魔の国を支えるもの
セーラの力も借りて、ポチョムキンとかいう名前のおっさんの説得も終わり、無事に城を出ることができた。
城から街へ向かう間に、リオ姉達がゲームのイベントに優勝したって聞いた。
どこかに土地をもらったらしいけど、あまりオレには関係なさそう。
そもそもどこの土地かもわかんねぇし、ゲーム世界にいるわけでもないオレがそこへ行けるかもわかんねぇ。
ただ、姉達が便利になるのなら悪いことではないよな。
ユナ姉はなんかニヤニヤしてるし、また何か企んでそう。
ちょっと身の危険を感じるのは気のせいか?
「気のせいではありませんレイア。ユナさんのキューブには注意してください」
キューブってあれか?城で貰ってたやつ。
「そういや、リオ姉は城で何貰ったんだ?」
「あ、あれは別に!」
「毒みたいな色してたけど大丈夫かよ…」
「毒じゃないから! 体型を変えられる薬なの! あっ…」
「…聞かなかったことにしとくな?」
「そうして…」
なんでそんなものを…。スラッとしててスタイルいいのに何が不満なんだ?
「レイア、コレですよ」
ユリノ姉が強調したのは…あぁな?
そんなもんあってもなくても同じだろ…。
だから、ユリノ姉は心読んで落ち込むなよ。
ユリノ姉はそれでバランス取れててキレイなんだからいいじゃねぇか。
「そうですよね!」
復活も早いな!
街で待っててくれたミミには城での出来事を報告できたし、プレゼントも渡せた。
「いいの…?私がもらっても」
「ミミも力を貸してくれただろ?そのお礼だからな」
「ありがとう零くん!」
「レイアだって」
早速つけてくれて、似合ってるといったら嬉しそうに笑ってた。
ただ、後ろから姉達の圧がすっごいのな?
ちゃんと探すから待っててくれ…。
ここの街は活気があるし、店も多いから何件か回ってそれぞれの姉に似合いそうなネックレスを探した。
シノ姉にはシンプルで大人っぽいデザインにピンク色の石がついたネックレス。
ユナ姉にはハート型に青い石のついたネックレス。
リオ姉は…クロスに紫色の石のついたカッコいいネックレス。
相棒でもあるユリノ姉には、剣をモチーフにしたものに赤色の石がついたネックレスを。
それぞれしっかりと店で包んでもらって手渡した。
全員受け取った後にプルプルしてて怖いんだけど…。
「レイアちゃんは全くもうだよ!」
なんでオレはミミに怒られるんだよ…。
ノーラとフォーラには魔の国限定の魔の国どら焼きと、魔の国ロールケーキ。
「私には…?」
セーラが突然ふらっと現れてびっくりした。
「セーラにはそうだなー…この可愛いクッキーとかどうだ?」
「それがいい…?」
買って渡したら早速食べてる。
その手で器用に持つんだな…どうなってんだよ。
てか、本体じゃなくても食べれるのな?ほんとドラゴンって不思議でおもしれー。
食べてるセーラをミミに紹介しておく。
またドラゴン…?ってびっくりしてたけど、そこはオレに言われてもやな…。
なんとなくまた闇落ちしそうな雰囲気だから、話題を変えた方がいいかも。
「そういえばあのでっかい帆船は到着してんのか?」
「うん? それなら港で見たよ。レイアちゃんのいる世界側の船のことだよね?」
「ああ。無事についてたんだな」
ミミはログインした後に、船でこっちへ向かってたフレンドに会いに港へ行って、その時に見かけたらしい。
そういや、ルリマリも来てたりするんかな。
「レイア、折角ですから此方のダンジョンに行ってみませんか?」
唐突になんやねん。
「…理由を聞いてもいいか?」
「装備を集めなければいけませんから」
「まだ飛行装備が全員分集まってないのよ〜」
あー、ノーラの姉に会うために必要なやつか。
姉達に任せっきりだったし、オレ自身強くなる為にもダンジョンは行くべきだな…。
「わかった。じゃあこのまま行くか! みんなケガとかしない様に気をつけてくれよ」
ユナ姉みたいな大ケガは見てるこっちが耐えられねぇ…。
勝手知ったる道とでも言いたげにどんどん進むユリノ姉に案内されて、街を出て直ぐの大きなピラミッドに来た。
オレ達は考古学者かよ…。この世界の不思議を発見すればいいのか?
「ここは遺跡タイプのダンジョンですから、洞窟タイプより宝箱の発見確率は高いはずです」
毎回構造が変わる不思議のダンジョンな?
「ここ、生活必需品とかたくさん取れる…?」
クッキーを食べた後も同行してくれてるセーラは何故かオレの頭に乗っかってる。
「落っこちねぇようにな」
「大丈夫。乗り心地いい…?」
それならいいけど。不思議と重さも感じないから負担もない。
入り口ではギルドカードの提示をしなきゃいけなくて、ゲーム側のダンジョンかとも思ったけど、普段は国の管理下にあって、今だけ特別に開放されてるから仕方ないらしい。
セーラを連れてるオレにびっくりした兵士に敬礼されたんだが…。
「レイアはこの国の王女ですよ?当たり前です」
そうは言うてもやな…。オレ自身は一般人やぞ。
セーラに敬礼したんだと思っておこう。
ピラミッド内部は石造りのいかにもな遺跡。
壁画みたいなのまであって雰囲気がある。
ちょっとワクワクしてたのに、出てきた敵の姿を見ていきなり心が折れそうになった。
「ゔゔゔ…」
「うううう…」
「何やあれ…」
「ミイラ、マミー…所謂アンデッドです」
それはわかってんねん! オレが言いたいのはそういう事じゃねぇんだわ!
なんでそんなもんが動いてんだよ!!
これじゃあ考古学者じゃなくてトレジャーハンターだろ! 人買いのボスが持ってたムチを貰っておくんだった。
「殴っても殴っても起き上がってくる!」
「アンデッドに物理攻撃は効果が有りません! 炎系の魔法か神聖魔法を!」
ミミはリオ姉にそう叫びながらちっこいファイアーボールを撃ってる。
燃えてはいるけどあまり効果は無さそう。
これはムチでも効果はないんやろうな…。
「炎ね〜任せて〜」
シノ姉は弓を構えると矢を放った。
炎を纏った矢は、通路を並んで歩いてきてたミイラを次々と貫いて、アッという間に消しとばした。
「シノ姉のそれ、久しぶりに見た…やっぱりかっこいい!」
「そうでしょ〜?やっとレイアちゃんに見せられたわ〜」
記憶にある、凛とした姿のままで少し懐かしかった。
「わ、私も頑張ったのに…」
「あんな小さな炎では効果は薄いですよ」
ユリノ姉、ミミも頑張ってるのにそんな言い方はないやろ。
「ユリノ姉があのでっかい魔法使えばいいじゃねぇか」
「こんな狭いところで使ったら熱風でこちらまで巻き込みます」
…たしかにな。前は広い洞窟だったからか。それでもオレは爆風で転がったけど。
こういう狭い場所で燃えたら酸素がなくなって危ないんだっけ?
魔法にそういう常識が通用するのか知らねぇけど。
「ぼーっとしてないでレイアも戦いなさい!」
「ユリノ姉はオレが攻撃魔法使えねぇの知ってんだろ!」
「回復魔法です! レイアのならアンデッドなど羽虫同然です」
マジかよ!? 遂にオレつえーー出来るのか?
ステータスの魔法の欄から使えそうなものを探して、見つけたのは広範囲へのヒーリング魔法。
ちゃんと対アンデッド効果ありって書いてあるのな。親切かよ。
回復魔法がアンデッドに攻撃として効果があるなら、態々魔力消費が桁違いの広範囲のじゃなくてもいいよな…。
オレも弓を構えて、矢にヒーリング魔法を乗っけて撃ってみた。
キレイな光を纏った矢はアンデッドに当たると、何体も消し飛ばしていった。
「レイアちゃんすっごい…みんなキラキラになって消えてったよ!」
「私よりスマートね〜…」
「レイア、貴女器用な事をしますね…普通そんな使い方しませんよ」
「シノ姉が炎の矢を飛ばしてたからな! 真似してみた」
オレではシノ姉みたいに格好良く射てねぇけど。
「ユナ姉、私達出番なくない?」
「言うな…」
「ユナ姉とリオ姉はオレ達が守るからな!」
そう言ったら二人がなんかフニャフニャしてて心配なんだが…。
ま、まぁいいか。
一通りミイラを倒したオレ達は落とし物を拾っていく。
いくつか宝箱もあって開けようとしたらセーラに止められた。
「それ、危ない…?」
「宝箱がか?」
「トラップボックスですレイア」
それって宝箱に罠があるって事か。
「レイア、うちに任せて。慣れてるから」
ユナ姉はそう言うと思いっきり宝箱をどついた。
聞いたことのないイヤな声か悲鳴みたいな音をあげて消えた後に、また宝箱。
…なんでや!
「もう大丈夫だから」
ユナ姉にそう言われて恐る恐る開ける。
「なぁ…コレなんだよ?」
「フライパンです。金属製で料理に使う器具ですよ。見たことあるでしょう」
あのな?オレが聞いてんのはそういう事じゃねぇよ。
なんで! ピラミッドで! アンデッドぶっ倒して! 出てくんのが! フライパンなんや! って聞いてんねん。
「生活必需品ですから」
「料理するには必須…?」
もういい。突っ込むのもだりぃ…。
そういうもんなんや。ここはそういう世界なんや。
ダンジョンを進んで、階層が変わっても出てくる敵はミイラや歩く骨ばっかり。
シノ姉とオレの弓で苦労はしないけど、拾う物がやな?
カトラリーセットやら、鍋にお玉。
オレは主婦かよ!
「それも悪くありませんね」
やかましいわ!
「オーブンが出たわ〜!」
「なんでシノ姉は家電なんだよ!」
「家庭用マジックアイテムです。オーブンは欲しがる人も多いので高額ですよ」
知らんがな…。
その後もオレが倒した敵からは細々とした家庭用品。
シノ姉は全部家電。冷蔵庫とか食洗機とか…。しまいにはクーラーとかヒーターまで。
ここはジョー○ンかよ!
オレだけ百円ショップレベルなのは納得いかねぇ!
「レイアちゃんの拾ったランタン便利だね!」
「ミミの役に立つものがあってオレは嬉しいぜ…」
オレ、このダンジョンから無事に帰れたら百円ショップ開くんだ…。しれっと千円商品とか混ぜといてやる。
「レイア、フラグのようなセリフやめなさい」
「言うてへんやろ…」
毎回心の声にまで叱られるのは理不尽だろ。
「そろそろ強いのが出る…?」
頭の上からセーラが警告してくれる。
「こんな狭いところでか?」
「もうすぐ扉。 開けたら広い…?」
所謂ボス部屋ってやつか。
少し通路を進んだら、セーラの言うように高さ数メートルはあるかっていう大きな扉のある広間に出た。
「開けたら倒すまで出られない…?」
「レイア、一度ここで小休止です」
ユリノ姉の言いたい事はわかったからテントを設置。
リオ姉とミミは学校があるのに大丈夫か?って聞いたら明日は休みらしい。
学校の創立記念日か。そんなのあったんだな。
オレは今年入学したばっかだから知らなかった。
もう今更か…。こっちに慣れちまったし。




