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異世界に弟を奪われた姉達の奮闘記 〜なお弟はTSしても異世界を気ままに満喫中〜  作者: 狐のボタン


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異常事態 前編



「ユナ〜?」

「………」

「レイアちゃんがユナの行動に過剰に抵抗感があった理由がわかったわ〜…」

どうせうちが怖がらせたとか言うんでしょ…。

それで、みんなでうちを責めに来たんだ。


そう思ってたけど、シノ姉から聞いた話はとんでもなかった。

犯人を見つけたら細切れにしてやりたいくらいに。


「でも確かに学校へも気をつけるようにって情報来てたんだよね。まさか零が被害に合ってたなんて…見つけ出して始末したい」

「だよな…」

「でも〜結構前の事みたいよ〜?」

「はい…ようやくイヤな記憶も薄れてきていたと言ってましたから」

あぁ…うちはその記憶を思い出させちゃったのか。

確かに、あれはうちも冷静に考えたら何したんだ?って思うし。

今までも水着姿までしか見せてなかったのに…大切なその時の為に、って…。

思い出したら恥ずかしくなってきたっ!?


誤解されたままが嫌だったとはいえ、いくら仮の姿でも、身体はリアルと変わらないのに。

ほんと何してんだろうち…。

謝ろ…。


「ユナさんは暫くレイアに顔を見せない方がよろしいかと」

「なんでだよ?」

「連想して思い出してしまうみたいですから…レイアが落ち着くまで待ってあげてください」

「…わかった」

レイアは気晴らしにレクリエーションルームでミミとゲームしてるらしいから、みんなも暫くそっとしておくって。

仕方ない…ゲームで遊んでるくらいなら諦めるか。



レイアに近づけないのなら…と、一度ログアウトしてお母さんに報告する事にした。


ログアウトして気がついたけど、外は土砂降りの雨。

パン屋のお客も少なかったみたいで、お父さんとお母さんは、売れ残ったパンとシチューで夕食の最中だった。


お父さんはすぐにうちの分も用意してくれたから一緒に食べながら現状の報告。

「じゃあもうすぐ零に会えるんだな?!」

「うん、もう少しだから待ってて。契約書類の書き方も教えておくから」

「契約?」

「それをしないと違う世界にいるレイアの姿が見えないから」

詳しく説明して、手っ取り早い契約内容も教えておく。

絶対とんでもない事を書く気がするし。

実際、うちらがやったからな。全部ユリノに破られたけど…。


「お父さんはいいの?」

「零には会いたいけど、この家を守るのが役目だからね。みんなの家なんだから。安心して帰ってこられる場所が必要だろう?」

「そうだね…」

お父さんもお母さんからレイアの写真は見せてもらったらしく、データをPCに取り込んで印刷し、アルバムに纏めてた。

それを嬉しそうに見せてくれたから…。

会いたいけど我慢してるってのは伝わってくる。


今はまだ連れて帰る方法はわからないけど、ノーラの姉に会えばなにかわかるかもしれない。

お母さんと再会させたら、すぐそっちにも取り掛かるから、待っててね。



夕食の片付けを済ませ、シャワーだけ浴びてきた。


うちらはゲームをする時は決まって零くんの部屋にあつまる。

なんとなくそれが約束事みたいになってて…。

寝る前に再度ログインするつもりで、零くんの部屋へ入ろうとした時にそれは起こった。


ものすごい雷がなり、近くに落ちたような凄まじい音。

直後、家の中が真っ暗になった。

そういえば外はずっと土砂降りだったな。


…停電!?


真っ暗な中でうちは一つのことを思い出してパニックになった。

だって…零くんの起動したままのゲームが! 電源が切れたらどうなるの!?


扉から手を離しちゃってたから、ドアノブの位置もすぐに分からなくて…。

手探りでようやく見つけたドアノブをひねって扉を開いたうちは、意味のわからない光景を目にした。

 

停電してて、電気は来ていないはずなのに、真っ暗な部屋の中にチカチカと青色のライトが三つ、点灯していた。

アレって零くんのと、詩乃姉と理乃のだよな?停電してんのになんで…


「由乃、大丈夫かい?」

懐中電灯をもったお父さんが来てくれて、少しだけホッとした。

「今、停電してるよね?」

わかってるけど確認せずにはいられない。


「うん?真っ暗だろう。だから懐中電灯を持ってきたよ」

「じゃあ、あれはなんだよ! おかしいでしょ!」

お父さんはうちの指差す方を見て、言いたいことがわかったらしい。


「バッテリーでもついてるのかな?」

「……」

その発想はなかった…。


「何を騒いでるんだ。ガキじゃあるまいし、雷がこわいのか由乃は…」

そんな訳あるか。 というかお母さんも焦ろうよ!


「麻乃、あれどう思う?」

「ん?」

お父さんはそう言って零くんの部屋の中を指差す。


「…おい、まさか!?」

お母さんはお父さんの懐中電灯を借りると、室内を照らした。


その結果、うちらは更に意味のわからない光景を見ることになった。


「詩乃姉が…」

「どうなってる!!」

「うちにきかれてもわかんないよ!!」

うちが叫んだのとほぼ同時に、復旧したのか部屋の電気がついた。


やっぱり…詩乃姉がいなくなってる…どういう事…。

理乃はいるから、慌てて揺すった。


「ちょっとやめて! 誰!?」

ログアウトした理乃が起き上がってヘッドセットを外した。

よかった…無事だった。


「理乃! 向こうでどうなった!? 詩乃姉は無事?」

「突然なによ…。詩乃姉ならキッチンでユリノとココア飲んでたよ」

向こうで無事なんだな…。


「理乃落ち着いて聞けよ」

「だから何!?」

うちは、詩乃姉がいたはずの場所を指差す。

そちらを振り返った理乃は、意味がわかったのか、振り返るなりうちに掴みかかってきた。


「何があったの! なんで、なんで詩乃姉がいないの!?」

「話すから落ち着け!」

パニックになったやつが目の前にいると冷静になるってのはホントなんだな…。


っ! そうだ、お母さん達は!?

扉の方を見ると、お父さんは固まってるし、お母さんもお父さんを抱きしめて固まってる。

無理もないよな。あり得ない事が、今…まさに目の前で起きたんだから。


取り敢えずうちは、今起こった事を理乃に話して聞かせた。




「じゃあ何?雷で停電したけど、ゲームの本体は電源が落ちなかったって事?」

「うん、だって理乃もうちが呼ぶまであっちにいたんだろ?」

「だね…」

「お父さんがバッテリーついてるんじゃないかって言ってたけど」

「そんな事、説明書には書いてなかったよ。 待って、一応調べる」

理乃がスマホで調べる間に、うちは霊くんと詩乃姉のゲーム機本体を手にとって見てみた。

特に変わったところはないし、被ってみても何も見えないのは零くんのも詩乃姉のも同じ。


「やっぱり…バッテリーなんてないよ。ちょうど停電してゲーム落ちたーって言ってる人とかいるし」

「理乃、悪いんだけどもう一度零くんと詩乃姉を確認してきて」

「由乃姉は!?」

「二人をほっとけないじゃん」

固まったままの両親を放置はできない。


「わかった! 確認したら私もすぐに戻るね」

「あぁ、頼む」

理乃を見送り、うちはお父さんとお母さんをリビングのソファーへ連れて行った。


「………」

「……由乃、何が起こった?」

「わからないよ。今理乃に確認してもらってるから、その報告待ち」

「何なんだよ…!」

お母さんはテーブルを叩く。力の加減ができなかったのか、木のテーブルが…。

テーブルって砕けるんだな。そんなどうでもいい感想しか出てこない。



「麻乃、取り敢えず落ち着こう。パニックになったら大切なことも見逃しかねない」

「…京、なんでそんなに冷静なんだ!?零に続き詩乃まで消えたんだぞ!!」

「わかってるよ。だからこそ、親である僕も麻乃も取り乱したらダメだ」

本当、なんでお父さんはこういう時いつも冷静なの?

 

零くんが轢かれた(事になってる)時も、救急車で運ばれた時も、うちら三姉妹が誰が将来零くんと結婚するかでケンカしてお母さんにボコボコにされた時も、零くんが消えた時も…今回も。

取り乱してるのを見たことが無い。

パニックになってるうちらがおかしいみたいに思えてくる。


「京は、零も詩乃も大切じゃないのか!?だから…」

スパーンッ…

えっ…

お父さんがお母さんをひっぱたいた…?


「…京?」

「………」

お父さんは無言のまま部屋を出ていってしまった。

すごくつらそうな顔をして…。

お母さんも唖然として叩かれた頬を押さえてる。


お父さんが手を上げたことなんて過去に一度もない。

当然うちらにも、知ってる限りお母さんにも。


うちらが悪いことをして、叱るときも絶対に手は上げなかった。

そのお父さんが…?


「由乃姉! …ってどうしたの?ふたり共そんな顔して。お父さんは?」

「京!!」

理乃の声で我に返ったのかお母さんはお父さんを追いかけて部屋を出ていった。


「…何があったの?」

「あぁ…」






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