いるかもだけど、いらない
シノ姉から料理の手ほどきを受けていたら、まるで安い目覚ましのような、うるっさい音が鳴り響いた。
レイアは警報だというから、確認するためにうちらもついていった。
真っ先にレイアに同行すると宣言したユリノだけに活躍されるのも癪だし、何よりレイアに危険があるかもしれない状況は見過ごせない。
操舵室から外を覗いたレイアが言うには、こちらの船に危険はなく、他の船が襲われてるところに出くわしたと。
うちらはレイアに危険がないのなら手を出すつもりもない。
ただ…レイアはミミに、襲われてる船の人が大丈夫なのか確認してた。
相変わらず優しいんだから。その誰彼関係なく振りまく優しさで、うちがやきもきしてるとも知らずに…。
気になるのはわかるんだけどね。
窓から見える範囲だけでも次々と船が沈んでくるから、うちらの乗ってる船は大丈夫なのか不安になってくるし。
レイアは、認識阻害っていうのがかかってるからこの船は大丈夫だと言うけど、どういう事?
ユリノは理解してるようだけど、わからないうちらの為にってレイアは自身に認識阻害魔法ってのをかけた。
唐突に消えるレイアに慌ててしまう。
ユリノはまるで見えてるかのようにレイアを撫ぜてるらしい。
そこにいるの?
近づいて手を伸ばすと確かに…いる!
あまりにペタペタと触れたせいで、怒ったレイアが移動してしまい、もうどこにいるかわからない。
また前みたいに居なくなってしまったのかと、焦りで頭が真っ白になった。
レイアは直ぐに姿を見せてくれたけど、ホッとしたうちは思わず力加減を間違えて抱きしめた。
ごめん…。
またやっちゃった…そう思って落ち込んでたらすごい衝撃。
この船は大丈夫なんじゃないの!?
船外を確認したレイアは、沈んできた船がぶつかったと。
撤去するにも浮上せざるを得ないから、戦域を離脱。
浮上したこちらの船の甲板に、でかい船の残骸が。
「あー…こんなもんどうやって撤去すんだよ…」
破壊するだけなら、うちらでもなんとでもなるけど…。
ハンマーを取り出したシノ姉をレイアが止める。
「こっちの船まで壊れるから!」
だよね…巻き込む可能性大だよな。
「じゃあどうするのよ〜」
悩むレイア。
うちも力になりたいのに何も思いつかない…。
てくてくと船の残骸に近づいたミミは何やら触れたりして確認してる。
「これ、もう所有権なくなってますね。ただの資材扱いです」
「…なるほど、でしたら簡単ですね。レイア」
「ん? あーそういうことか!」
なに?三人だけでわかった様に…は!?
引っかかっていた残骸は、何回かに分けて消えていった。
「レイア! 何したのよ!?」
リオも理解できないのか叫ぶ。
「バラバラにしてポケットに仕舞っただけだぞ?」
ポケット…?
「収納、ストレージ、アイテムボックス…そちらでの名称は知りませんが、所有権のないものは誰でも回収できますから。私達で回収しました」
「リオ姉もアイテムとか拾うだろ?それだよ」
「あぁ〜! ってそんなおっきな物も?」
「回収すると勝手にバラバラになってるからな。木材とか金属になってるぞ」
なるほどね…。アイテムとして回収したのか。
大した手間もなく問題が解決したのは良いけど、うちはまた活躍できなかった…。
レイアは戦闘とかないならそれでいいって言うけど。うちとしては複雑。
活躍していいとこ見せたいのに。
船はまた潜水すると、目的地に向かって進む。
「レイア、船酔いは大丈夫ですか?」
「ああ。ユリノ姉の教えてくれた魔法を使ったおかげか、なんともないぞ」
また何かあるといけないからと、レイアは操舵室に残るらしい。
船長席みたいな椅子に座って足をプラプラさせてる。
うちの船長可愛すぎか。
「ユナ、食事の仕度を再開するわよ〜」
「うん…うちらは今出来る事をするしかないね」
近くにいたいけど、ここにいてもうちに出来ることは無さそうだから。
美味しいもの作って持ってきてあげよう。
シノ姉に教わりながら料理をしてたら、料理人ってスキルを手に入れた。
ステータスから確認したら、レベルが上がれば、いずれは店が出せるくらいに上手くなると。
リアルと違って目に見えて成果があるのはモチベに繋がるな。
「シノ姉は料理人ってスキル持ってる?」
「ええ〜。初めからレベルMAXよ〜」
それは勝てないわけだ…。
昼過ぎに出港した船は多少のトラブルもあったけど、順調に航行。
夕方には早めの夕食を食べた。
「シノ姉とユナ姉が作ってくれたのすっげー美味い! ありがとな」
美味しそうに食べてくれて嬉しいよ。
「私も習ったほうがいいかな…」
リオは…うん。不安しかない。
お母さんに似て、料理は壊滅的だからな。
「無理しなくてもいいんじゃねぇか?向き不向きがあるんだし」
「そうだけど! なんか悔しくて」
「やるならシノ姉に見てもらわないとダメだぞ。オレもそうしたからな」
レイアというか、零くんはいつも詩乃姉のお手伝いしてたからな。
つまみ食いだけしに行ってた理乃とは違う。
「レイアは料理人ってスキル持ってる?」
「んぁ? どうだっけ… あー、あるな。52レベルって、高いのか?」
「私より高いの!?」
ミミも驚いてる。うちも今さっきそのスキルを手に入れたばかりだから当然低い。
弟に女子力で負けてるうちらって…。
「大丈夫です、私もそのスキルはレベル低いですから」
「そんな低レベルの戦いしてねーから!」
ユリノは慰めてくれてるのか煽ってきてるのか…。
「ユナ、継続は力よ〜」
「はい…」
毎日やれって事だよな。がんばるか…。
食後休憩の後、レイアはお風呂に入るといって、当たり前にみんなついていく
。
うちだけ仲間はずれにして。
レイアがミミはダメだろって言ったのに、ゲームのキャラだから大丈夫とか言って、押し切りやがった。
それならうちだって…。
「ユナはダメよ〜?」
「なんでだよ!」
「私達だってユナ姉のソレ見たくないからね!?やめてよ!」
くそっ…うちだって見たくないけど、ないと困るんだから!
「なぁ…ユナ姉って…いや、なんでもねぇ」
スッとうちから目をそらすレイア。
なに…?レイアにそんな態度されると傷つくよ!?
「レイアはユナさんが現実でもソレなんじゃないかと不安なようですよ」
はぁ!?んなわけあるか! それであのリアクション?
決めた…! キャラクリし直す!
急遽ログアウトしたうちは、課金してキャラクター変更。
必要だったかもって思わなくはないけど、あんなモノ無くても、想いの力で世界だろうが渡ってやる!
それに…どっちにしても、今のレイアにはとてもじゃないけど使えないよ…。
そのままログインしたうちは、お風呂へ突撃。
レイアにもう大丈夫だからってタオルを取って見せたら、気絶して湯船に沈んだ…。
「何をしてるのですか!!」
「ユナはバカなの〜…?無くなったからって目の前で見せる人がいますか!」
「ユナ姉…恥じらいを持とうよ」
「え…下に水着着てたとかじゃ…」
「ないわ〜モロよ」
「私は後ろにいたのでタオルを開いたのしかわからなくて…え?」
「ミミは見なくてよかったね。私も真正面じゃなくて良かったわ」
「私とレイアはまともですよ!」
なんかめっちゃ怒られた…。
暫くして目を覚ましたレイアに、変態通り魔って言われたうちは部屋に引きこもった。




