもらいまス。



「は…?」(一体、本日何度目だろうか…この反応)



「現在、はっきり言って月と地球は戦争状態にあります。

 初めはただの独立デモでした、しかし世代を重ねる毎に

 生粋の月生まれの世代が誕生し、地球系の起業が利権を

 貪るのに疑問を感じはじめたそうでス。

 そこで月生まれの労働者達が中心となっテ

 独立運動ガ始まり、それは月資本の企業のいくつかも

 巻き込んで月全体に広がりましタ

 しかし地球各国の経済は現在の月の恩恵で成り立っていたので

 独立など到底認められるモノではなかったようです」


「何度か議論の場を持ったそうですがどれモ

 平行線となリ20年前に初めテ軍事衝突が起こり

 5年間程大規模な戦争状態となりました。

 現在は小康状態となっていますが、ソウ遠くない日に

 マタ大規模な戦闘が始まるでしょウ」


 確かに俺の時代でも既にその懸念はされていた

なるほど、いつになっても、何処に行っても

人間のする事は変わらないもののようだ……


「しかし救ってもらって何だが

 そんな所にロートルの警備員の俺が入ったところで

 棺桶が一つ増えるだけじゃないか ? 」


「いえ…あなたはポテンシャルだけで言ったら

 過去最強の強化人間となっているでしょウ

 マぁ…最早人間かどうかも怪しいのですが」


 LHC-SCS111…いやこの目玉サラッとヒデェ事言うなぁ……


「例えば自分の爪が熊や狼のような爪だと

 イメージしてみて下さい」


 ここで文句を言ってもしょうがないので

言われたとおり右手の爪をイメージしてみる


 すると爪と指先が徐々に変化して熊の爪のようになった。


「あとはそうですネ…その状態であそこのクローゼットを

 爪で射抜くイメージをして下さイ」


 いやいや…あそこまで2m半はあるよ?

普通爪はそんな伸びな……うわぁ…伸びたわ……


「ほら、もう立派な人外ですヨ」


 自分で開けたクローゼットの穴を見ながら

俺は今、人間でなくなった事を実感していた。


「一応、確認していいか?」


「ハイ、何でしょうカ?」


「拒否権は?」


「アリません……

 あなたの蘇生には莫大な費用が掛かってますので」


 判っていたことだが、実際聞くとクるものがある…

まぁ…話しの流れから予想は出来ていた、

各企業の資産扱い、それは人ではなく”物”扱いと言う事だ。

ここではどうか知らないが、俺の時代で言うなら

ちょっと賢いホームヘルパーAIかアンドロイドみたいなもんだろう。

思わず溜息が漏れる。


 俺の気持ちなど興味はないのか”目玉AI"は話しを続ける。


「仮にその費用をLHC社に補填できたとしても

 自由と言うわけにはいかないでしょウ」


「何故だ?」


「あなたの体にはLHC社の技術の粋がいくつかが詰め込まれています、

 さらに死亡当時に投与された五ツ星製のナノマシンですが…

 今のナノマシンよりもはるかに高性能で、

 LHC社でも同じものは造れません」


「つまり?」


「アナタは兵士であり重要な被検体です、当然、人権などはありません」


 ここまでハッキリ言われると清々しくもある。

しかしここで”目玉AI"にあたり散らしても何にもならないだろう。

とは言え動揺してない訳ではない、落ち着く為にも

こういう時はタバコが欲しいところだが、当然あるわけが無い


 思わず溜息が漏れた。


 死んだと思ってたら目が覚めて

起きたら自分は人外となり150年も経っていた

知り合いも誰もいないこの世界で兵士になれと強要され

そこに選択肢や俺の意思などは関係ない。


 なるほど…とことん運がない…

ここまで運のないヤツはそうそう居ないだろう


そうやって俺の第二の人生はクソみたいなスタートで幕を開けた。

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