アリス
アリサの眷属化が不安定だ…。
アタシの力を持ってしても、やっぱりドラゴンの加護を持つあの子の抵抗は強い。
どんな加護を与えたのやら…。あの子のステータスをみてもハッキリとわからないのよね…。
名前はステータスでもしっかりとアリサになってるのに、確認できない項目があるのは不安要素でしかない。
それでも、純粋で清らかな身体は純血の吸血鬼の器として最適なのは間違いないのよね。
何とか記憶を押し込めてはいるけど、何かがきっかけで綻びができたら破綻する。
どうしたものか…。ううん、方法はあるんだけど……やっぱりそれしか無いか…。
ただ、アタシも経験がないから緊張する。
「アリス?どうしたの?」
「えっ? ううんなんでもないわ。少しぼーっとしてただけよ」
「お風呂気持ちいいもんね」
「ええ…」
この子の記憶からお風呂好きなのはわかってたから、わざわざ力を使って用意した。
その記憶も、一定以上は読めなかった。本人が忘れてるのか、ドラゴンの加護なのかわからない。
だからわかる範囲で喜びそうな事をしてあげたかった。
…アタシ自身、どうしてここまでこの子に入れ込んでるのかわからない。
名前までつけて、記憶を書き換えたりと手間をかけて…。
最初は、アタシにとって一番の脅威だったから手を打っただけの筈だった。
手駒として使えればいいと。
そうしたら、まさかのドラゴンの加護を持つ娘だった…。
だったらドラゴンたちから奪ってやろう、昔の復讐に。
そう思って正式に眷属化した。
でも今は?
もう一人は嫌なのよ…。
いくら眷属を増やしても、あいつらはアタシの操り人形でしかない。
自由意志も、感情もない。命令に従うだけの人形。
アリサもそうなっていたのなら、こんな気持ちにもならなかったのかしら…。
眷属化をしても、意志はしっかりしてる。
加護のおかげなのか、この子の意思が強いのか…わかならないけど。
でも、これだけはわかる。
手放したら間違いなく後悔する…。もう復讐とかどうでもいいわ。
一人にはなりたくないの。
目覚めてから数十年、仲間の気配もない。探し回っても見つからず、無駄に力を消費しただけ。
世界中を飛び回ったせいで消費した分を取り戻すのに、管理者不在だった近場のダンジョンを乗っ取って、力も蓄えた。
まさか、あいつのダンジョンだとは思いもしなかったけど…。
痕跡は消したけど、時間が経てば間違いなくバレる。
うん、決めた。ここを引き払って移動するためにも、この子は確実にアタシのものにする!
「ふぁ〜…お風呂さいこ〜…」
「だらしない顔してるわね?」
「だって気持ちいいから」
「身体をキレイにしておきなさい」
「うん?オ…私、汚いかな?」
「そういう意味じゃないわ。アリサはキレイよ」
「アリスのがずっと美人だよー」
そういう事を面と向かってサラッと言わない!
不覚にもドキッとしたわ…。まさか、この子天然のタラシかしら…。
…思いたる節はある。
パーティの中でも一番大切に守られていたし、あのドラゴンの加護もついてる。
知る限り、あのドラゴンが直接一人の人に加護を与えたなんて聞いたことがない。
…何者なのこの子。
いいえ、この子はアリサ。
アタシの眷属で血を分けた家族であり、恋人…にする予定。
本人にはもうアタシを恋人として刷り込んであるけど。
お風呂上がりにアリサをベッドへ誘う。
警戒心も何もないのね、この子。
…色々と教育も必要だわ。
アタシ以外に、こんな無防備な姿を晒したら許せない。
「もう寝るの?夜は今からなのに。勉強は…?」
「今からするわ」
アタシ自身初めてだからドキドキしてるけど。
どうしたらいいんだっけ?
姉様が話してたのを聞いたけど…あの人は加虐的趣向の人だったからなぁ。
泣き叫ぶ相手を無理矢理ってのが大好きだったから参考にはならない。
アタシはそんなことしたく無いわ。この子は大切にするの。
「アリス…?」
「…アタシ達は恋人よね?」
「うん。そうだね?」
疑問系なんだ…。やっぱり記憶が朧気にでも残ってるのかしら。
不味いわね、早くすべてを奪ってしまわないと。
「ほら、おいでアリサ」
「う、うん」
服を脱いだアタシを見て緊張してるの?可愛いわね…。
アリサにも脱ぐように言ったら、真っ赤になってる。
そんな顔を見ていたら虐めたくなっちゃうわ。
…ダメよ。アタシは姉様とは違うの!
アリサをベッドへ優しく押し倒す。
「なっ…ちょっ、やめろ!!」
なんで急にそんな抵抗するのよ!?さっきまで素直だったじゃない!
「大人しくしなさい!」
「……っ…痛ぅ……くそっ…なんだよ、頭が痛ぇ…」
不味いっ! もう一度アタシの血を入れるか?
それともこのままもう無理矢理?
悩んでいたらガラスの割れる大きな音が部屋に響いた。
何!?
「…見つけた…!」
「チッ…」
こいつ、あの大陸から出られないんじゃなかったの?
急いでアリサを血霧で包んで隠す。絶対に渡すものですか!
その後はもう意味がわからなかった。
アタシの作った城を破壊しながら入ってくる女が四人。
しかも全員ドラゴンどころか力を蓄えてきたアタシより強いかもしれない!
躱すのに必死で攻勢にでるなんてとても無理!
こんな事なら先に移動しておけば良かった!
城も持って行こうとか欲張ったのが悪かったわね。
「レイアを返しなさい!」
「うち、今までで一番キレてるからな、手加減なんてできねーから、マジで覚悟しろよ」
「ほんとよ〜。確実に仕留めるわ〜…」
「…レイアはどこ!! 吐きなさい!」
「ま、待ってくださいー! あー…お城がボロボロに!」
一人、普通の娘が混ざっててホッとするわね…。
「レイア! 何処ですか!」
やっぱりアリサを取り戻しに来たのね。
でも残念でした。いくら力はアタシより強かったとしても見つけられはしないのよ。
戦いは頭でするものよ?こんな脳筋共に言っても仕方ないかもだけどね。
相手するのもめんどくさいわ。仕方ない、一度離脱して、ほとぼりが冷めたらアリサを迎えに来るか。
こんな奴らをまともに相手してたら力を消耗しすぎてしまう。
せっかく出会えた理想のあの子も失ってしまう結果になる。
「アタシはここで失礼するわ」
「行かせるかよ!!」
その棍棒痛そうだけど、アタシに物理は効かないわ…よ…?
えっ?
「…やめろ…アリスに手を出すな…」
血霧で包んでいた筈のアリサがアタシを庇った…?
棍棒で思い切り殴られたアリサは床に叩きつけられた。
「…そんな…レイア!!」
まだ霧化を教えてないアリサにアレは致命傷…。保険にネックレスをつけさせておいて正解だったわ。
とはいえ…どうして庇うのよ。 あんなにアタシのものになるのを抵抗してたくせに!
本当にわかんない子ね。
でも…好きよそういうの。いいわぁ…ふふっ。
益々アタシの物にしたくなったわ。
「…レイア…? レイア!」
「「…コハッ…」」
アリサだけじゃなく、ドラゴンにまでダメージ…?
まさかっ! 加護って…。嘘でしょ?
それはアタシの力も完全に効かないはずよ…。
瀕死のアリサを見て全員パニックになり、アタシへの攻撃も止まる。
アリサを殴った張本人は、ショックで崩れ落ちて叫び出した。無理もないか…。
はぁ〜…。
アタシもアリサは失いたくない。
「…アタシなら助けられる。どうする?唯一の望みであるアタシを始末したいなら好きにしたらいいわ。でもそうしたらその子も助からない」
乗ってこい! それしか方法はないんだから。
ドラゴンでさえ勝てないコイツらに、アタシが持ってる唯一の切り札。
ドラゴンが万全なら、何とかなったかもしれないけど、そいつも瀕死。
さぁ、どうする?




