魔の国、入国
ワンッダを出港して、二日目の夜には陸が見えてきた。
途中で、オレのいる世界側の大きな帆船も追い抜いてきたから、かなり早く着いたんじゃねぇか?
魔の国、魔族と魔王のいる大陸…。
魔王は母親なんだけどな。
はぁ…気が重い。 絶対にめちゃくちゃ怒られて殴られんねん。
殴るといや、今朝からリオ姉がいないけど、どうしたんだ?
「ミミ、今日ってそっちだと何曜日?」
「日曜だね。明日は学校だから、魔の国についたらログアウトしなきゃ…」
「そっか、寂しくなるな。またゲームしような!」
「うんっ! と言っても私にはこれもゲームなんだけどね?」
そういやそうだったな…。もうわからなくなってきた。
ログアウトもできねぇオレにはこっちがもう現実だし仕方ねぇんだろうけど。
魔の国の港に入ったタイミングでようやくリオ姉がログインしてきたけど、姉達だけで何やら話してる。
不機嫌な様子から只事じゃないのは確かだな。
「レイア、魔の国へ入国したら直ぐに登城するそうです。仕度しますよ」
「あぁ…」
全身真っ白の服でも着ていった方がいいんだろうか。
まるで腹切に行くみてぇな気分。
「でしたらこちらを」
渡されたのは白のセーラー服。
嘘やろ?
「白はそれしかありません」
「わかったよ、もうそれでいい」
どうせキレイに朱に染まるだろうしな。オレの血で…。
ミミは魔の国へ入国手続きを済ませ、宿を確保したら落ちていった。
家族の再会だからって遠慮したらしい。
再会ね…オレにはゲームオーバーな未来しか見えねぇけど。
「レイアちゃん、このまま直ぐにいくわよ〜仕度は…出来てるわね」
「あぁ。覚悟もできてる」
「レイア、大丈夫だから。ね?お姉ちゃんを信じて」
そう言うとユナ姉は手を握ってくれた。
なんだろう、ちょっと安心する。
「ありがとな」
夜の魔の国を通り、城へ。
魔の国はイメージとは違い、自然豊かなキレイな国だった。
街も夜なのに明るく、店も沢山あって賑やか。
建物も禍々しさとかも無く、ごく普通にファンタジー。
普通にファンタジーってなんやねん。
でもそんな感想が出てきたんだから仕方ない。
歩いてる人の見た目がさらにファンタジーらしさを強調してる。
角とか変わった耳とか角とか羽とか…後は角とか尻尾。
「角のない人もいますよ」
「そうだな?」
いい加減ユリノ姉への一方通行な考えのだだ漏れにも慣れてきた。
「それは良かったです」
大きな街だから外れにある城までかなり歩いてきた。
ようやく城の全貌が見えるようにはなったけど、何やあれは…。
「なぁ…あれが城?」
「みたいだね、城っぽいのなんて他にないでしょ」
そう答えるリオ姉と一緒に見上げる城は、そこだけめちゃくちゃ禍々しい。
崖の上にある城は真っ黒な上に、暗雲が立ち込めて雷がなり、いかにもラスボスが居てそうな雰囲気。
「お母さんに話は通ってるのよね〜?」
「うん、ログインする時に伝えてきたから」
「じゃあ行くかー。ほら、レイア手を離さないようにね?」
「あ、あぁ…」
「いいわね〜…私も手をつなぎたかったわ〜」
「シノ姉はもう繋いだじゃん! 私なんてまたジャンケン負けたのに」
「リオさんはレイアを抱いて走りましたよね?」
宿でやってたジャンケンはコレのためか。
平和的に済んでてホッとする。
城への門は兵士で固められてたけど、直ぐに開けてもらえた。
「しっかり末端まで情報が来てるのですね」
「お母さんだし…。三桁を越えるチームメンバーを統率してたのは伊達じゃないよ」
伝説の初代様だもんな?こっちでもそれは変わらねぇって事か。
絶対に逃げられないやつだコレ。
時々近くに落ちるような雷の音にビクッとしながら崖沿いの道を歩く。
ユナ姉が手を握る力が強い。
「ユナ姉って雷苦手だったか?」
「…ううん。でも最近嫌いになったよ」
苦手じゃなくて嫌いか。何かあったか?
今は聞いても話してくれなさそうだな。それくらいは表情でわかる。
結構な距離を登って、ようやく城の目の前にある広場へ到着。
すっごい数の兵士が集まってて、もうすでに雰囲気がヤバい。
「お母さんに契約書渡してくるから待ってて」
リオ姉はそう言って走っていった。
「あの中に母親がいるのか?どれだ?」
「レイア、おそらく私達には見えませんよ」
「あぁ…それで契約書か!」
もう姉達が当たり前に見えてるから忘れてた。
紙を持ったリオ姉が戻ってきた。
「レイア、お母さんからの契約書だよ。サインしてあげて」
「わかった…」
なんやろなぁ…気分的には自分の命を終わらせる書類にサインする気分。
「レイア?」
「ユリノ姉も見てくれ」
「はいっ」
契約者 魔王マノ
依頼内容 姿を見せろ
雇用期間 今すぐ
報酬 魔の国を含むそこにある欲しいもの全て
備考 可愛がってやるから早くしろ
報酬おかしくねぇかこれ。
「魔王があげるというのであればそうなりますね」
「国とかいらねぇよ! 貰ってもどないせーと」
「別にそのまま何もしなければいいのでは?」
そういうのもありなのな。ならいいか。
下手に拒否したら更に怖いことになるだろうし。
問題は、備考欄の可愛がってやるからってやつだな。
これアレだろ?部活の先輩とかにやられる可愛がり(暴力)ってやつな?
まぁいい。覚悟はしてきたし。
ユリノ姉からもオッケーがもらえたから、自分でサイン。
直後、なにかに体当りされて、そのままオレは締め落とされた。




