お母さんは魔王
「お母さん!? レイアが死んじゃうから!!」
「零…零…」
あぁもう! うちも同じことしたから気持ちはわかるけど。客観的に見るとこれはやばい。
「ご理解いただけましたか?」
「お前に言われたくはねーけどな?」
「うっ…」
一番やっちゃいけねー事をしたのはユリノお前だ。だけど…
「もう責めるつもりもないから、お前も言うな」
「了解いたしました…」
うちらがお母さんを力ずくで止められるはずもなく、ぐったりしたレイアを見てお母さんがパニックになり魔王城大騒ぎ。
すぐに城内へレイアを運び込むと、お母さんの指示で医者が集められて、豪華な部屋の巨大なベッドに寝かされたレイアの診察。
診察するまでもなく犯人はお母さんなんだけどね?
診断結果は案の定、圧迫による気絶。
やられたレイアは、たまったものじゃないんだろうけど…。うちもやったからね、ごめん…。
落ち着いたお母さんは、眠るレイアを撫ぜながら嬉しそうしてる。
ようやく会えたんだもんね。
「ちょっと〜ユナ…」
「シノ姉、どうしたんだよ?」
「お母さんどこ…?」
シノ姉は何を言って…?お母さんならレイアの傍で…あっ!!
そういう事か。
「お母さん、シノ姉の為にもう一枚契約書を書いて。適当でいいから」
「あぁん?そういやあいついねぇな…」
シノ姉忘れられてたの!?
違うか。レイアの事で頭いっぱいだったんだよね。
お母さんは部下なのか、角のあるおっさんに書類を用意させると、サラサラっと書き込んだ。
あのおっさん何処かで見た事あるような…?
書き終えた契約書をうちが受け取り、シノ姉に渡す。
「ありがとう〜。見えないってこんな感じなのね〜」
サインしたシノ姉はようやくお母さんが見えたらしい。
「お母さんに角があるわ…! ユナ、魔王だわ〜」
「わかったから。レイアがまだ寝てるし静かに!」
「そ、そうね…」
シノ姉大丈夫か? やっぱりうちも早くレイアのいる世界に行かなきゃ駄目だな。
「嬉しそうだねお母さん。はぁーよかったー!」
リオも今日はリアルで色々あったからか、ようやくホッとしたって感じだな。
「ずっと待たせてしまってたものね〜…」
「レイアのお母様は本当に魔王様なのですね…」
「そうだ、お前。誰だ?零のなんだ?由乃そっくりな見た目だけど何モンだ?」
お母さんからユリノにすっごい圧。
「わ、私はレイアの相棒です」
たじろぐユリノとかレアじゃね?後でレイアに話してやろ。
だから心読んで睨むな。ホントなんなのこいつ。
「相棒か…いいだろう表へでろ」
「お母さん何するの〜?」
「零…こっちではレイアか。相棒を名乗るなら守れるくらいの力はあるんだろ?見てやる」
あ、終わった。
ユリノ終了のお知らせ。
だってお母さんマジだもん。
秒と保たない。
魔王城の広場へ移動し、対峙するお母さんとユリノ。
「先手は譲ってやる。加減はいらねぇから全力でこい」
「…わかりました」
ユリノの全力か。ちょっと興味あるな。
お母さんは基本的に武器は持たない。
相手が使ってくるのなら奪い取って叩き落とすくらいはするけど、武器で攻撃は絶対にしない。
そもそも拳が武器みたいなものだしなぁ…。
アレほんとに痛いから。
ユリノも素手相手に武器を使うのは躊躇ったのか、殴りにいった。
「テメェ…全力で来いって言ったのに得意のエモノも使わねぇとか舐めてんのか?」
ユリノの拳は払うようにあしらわれて、よろけた所へお母さんの蹴り。
「あー打ち上がったわ〜」
「花火みたいに言わないでよ…あれユリノ大丈夫かな?」
「平気だろ。あいつも大概タフだから」
落下してきたユリノはしっかりと着地。
蹴られた腹を押さえて肩で息はしてるけど。
「すみません…素手相手に武器は失礼かと思いましたが、使わないほうが失礼でしたか」
「全力っつたろーが。じゃなきゃ零を任せられるかわかんねぇだろう?」
ユリノも理解したのか、トゲ棍棒を構える。
…うちと武器のセンスが同じなのはなんなの?
ユリノはその棍棒でお母さんに殴りかかる。
相変わらずお母さんは拳。
ただ、さすがに棘のある棍棒を受け止めたりはせず躱して、地面に叩きつけられた棍棒の根本を殴り折った…。素手で。
「あれ金属だよね…ユナ姉のみたいな木製じゃなくて」
「ええ〜…プラスチックみたいに折れたわ…」
魔王ヤバい。うちらあんな人相手にしてたの?
これは三人がかりでもあしらわれる筈だよ。
棍棒を折られたユリノはあきらめるかと思ったけど、すぐにバックステップで距離を取ると魔法をぶっ放した。
数メートルの巨大な火球を…。
「お母さん!?」
「あれ大丈夫なのよね…?」
「お母さんだし、多分…」
見た目は大丈夫とは思えない規模だし、見てるこっちがジリジリと熱い。
「なんだぁ?見た目だけか?」
「そんな…!?」
うん、やっぱりお母さんだわ。
結果は言うまでもなく、無傷のお母さんが火の中から飛び出してきて、放心していたユリノを殴り飛ばし、魔王城の壁にユリノ型の大穴をあけて終わった。
「治療してやれ。後、穴も塞いでおけよ」
「「はっ…」」
お母さんの魔王が板についてるのはなんなのだろうか。気にしたら負けか。
元々魔王なんだし。
治療を受けたユリノはすぐに復活。
一応はお母さんに認めてはもらったらしい。
勝つとか不可能だし予想よりは頑張ったと思う。
そのお母さんはすぐにレイアの元へ戻っていった。
「何者ですかあの人は…」
「うちらの母親だな」
「魔王よ〜」
「ユリノはよくもった方だよ」
それもそうだな。今は労ってやるか。
「レイアは真実を言っていたのですね。あれが魔王…」
うちらもレイアが心配だから、早々にレイアの寝ている部屋へ戻った。
相変わらずお母さんはレイアにべったりで、ちょっとイラってするけど我慢。
「ん…んっ… はっ!? なんだ?黒いものに飛びかかられて…」
「零! 起きたか?」
「…母親か…?」
「お母さんと呼べ。ママでもいいぞ」
いや、レイア。気持ちはわかるけど、この人誰?って顔でうちを見ないで。
間違いなくお母さんだから。
「レイア、お母様ですよ」
「誰がてめぇにお母様って呼ぶことを許した!? あぁ!?」
「す、すみません!!」
「ユリノ姉は何もわかんねぇオレをずっと助けて護ってくれてたんだ。やめてくれよ…」
「わかった!」
うん、だからお母さんだよ。毎回この人誰?って顔をしないであげて。
「お、お母さん?」
「あぁ! そうだ! お前のお母さんだ!」
「怒ってないのか?」
「心配してただけだ。こうやってようやく会えたからな。それでいい」
「そ、そうか…」
零くんの時にもこんなお母さんの姿は見たことないもんね。
混乱するのはわかるよ…。
半ば強引にレイアを抱きかかえたお母さんは、そのままソファに座り、今までの事を話してくれって。
話してるうちにレイアも慣れてきたのか、こっちでの出来事を楽しそうに話してる。
お母さんはそれはもう見たことのないくらい優しい笑顔でそれを聞いてた。




