船内にて
オレの組み立てた船を見た姉達は、予想通りのリアクション。
あえて外見は普通に、目立たないようパーツを組んだから無理もない。
出港と共に潜水していく船を見て、真っ先にオレの意図に気がついてくれたのはユナ姉だった。
まぁこんなのが作れたのもパーツを集めてくれた姉達のお陰なんだけどな。
オートパイロットで進むから、イレギュラーでもなきゃ放置でいい。
障害物なんかも勝手に避けていくらしいし。
出港の後はみんなを個室に案内。それぞれ部屋を選んでもらった。
シノ姉はキッチンが気になるというからそっちへ案内した。
「本格的ね〜。これなら何でも作れそうだわ〜」
それは嬉しいな。船旅の間シノ姉の美味しいご飯が食える。
…それもオレが酔わずにいられたらの話だけど。
キッチンの使い勝手をチェックをしてるシノ姉を眺めてたら、個室を選んでたみんなも集まってきた。
「レイア、レクリエーションルームに見たことのないものが色々と…」
そっちも見てきたんだな。
「あぁ…オレの生まれ故郷のものだからな、ユリノ姉には見慣れないかもだなぁ」
この船がゲーム側のアイテムで作られてるんだから無理もない。
映画の見れるシアターやビリヤードといった定番から、何故かテレビゲームまであるからな…。ゲームの中なのに。
早速昼ご飯の仕度を始めてくれるシノ姉を手伝おうとしたら、ユナ姉に止められた。
「うちが手伝うから。レイアはのんびりしてて」
「珍しいな?普段はよっぽどじゃなきゃやらねぇのに…」
出来ない訳じゃないのは知ってるけど、どういう風の吹きまわしだ?
下手な事を言ってキレられてもイヤだから何も言わねぇけど…。
シノ姉から真剣に教わってるユナ姉。
ほんとどうしたんだよ…。船旅なんだから嵐とか困るからな?
潜水艦だからあまり影響ないのか? どちらにしても安全な航海をしたいんだが…。
「レイア、大丈夫ですから黙ってなさい」
「何も言ってねぇよ」
エスパーめ…。
「そうだ、ミミ」
「うん?」
「魔の国までどれくらいかかるんだ?」
「私も初めてだから…。ゲームの公式情報だと早くても二日はかかるって書いてあったよ」
「マジかよ…」
今の所、酔ってはないけど、大丈夫かな…。
あまり揺れも感じないし。此処までは一応想定どおり。
「レイア、心配なのでしたら予め回復魔法をつかって、耐性を上げておいたらどうです?」
「なんだそれ!?」
レイアなら使えるはずですってユリノ姉は言うけど、どれだ?
魔法の一覧から探して見つけたのは、ありとあらゆる耐性が上がる竜王の加護って魔法。
「それですレイア」
試しに使ってみたけど、体感的な変化は特に感じない。
「これ効いてんのか?」
「試してみます?」
そう言ったユリノ姉はイキナリデコピンをしてきた。
バチンッ! って、とてもデコピンとは思えないすっげー音がしたけど痛みも何も感じない。
「レイアちゃん大丈夫!?」
「ユリノ、レイアになにするの! いきなり攻撃するとかバカなの!?」
散々オレを殴ってきたリオ姉には言われたくねぇと思うけど…。
「レイアの魔法なら、これくらいじゃなんともありませんよ」
「あぁ…痛みもなかったからな」
「そもそもレイアにはドラゴン二人の加護があります。並の相手ではケガさえしません」
ノーラたちのか?加護ってそーゆー…。マジか。
また改めて礼を言わないとな。
“ジリリリリリリ…!!”
そんな事を考えてたら、船内にけたたましく鳴り響く警報。
「な、なに!?」
「多分モンスターとかが近くにいるんだと思う」
外敵がある程度近くに来ると、警報がなるって説明書に書いてあったし。
こんなちゃっちぃ音やとは思わなかったけど。目覚ましかよ…。
「おはようございますレイア」
「起きてるわ! さっきデコピンしたやろ…」
取り敢えずコクピットへ行って、確認しないとな。
「私も行きます」
「おう」
ユリノ姉が来てくれるなら安心だな。
「そうでしょう?」
だから心を読むな。
食事の仕度をしてくれてたシノ姉達も心配してついてきてくれた。
船はそこそこ深い深度を進んでいるけど、当たり前のように船外の水中が明るく見えてるのは気にしたらダメなんやろな…。
「アレなに!?」
「オレが知るかよ…ゲームならミミのが詳しいだろ?」
「船旅なんて初めてだからわかんないよ!」
そうなのか…。
見た感じ、恐竜図鑑で見たような首長竜が、海上を進む船を襲ってるっぽい。
しかも群れなのかあちこちで船がやられて沈んで行くのが見える。
「あれ大丈夫なのか?乗ってるやつとか…」
「ゲームなら登録した拠点に戻されるだけだよ」
ミミのその言葉通りなのか、人が沈んで来ることはなくホッとする。
「海って投げ出されたら終わりなのか?」
「深いところはそうだね。浅瀬は海水浴とかできるよ」
こんな恐竜みたいなのがわんさかいる海で泳ぐとか正気か!?
キャッキャしてたらガブッてされるとかいややからな!
「浅瀬にはきませんよ。大丈夫です」
確かに恐竜の方が座礁しそうだもんな?でもな、気分の問題なんだわ。
「レイアちゃん、この船はおそわれないのかしら〜」
「多分大丈夫だぞ」
「どういう事?説明してよレイア!」
「わかったから揺するなリオ姉! 酔ったらどうしてくれんだよ…」
「あ…ご、ごめん…」
ったく…相変わらずのバカ力だな。
「潜水する時に目立つだろ?だからちゃんと対策されてるんだよ。見えなくなるってわけじゃねぇけど、認識阻害がかかるんだと」
「あ〜なるほど…でしたら安心ですね」
ユリノ姉は理解が早すぎねぇか?
「認識阻害?」
「えっとな…待ってろユナ姉。今見せるから」
オレ自身もその魔法持ってたからな。
さっき見つけたんだけど…。
これ、もっと早く知ってたらエルフの森とかで苦労しなかったのにな。
今更言ってもしゃーねぇんだけど。
弓使いの使える魔法で、多分だけど隠れて狩りとかする為のものだと思う。
自身に認識阻害の魔法をかける。
「「レイア!?」」
「「レイアちゃん!?」」
姉達にはどう見えてんだ?
「姿が見えませんね、認識阻害というのは相手の意識から外れる、つまり、存在しているのにそれを認識できなくするものです」
ユリノ姉はそう言いながら真っ直ぐオレに向かってきて、頭を撫ぜてきた。
「見えてんのか?」
「いいえ、ですが動いていないのならここにいるはず…と思いまして」
姉達も寄ってきてペタペタと…。
「おい、やめろ変なとこ触んな!」
慌ててバックステップ。 ったく…どさくさで人の身体弄りやがって。
触って良いとこと悪いとこがあるだろうが。
「いなくなったよ! レイア!?」
「場所を移動されてしまったらもう見つけられません」
姉達が騒ぐから魔法解除。
「いたー!!」
「ユナ姉、待っ…ぐえっ…」
「レイアを離しなさい! 窒息させる気ですか!」
「だって!」
ユナ姉はユリノ姉に叱られ、ようやくオレは離してもらえた。
「はぁ…はぁ…。最初に説明しただろうが! この魔法が船にかかってるから狙われたりしねぇんだよ」
そもそもパーツを集めてきたの姉達だろ。
「じゃあなんで警報なってるの〜?」
「周りに危険があるから一応って事じゃねぇか」
そう言った瞬間ものすごい衝撃で尻もちをつく。
嘘だろ…!?
慌てて起き上がって船外を見てみたら…。
あぁ…これは仕方ねぇな。
「攻撃されないんじゃないの?レイアちゃん、船は?」
「いや、攻撃っつーか、沈んできた船がぶつかったんだよ」
窓から見えるこっちの船の甲板に、沈んできた船が乗っかってる。
「どうします?レイア」
「こっちの船に損傷はないけど、このままだと速度が出ないしなぁ…一度浮上して撤去するしかねぇだろうな」
「でしたら、このまま危険地帯だけでも抜けましょう」
「そうだな」
上では戦ってるみたいだし、とっとと戦線離脱するに限る。
オートパイロットから手動に切り替えて、最短で戦闘エリアを離れる。
「このあたりならもう大丈夫でしょう」
「だな…」
船を浮上させる。
さて…どうやってあの船の残骸を撤去するかだな。




