追われるもの
「アリス、お城はいいの?」
「ええ。アタシが離れればいずれ城はなくなるし、眷属達も元に戻るわ」
そういう物なんだ。
「アリサ疲れてない?」
「うん、飛ぶの気持ちいいから」
「そう。疲れたら早めに言いなさい。休むから」
「わかった」
アリスは優しいね。時々怖いけど…。
「……」
睨まれた…考えてる事筒抜けなんだっけ。
夜のあいだに休憩を挟みながら飛んで、明るくなったら降りてしっかりと休む。
アリスが小さな家を作ってくれるから安心して休める。
お風呂はないけど、魔法で服も身体もキレイにしてくれるから長旅でも平気。
二日目は夜明けよりだいぶ前に地上へ降りた。今日は早くないかな?
「ここから先はしばらく降りられるところが限られるから、今日はゆっくり休むわよ」
「自由に降りれないの?」
「ええ。 溶岩地帯なのよ。フレイムリザードっていう、ドラゴンもどきもいるから面倒くさいのよね」
倒せないとは言わないんだね。
「当たり前でしょ。面倒くさいから見逃してあげるだけよ。一日飛べば越えられるから頑張りなさい」
「はーい」
「いい子ね。ここなら温泉も作れるから」
「ほんと?嬉しい」
「ええ。背中流してくれる?」
「うんっ」
毎日下着姿でくっついて寝てるし、恥ずかしくない。
「恥じらいは大事よ?」
「…でも、脱ぐのやだって言ったら怒った…」
「寝る時に着てるとシワになるのよ。アリサの服も良いものなのよ?」
そういえば、おそろいの黒いドレス、これもアリスが用意してくれたんだった。
「いつもありがとう…私、なにも役に立ててないのに…」
「今はまだいいの。病み上がりなのよ?死にかけてたんだから」
「うん…」
「…そうね、じゃあ今日はお願いを聞いてもらおうかしら」
「何でも言って!」
「…アリサ。そのセリフ、アタシ以外に言ったらダメよ?」
「わかった!」
私にはアリスしか居ないのに…。心配性だなぁ。
「それでもよ」
そう言って鼻を突かれた。
……あれ? 前にもこんな事があったような…。
「アリサ! 少し離れてなさい。今日は大きめになるから」
「う、うん!」
アリスは指先を少し噛むと、ブラッドミストから家を作る。
この二日で見慣れた光景。休む度に作ってくれるから。
完成までものの数秒。
「おいでアリサ」
「はーい」
中に入ると、テーブルセットにベッドはいつも通り。何時もは無かったのは正面の扉。
「水源が近かったから、楽だったわ」
入っていいって言われたから扉を開ける。
「うわぁ〜広いお風呂!」
「今日はこれでゆっくり疲れを取るわよ」
「うん! お風呂〜♪」
「ふふっ。ほら脱がせてあげるから後ろ向きなさい」
言われるまま脱がせてもらい、お風呂へ。
「ふわぁ〜…」
「無防備すぎるわよ?」
「アリスしか居ないのに…」
「…それは襲ってもいいって事かしら?」
「襲う?酷いことするの…?」
「違うわ。 まぁそれは後で教えてあげるから、背中流してくれる?」
「はーい」
タオルを受け取り、いい香りのする石鹸を泡立てる。
それをアリスの背中へ。
「もう少し強くてもいいわよ」
「肌キレイだから心配だよ…」
「…じゃあ任せるから」
「うん」
傷つけないように、優しく…。
背中…?傷…?
「もういいわ! 冷えてしまうから浸かりなさい」
「えっ…でもまだ…」
「いいから!」
怒らなくてもいいのに…。そんなに下手だった?
「違うわ。病み上がりに身体を冷やしたらいけないからよ」
「……」
「言い方がキツく感じたのなら謝るわ。怒ってないから。ね?」
「うん…」
撫ぜてくれる手はたしかに優しい。
「アリス好きー」
「私もアリサのこと好きよ。だから大丈夫」
二人でのんびり湯船に浸かり、気持ちよくてウトウトとしてたら、アリスにベッドへ運ばれた。
「ほら、おいでアリサ」
「え…でも服は…」
「いいのよ。そのまま私の上にきなさい」
「うん…」
なんか恥ずかしいっ…。
「いいわぁ…可愛いわよアリサ」
促されるままアリスの上に…。
そのまま抱きしめられた。
「今日はこのまま…それがアタシのお願いよ」
「うん…恥ずかしいけど安心する」
「…そうね」
安心感と心地よさで気がついたら寝てた。
目が覚めたのは痛みだった。
「起こしちゃったかしら」
「痛かったから」
「仕方ないのよ。まだ安定してないから、定期的にお互いの血を巡らせないといけないの」
「うん…」
「ほら、こっち向きなさい」
「んっ……くっ…っ…っ…」
「アタシの血、美味しい?」
「うん…ふわぁってする…でもなんでアリスからもらう時は口からなの?」
「…アタシがそうしたいからよ」
「そっか!」
アリスの血をもらうと、力が漲ってくる。
やっぱりアリスは凄い!
「もう起こさないから。寝ていいわ」
「ん…おやすみ」
「ええ…」
〜〜〜〜〜〜
アリスSide
寝顔もかわいいわ…。
あれだけ記憶が薄れてても、時々思い出しそうな兆しを見せるのは危ないわね…。
そんでもって無防備で、いちいち可愛すぎる!
ホントなんなのこの娘…。小悪魔がすぎるでしょう!
…アイツらが執着してた理由がわかった気がするわ…。
この数日、何度理性が飛ぶかと思ったか…。
ただ、どうもこの娘、そっちの知識がない上に、記憶の綻びが出やすいのもそこなのよね…。
アタシと血による正式契約ができてるから、間違いなく純潔なのに、どういう事かしら…。
純潔じゃなかったら、お互いに血が不味くて飲めやしないって言われてるし。
アタシにとってもこの娘の血は甘露で、もう他のなんて受け付けないってくらいに美味しいのよ。
この娘もそんな感じよね?
何をどこまでされてるの?何がトラウマなの?
わからない…。
アタシが手を出せない一番の理由もそこなのよね。
下手なことをしたら記憶を取り戻しかねないのよ。
それがなかったらとっくに…!
歯がゆい!
探り探り、この子が経験してない事を見つけないと…。
とりあえず、押し倒すのは絶対に不味い。
逆なら?と思って試したらビンゴ!
考えたらそうよね、押し倒したくなる衝動はすっごいから、逆は無いはずよ。
…問題はこの先はアタシもどうしたらいいのかわかんないのよね…。
いや、知識としてはあるのよ?でも…ほら…ね?
もういいわ…。今は焦らなくても。
飛べないアイツらでは、仮にアタシ達の行き先がわかっても移動速度は雲泥の差。
アリサとの事も、旅路もゆっくり進めるわ。
この子の悲しむ顔なんて見たくないもの。




