この人誰…?
目を覚ました途端、視界に飛び込んで来たのは母親らしき面影のある角のある人。
髪は赤いし、目は金色でオレと同じ。
そこからはもう意味がわからなかった。
怒られて殴られるかと思っていたのに、お母さんかママと呼べって言われたり…。
え、誰?この人…ユナ姉知ってる?
混乱してる間に母親らしき人に抱きかかえられて、今までの事を聞きたいって言うから話して聞かせた。
話してるうちに色々と慣れてはきたけど、この人本当に誰?
オレの知ってる母親ではない。絶対に。
一瞬偽物かとも思ったけど、雰囲気は記憶にある母親のままで…。
余計に頭が理解しない。
だって近づくだけで怖い顔をして、まともに会話すらしなかった母親が、オレを抱いてニコニコと話を聞いてるとか有り得るか?
ねぇよ!
「お母さん時間は平気?」
「あぁん? やっと零に会えたんだぞ。 それとも何か?私がいると邪魔か?」
「そんな事言ってないよ! 明日に障るんじゃないかって心配しただけなのに」
「理乃に心配されるほどヤワじゃねぇよ」
姉達と会話してる姿はまんま見慣れた母親なんだよな。
「お母さん?」
「どうしたー?零」
「ここではレイアだから」
「そうだな…」
そんな寂しそうにしないでくれ…。
オレにだけ決定的に態度が前と違うんだよ。心配かけすぎて壊れた…?あの母親が?
ありえねぇ…。
それからはもう大変だった。
何がほしい?とかなにか食べたいものはないか?とか…無いって言うと悲しそうにするから、適当に欲しいものを伝えたら、部下らしき人達が大忙しになった。
ごめん…。そんな無茶な事言ってねぇよな?
みんなで和食が食べたいって言っただけなのに。
待ってる間も離して貰えず、今までの事を謝られて、どうしてオレに冷たかったのか説明してくれた。
そんな理由でオレは冷たくされてたのか?ってちょっとショックだったけど、大切に思ってもらえてたのは伝わってきたからいいか。
「これからは甘やかしてやるからな!」
「いいって。姉達みたいに普通に接してもらえるのが一番嬉しいぞ」
「そうか…?」
納得いかないって顔してるけど、甘やかされるとか経験なさ過ぎて予想つかないし。
「流石に飯くらいは普通に食べたい…」
抱かれたまま食事とかありえへんやろ。
「それもそうか…小さな子供じゃないしな。 おい、私の隣に椅子を用意しろ」
上座っていうんだっけか?一番偉い人が座る位置、その隣に座らされるオレ。
ユナ姉達も苦笑いしてるから、今は好きにさせておいたほうがいいってことか。
心配かけたしな…。
食後には魔王城の宝物庫へ連れて行かれて何をするのかと思ったら、ユリノ姉の武器を母親…お母さんが壊したから代わりをくれるらしい。
相棒として相応しいかテストした…って。
ユリノ姉がケガとかしてるわけでもないから、加減してくれたのか?
「お前たちも欲しいものがあったら持っていけ」
「いいのか?いくらお母さんが魔王でも、ここの物は国のものだろ?」
付き添ってる角のあるおっさんがめっちゃ頷いてるし…。
「だが契約でレイアに全てをやったからな。好きにしていい」
確かに魔の国を含む欲しいもの全てだったな。
欲しいもの…あ、オレが欲しいと思ったものだけ貰えばいいのか!
「レイア鋭いですね。それが落としどころかと思います」
だよな!
付き添ってるおっさんに、ここの案内とどんな物があるか説明をして貰う体で、貰っても大丈夫な物を教えてもらう。
「聡明なお嬢様で助かります…」
苦労してんなおっさんも。
「あの、お嬢様に一つお尋ねしてもよろしいですか?」
「ん?」
「ワンッダへ嫁がれた王女様が何故お戻りに…?まさか先の御触れのせいで離縁されたのですか?」
何言ってんだ?このおっさん…。
「レイア、森で助けた姫ですよ」
「あぁ!! リオ姉は別人だぞ?髪の色違うだろ?」
「ええ…!?離縁されてお忍びで戻られたのかと思いましたが、別人なのですか!?」
「そうだぞー」
「なに?私の話?」
「リオ姉をワンッダに嫁いだ姫と間違えてんだよ」
「あーそっくりなんだっけ?」
リオ姉の反応や話し方から本当に別人だと納得したのか、ホッとした様子のおっさんは、宝物庫を案内してくれた。
武器や防具も色々あるし、見てるだけでワクワクする。
欲しいかと言われたら別にいらねぇけど…。扱えなさそうだしな。
価値もわかんねぇ。
貰っても大丈夫な物しかないエリアに案内してもらえたから、そこを見て回る。
せっかくのお母さんからの厚意だからな。何か一つくらい貰わないと悲しい顔をされるかもしれない。
不思議ともう殴られるかもっていう恐怖はなくなった。
今もニコニコとこっちを見てるし。
姉達も色々と物色してる。
「ユリノ姉は使えそうな武器あったか?」
「ええ、前のより手に馴染むものが」
そう言って持ってたのはやっぱりトゲ付き棍棒。しかも前のより太くておっきくて硬そう。
「レイア、人前でそのセリフ言ってはだめですよ」
「何も言ってねぇよ!?」
心読んだくせに理不尽だろ…。
シノ姉はキレイな弓。ユナ姉はなんかキューブみたいな物。アレなんだ?
リオ姉は薬の瓶みたいな物。中身がすっげー色なんだけど、まさか毒!?
オレはネックレスみたいなアクセサリーを二つ。一つはミミへのお土産だ。
色々と迷惑もかけたし、協力もしてくれたのにここにいないからな…。
「それだけでいいのか?」
「充分いいものを貰ったからな! ありがとうお母さん」
お礼を言ったらすごい速さで近づいてきて抱きしめられた。
今回は加減してくれたからか、ちょっとミシッっていっただけですんだ。
部屋に戻るとユナ姉とリオ姉、お母さんは明日もあるからとログアウト。
また会いに来てくれるって言ってた。
別人みたいだけど、あのお母さんならまた会いたい。
魔王城には好きなだけ滞在していいらしいから、今夜くらいはお世話になる。
明日には街へ戻るつもりだけどな。
「シノ姉はまだログアウトできねぇのか?」
「え、ええ〜…ほら、まだ印あるでしょ〜?」
そう言うけど、ほぼ見えないレベル。
シノ姉より後につけたリオ姉は普通にログアウトしたのにな。
本当にわかんねぇ…。
「それよりレイア、貴女は何をもらったのです?」
「アクセサリーだぞ。可愛いのはミミへのお土産だな」
オレのは一対の天使の羽根に円環のついたちょっとカッコイイやつ。
ミミには花をモチーフにしたような可愛いのを選んだ。
「私には選んでくれなかったのですか!?」
「自分で選んでたじゃねぇか…。道中協力してくれたミミに何もないのはダメだろ!」
「そうですが…」
「なになに〜?レイアちゃんはミミちゃんにだけプレゼントをあげるの〜…?」
うっ…なんかその言い方はさー。
姉達のは明日街へ出かけたら買うって言って納得してもらった。
別にプレゼントするのが嫌なわけではないしな。
姉達にだって散々世話になったんだし、それくらいしないと。
まだオレ自身の手持ちに余裕もあるからな。ちゃんと選ぶ。
ノーラとフォーラにも買っていきたし。
二人にはやっぱり食い物だな。




