溶岩地帯
さすが溶岩地帯。熱い上に人工物が何もない。
ここへ入る前、少し離れた所に小さな村があったけど、アリスは通り過ぎた。
面白いものも何もないからって…。ちょっと見てみたかったけど、ダメって言われたから諦めた。
それにしてもすごい熱気。
ドレスが汗で身体に張り付いて気持ち悪い…。
「脱いだらだめよ」
「流石に脱がないよ! はずかしいし…」
「偉いわね、ちゃんと恥じらいがあっていいわ」
溶岩地帯を半裸で飛んでたらヤバい人じゃん!
「アリサ、あれがフレイムリザードよ」
アリスの指差す先には真っ赤に燃えてるような身体をした巨大なトカゲ。
…巨大トカゲ…?
「アリサ! あっちがフレイムスライムよ」
…スライム……
「あぁんもう!」
「むぐっ…」
「暑いから早く行くわよ!」
「…うん」
なんで口を塞がれたの?今回は血の交換もしてないし…。
「恋人なんだからキスくらいしてもいいでしょう?」
「キ、キス!?」
「今更何を驚いてるのよ」
ハッキリ言われたら…。
「照れてるのかしら…?」
「…知らないっ」
「可愛いわー。ずっとその初なままでいなさい」
アリスの意地悪!
「ふふっ。ほら暑いんでしょ?スピード上げるからついて来なさい!」
「ま、待ってよ!」
速度を上げたアリスに何とかついていく。
あちこちから湯気か煙か分からないものが立ち上ってるし、たまに溶岩も吹き上がる。
「飛べなきゃこんなところ越えられないね」
「それでも越えようとするのが人なのよ」
「こんな危ないところを!?」
「色々と考えるのよアイツらもね」
逞しいなぁ…。
速度を上げたからか、かなり早めに溶岩地帯を抜けられた。
「まだ抜けてないわよ。中間地点って所ね」
「うぇぇ…」
「行きたいって言ったのはアリサなのよ?」
「こんな過酷だとは思わないもん」
「ここは休めるから。天然の温泉もあるのよ」
「天然温泉!」
「わかりやすい子ね…」
ーーーー
ーー
「てんねんおんせん…」
「諦めなさい。仕方ないじゃない…アタシの寝てる間に変わっちゃってたんだから」
お湯はあったんだよ?
グツグツと煮えたぎってるお湯が。ううん、あれはお湯と違う、熱湯。
「ここを越えたらまた作ってあげるから」
「約束?」
「ええ。約束よ」
じゃあ早く抜けなきゃ!
ーーーー
ーーー
ーー
ー
溶岩地帯を抜けるのに、本当に一日かかった…。
もう羽根を出してるのも無理。
「頑張ったわね。約束守ってあげるから」
「うん…」
お風呂に入ったら疲れもだいぶ落ち着いた。
でも代わりにすごく眠くって…。
「ふわぁ………」
「世話の焼ける子ね…」
「ごめんね」
「いいのよ。アタシを頼りなさい」
また抱きかかえられてベッドへ。
一日飛び続けたからか、疲労がすごくて…アリスに抱かれたまま横になる。
アリスの傍が一番落ち着く。これが恋人…?
「そうよ。何も心配いらないわ。ゆっくり休みなさい」
「うん…おやすみ」
「ええ…」
ーーーー
ーーー
ーー
「んーっ!」
「…起きたの?アリサ」
「うん! 疲れも取れたしスッキリ!」
「良かったわ。 近くに小さな街があるけど寄りたい?」
「いいの!?」
「ええ、溶岩地帯を超えた事だし、少しゆっくりしても良いわ」
溶岩地帯に入る前の村は寄らせてもらえなかったから嬉しい。
「なにか見たいものでもあるの?」
「うーん…わかんない。ただの好奇心?」
「そう…まぁいいわ。着替えたら行きましょう」
「はーい」
いつものドレスを着て、アリスの作ってくれた家を出る。
その家もアリスが手を振るだけで消えるけど…。
どうなってるんだろあれ。
「…そのうち教えてあげるわ。拠点を作るときにでもね」
「うんっ!」
飛んだまま街へ降りると目立つからと、少し手前で降りて歩く。
「なんて名前の街なの?」
「知らないわ。興味ないもの」
そっか…。
溶岩地帯が近くて温かいからか、薄着の人が殆どで、街の門を守る兵士みたいな人まですごい露出。
顔はライオンみたいで怖いけど…
「獣人?」
「そうね、この辺りは身体の丈夫な獣人が殆どよ。人には過酷な環境だからね」
溶岩地帯があったくらいだもんね。
私達はそこを越えてきた訳だけど。
「ヴァンパイアっていうのは超越者なの。特にアタシ達みたいな真祖は環境の影響なんてほとんど受けないわ。あれだけの溶岩地帯なのにちょっと暑かったくらいでしょう?」
「そういえば…。じゃあ、あの温泉も入れたんじゃ…」
「入れたとして、あんな煮えたぎるお湯に浸かりたいの?アリサは」
「…嫌かな」
「そういうことよ」
薄着の人が殆どの街なかで、ドレス姿の私達が目立ちそうと思ったのだけど、あまり気にされてない?
「普通の人にアタシ達は認識されにくいのよ」
「魔法?」
「というより吸血鬼特有の能力ね。ただ、あまり印象つける様な行動をしたら目立つから気をつけなさい」
「わかった…」
何をしたら目立つんだろう?
「沢山の人がいる前で、吸血行動とかしなければ大丈夫よ」
「しないよ!?」
「目立たなくても、したらだ、め、よ! アタシ以外に吸血なんてしたらお仕置きよ?」
「だからしないってば…」
アリスがいればいいもん。
「そうよ。それでいいの」
撫ぜてくれるアリスは優しくて好き。
怒らせないようにしなきゃ…。
街の市場みたいな所では、たくさんのフルーツが山盛りで売られていたり、この国の人が着てるような服も売ってる。
「そんな露出のある服はダメよ」
「ヴァンパイアだから?」
「…えぇ」
そうなんだ…。
「(アリサのそんな格好を他人に見せてたまりますか!)」
「なにか言った?」
「何でもないわ。少し食料だけでも買っていくから欲しいものあったら言いなさい」
「さっきのフルーツ!」
「わかったわ」
アリスは山盛りフルーツの店に行くと、何やら会話した後フルーツをたくさん受け取ってた。
お金払った…?
「ねぇアリス…」
「…交渉したのよ。情報と引き換えに商品を貰ったの」
「なるほど!」
「(魅了して貰ったとか言ったら嫌がるわよね、この娘…。純粋すぎるのも考えものだわ。…まぁそれが可愛いんだけど)」
「アリス?」
「ほら、可愛いアリサにサービスよ」
「ありがとう!」
受け取ったフルーツをかじる。
「甘酸っぱくて美味しい!」
「それは良かったわ」
アリスと暫く街を見て回り、宿を探すのかと思ったら街を出てきた。
「人の街は落ち着かないのよ…だから二人きりになりましょう?イヤ?」
「ううん。アリスがいてくれるならいいよ」
「そう…。街を離れたらまた家を作るから」
「はーい」
「(怖いくらい素直になったわね…血がしっかり馴染んだのかしら。アタシへの執着もしっかりしてるようだし…ふふっいいわぁ…アタシのものよアリサ…)」




