アクセス権
レイアとシノ姉を早く連れて帰えらなきゃ…。
それには、必要な情報を持っているドラゴンに会いに行かなくてはいけない。
でも、飛行装備がまだ人数分には足りてないんだよな。
船のパーツと並行して集めてはいたけど、さすがに…。 レアらしいし。
買える街へ行くのも手なんだろうけど、移動に時間がかかるからダンジョンへ入ったほうが早いんじゃないかと思う。
こっちには強運のシノ姉がいることだしな。
その飛行装備を集める為、ユリノの提案で、今だけ開放されている魔の国のダンジョンへ入ってきた。
いつの間にかセーラもついて来ててレイアの頭に乗ってる。
なんか腹立つけど、ちっこいドラゴンに妬くのも違う気がして…。
しかもうちらを守ると言って戦ってくれてるレイアに助言もしてくれてるから文句も言えねー。
かわいいハズのレイアがカッコよくて、うちはいろいろと限界になりそうだよ?
今まで戦いは物理攻撃重視できてるから、ほとんど魔法が使えないうちは、なんの役にも立ててないのに邪魔もできない。
いつも通りに物理攻撃の効く相手ならうちでも出番はあるんだけどな。
宝箱からは家電や台所用品が出てくる。あれば便利ではあるけど、今はそれじゃねーんだ。
シノ姉もレアアイテムを拾ってはいるみたいだけど、あくまでも家電…マジックアイテムだっけ?それしか出てないらしい。
ダンジョンを進むも、目的の物は手に入らず…階層を上る。
五階層を進んでいたらセーラからの忠告で、この先にボスがいるとわかった。
ずっと矢を撃ち続けていたレイアを休ませたいんだろうユリノの提案で小休止。
うちらもレイアを休ませるのには賛成。
相変わらず広いレイアのテントでシノ姉が作ってくれたライスバーガーを食べた。
ほんと料理はかなわねーな…。いや、戦闘もか。
魔法をしっかりと扱えるようにならなきゃなんだろうけど、どうしたものか。
ユリノに教えてほしいと頭を下げるのは…。はぁ〜…。
食事もして休憩したからか、元気いっぱいのレイアがボス部屋の扉を開く。
あんなサイズの扉が小さなレイアの手で簡単に開くのは違和感しかない。
ボス部屋の中には、またアンデッドがうじゃうじゃと!
うちもリオも魔法が使えないから完全に足手まとい…。
最大戦力であるレイアとシノ姉に頼るしかないのが歯がゆい。
順調に矢を放っていたレイアの攻撃が突然止まる。
どうした!?
何かに気がついたらしいユリノが前線からレイアを引っ張ってきた。
その間、シノ姉が弓で敵をひきつけてくれてる。
「これ、どう思いますか?」
見せられたのは、レイアの首筋についた赤い点…。
これってまさか!!
レイア本人は平気だと言うし、見た感じも元気そう。
ドラゴンの加護か…これは本当に感謝だな。
ユリノは心配してるし、うちもレイアの容態をしっかり確認したいから、撤退するか突破するかしたい。
だけど、入ってきた背後の扉は閉じてて開かない。
セーラが言ってたっけ…ボスを倒すまで出られないとか。
ボスってどれだよ?同じようなやつらばっかだぞ!
しかも明らかにさっきより敵が増えたし、居なかったはずの後方、扉側からも突然敵が湧き出して攻めてくるものだから完全に囲まれた。
自然とうちらはレイアを中心にして、庇うよう円になる。
動きが遅いとはいえ、物理攻撃が効かないのはキツイな。
殴り飛ばしても起き上がってくるからきりがねー!
打開策として、ユリノが大きな魔法を放った。
うちのお母さん魔王に放ったのと同規模の炎がアンデッドを焼き尽く…してねーよ!?
うちらにも魔法を使うようにユリノは言うけど、うちが使えたのなんてちょっとした氷魔法くらいだ。
多少でも効果があるなら撃つけど…。
半信半疑で放った氷の礫はミイラに穴を開けて貫通し、それはさらに何体も倒していった。
あれ?意外に効果あり?
リオもミミのアドバイスで炎魔法が使えたらしく、一緒に少しずつだけど敵を倒していく。
ただ、あまりの敵の多さにそちらへ気を取られすぎた。
元気だと言っていたレイアはどちらへ攻撃してるのか?と、チラッと見たら、いない…?
「レイアがいない!! どこにいった?」
「そちらにいるのでは!?」
「うちもそっちにいると思ってたんだよ!」
どこ?零くん!?
うちらを囲んでた敵が、突然糸の切れた人形のように倒れて、砂の様になって消えていく。
な…に…?
「はぁ〜…。疲れたわ…。これどうなってるのよ〜…レイアちゃんは…?」
「私も戦うのに必死で…さっきまでそこに居たんですけど」
うちも最後に見たのは、ユリノに座らさせられて、噛まれたであろう首筋を晒されてた時だ。
その後は敵が多くて周りを見ている余裕もなかった。
「本来ここのボスはリッチなんです。そいつがアンデッドを使役している、私の知識はそうなんですが…」
「リッチってなんだ?」
「アンデッドの王、このピラミッドの主です」
ミイラ達の親玉ってことか。
「そんなのいた?私見てないよ」
「私も気が付きませんでした…」
「誰かが倒したからこうなったのかしら〜」
「いえ…そうなら扉が開くはずです」
そう言われて確認した背後の扉は、未だピッタリと閉じてる。
「待てよ?開くのなら入ってきた方じゃなくて、出口じゃねーか?」
「どちらも開くのが普通なんです」
でももう敵なんていねーよな?そんな気配もない。
念のため、出口側の扉を探したうちらはおかしな物を見つけた。
出口であろう閉じたままの扉、そこから少しズレた壁に、人が一人通り抜けられるほどの穴が空いている。
レイアが中にいるの?
「なんで壁に穴があいてるんですか?」
「私が見てきますから、みなさんはレイアを探してください!」
「うちもそっちに行くからな」
「わかりました…」
ユリノ一人では不安だろ。
シノ姉達にはボス部屋を隅々まで確認してもらうように頼む。
「ユナ、何かあったら呼びなさいよ…」
「わかった。そっちもな」
ユリノと壁の穴を潜ると、何やら台座みたいなものと、それに乗せられた石。
「ダンジョンコアですね」
「ノーラのとこでレイアが見てたやつか」
「ええ…。破壊されてるわけでもないですし…」
「…ごめん、乗っ取られてたみたい…?」
突然現れたのはセーラ。
「乗っ取られてた?」
「ダンジョンコアは、私しか触れないから油断した…?」
リオ達も呼び寄せて、コアのある部屋でセーラから詳しい話を聞いた。
セーラ本体の背中にはダンジョンがいくつもあるらしく、一度にすべてを管理はできないから普段は中にいるモンスターとかに任せっきりになってるそう。
だからこそコアは人目に触れないように隠してあったと。
「壊されたら、ダンジョン止まっちゃうから…?」
「未だコアを発見したとか、破壊したなんて話は聞いたことがありませんでしたけど…」
「うちらはノーラのとこで見たよな?」
「あれはレイアがノーラに信頼されているからです。普通は見せることさえしませんよ。壊されたらお終いです」
「それ、ちょっと違う…?」
セーラが言うには、コアを壊されたら一時的にダンジョン機能が停止、ダンジョンマスターがコアを再配置するまで機能しなくなると。
「世間一般の知識が間違っていると、そう言う事ですか」
「うん…コアを作ったり、制御出来るのなんてマスターだけ。だから油断した…?」
「じゃあレイアは!? 零くんはどこに行ったんだよ!」
「……コアに眷属化の魔法をかけられて乗っ取られてたから、その間の情報は直ぐにはわからない…?」
「セーラの管理するコアに干渉できる存在なんているのですか?」
それはうちも聞きたい。最強のドラゴンなんだろ?
その加護をもらったレイアも無敵なんじゃねーのかよ!
「…太古にいた吸血鬼、始祖と真祖だけは私達と同等の力があった…?でも大昔に消えたはず、だった…?」
「その話は私も知りませんね」
世界の知識を備えているユリノも知らない…?
「レイアがボス部屋に近づいた時に、少しサービスしようとしたら、アクセスできなくて…大元の集中制御コアを確認に行ってた…?」
だから途中からセーラはいなかったのか。
「大元からもここのだけアクセスできないから、戻って来たらこうなってた…?」
「…レイアはその始祖か真祖に噛まれた…、そうなるとおそらく吸血鬼に変えられてしまっています!」
「どういう事だよ!」
確かに噛まれた痕も見た、でも元気だったじゃねーか!
「始祖の消滅は間違いない…? 消滅を確認できてないのは真祖の一人だけ…?」
「ではその真祖が犯人で間違いないんですね?」
「たぶん…? 私のコアに干渉なんて、私の妹たちでも無理…?」
うちは頭が真っ白になった。
ようやく会えて、お母さんにも会わせてあげられた。
後は帰る方法を探すだけ…そう思っていたのに。
ここに来ていきなり…セーラでも勝てるか分からない相手の登場?
嘘でしょ?出来の悪い推理小説みたいな展開はやめてよ!
セーラは、アクセス権の復旧したコアを解析して手がかりを探してくれると。
うちらは魔王城へ戻って情報を集めることにした。
前なら、うちはパニックになって暴れて、セーラを責めてたかもしれない。
でも、今はそれをしてもどうにもならないのはわかるし、心強い仲間もいる。
お父さんの言ってた、こういう時こそ冷静でいないとダメだって言葉の意味を身をもって理解する羽目になるとは…。
それもあったからなんとか耐えてはいるけど…レイア…零くん…。
なんでいつも捕まえた手の中から零れ落ちていっちゃうの?
うちをおいて行かないで…。
それとも何?うちの想いが間違ってるとでも世界は言いたいの!?
認めない…そんなの。
絶対に取り戻す…!
例え零くんが違う世界へ行ってしまって、姿が変わってたとしても、うちは必ず零くんを幸せにする。
それだけは譲れないうちの信念だから。




