出港ー!
夕べはお楽しみでしたね。
とか、一度言われてみたい…。
その為にはまずはレイアとの物理的距離を近づけないと!
誰がレイアの隣で寝るかでうちらが言い争ってたら、レイアはテントを出して入っていっちゃった!
追いかけようとしたけど、入口が開かない!
こんな布みたいなテントなのになんで…。
「鍵かけられましたね…」
あぁ〜なるほどね! ってなるか!
これテント! 扉じゃねーから!
でも実際に開かないし、呼びかけても反応がない。
「外からの音は遮断されますから無駄です。中は別空間ですから」
ユリノが何言ってるか全然わかんねー。
そっちはそっちでゲームよりゲームみたいな世界だな!
仕方なくうちらはレイアのテントの周りで雑魚寝。
少しでも近くにいたくて…。
………
……
…
朝になったらレイアが先に起きてて、朝ごはんを作ってくれてた。
うちらが変なとこで寝てたからか、ごめん…って謝ってくれて。
別にレイアが悪いわけじゃない。でも、朝ごはんは嬉しい。
「美味しい…。 え?なんでレイアちゃん女子力高いの!?」
「おいミミ、女子力とか言うな。シノ姉の手伝いしてたからな、多少は教えてもらってるぞ」
「ちゃんとできてるわ〜偉いわレイアちゃん」
うん、本当に美味しい…。
日本の朝食って感じがホッとする。
「レイア、毎日私にお味噌汁作って」
「リオ姉はそれ意味わかって言ってんのかよ」
「もちろんだよ!」
うちも! っていいたいけど、うちは作ってあげる側になりたい。
そりゃあ、たまには作ってもらうのも悪くないけどね。
「レイア、どうしてここまで出来るのに普段からやらないのですか! いつも食べさせてください」
「宿でうまいものが食える状態でわざわざ作る必要あるか? しかもテントにキッチンがあるのすら知らなかったんだぞ?」
「でも!」
「また作ってやるから! 今は冷める前に食ってくれよ」
ダメだ。料理の腕もだけど、エプロン姿のレイアが可愛くて、勝てる気がしねー…。
うちの弟は色々と反則だろ!
朝食後、少しゆっくりしてから宿を出た。
朝から嬉しいのと、落ち込むのと二つの感情に振り回されて、うちは疲れたよ…。
その上でこの混みっぷり。ゲーム人口ヤバいな。
港へ行くだけで一苦労だ。
「レイア、手を離したらだめよ〜」
「あぁ…確実にはぐれるからな」
あの時うちがグーを出してれば!!
じゃんけんに負けたうちは、レイアと手を繋げなかった。
でもな?方向音痴のシノ姉が繋ぐのは絶対に間違ってると思う!
マップでシノ姉の居場所は把握できるから常に見ておくしかない。
手を繋いでるレイアも、シノ姉の方向音痴は理解してるから話しかけ続けてくれてるし。
「シノ姉達も服買ってたんだな」
「そうよ〜。レイアちゃんも可愛いわ」
うん、ユリノが言ってたのはホントだった。セーラー服とかリアルじゃ絶対に着てくれないからな。
似合いすぎてて攫われねーか心配になるレベル。
「ユリノ姉はこればっかを色違いで買ったんだぜ? 他にも服は色々とあるのに…」
「みんなさんには好評なようですが?」
「うるせぇよ…」
「可愛いよ、レイアちゃん」
「ほんとやめろよミミ」
そういやリオ達は服や水着を買いに行かせる暇がなかったな。
この街で、とも思ったけど、この混雑じゃ無理だな。
現地で買うしかねーか…。
港に到着した時には、既にイベントが開始されて船が次々と出港していくのが見えた。
「レイア、あれが客船ですよ」
「オレたちの世界のか?」
「ええ」
ユリノが指差す先には確かにバカでかい帆船が。
「すっげー…あんなの初めで見た!」
「乗りたかったですか?」
「んー、こうやって見れたからな。それでいい」
零くんって船で酷く酔ってたからなぁ…。
小さい時に、お父さんの提案でフェリーに乗って引っ越しをした事があった。
お母さんのバイクとか車もあるから、飛行機は乗れない。かと言って高速を走ってたら物凄く時間がかかる。
そんな長距離の引っ越しの時に、旅行を兼ねて船で行こうって。
大喜びしてた零くんは、船に乗ってすぐに酔ってしまい、ずっとぐったりしてた。
お母さんが膝枕して、傍にずっとついてて心配してたけど…覚えてないよね。
港が空くのを待ってたらお昼になっちゃった。
「レイア、そろそろ船を出しても大丈夫ですよ」
「ん、そうだな」
どんなのを組み立てたんだろう?そう思い、ワクワクしてたら…
「あれ…」
「普通ね〜…」
「レイアならもっとこだわるかと思ったわ」
だよね…。見た目は本当に普通の小さな帆船。
さっきから港で一番見かけるようなデザイン。
「甘いな。姉達は甘い! 見てくれだけで判断するのはやめたほうがいいぜ?なんせ姉達が必死にパーツを集めてくれたんだぞ?最高のものにしたからな!」
レイアはすっごいドヤ顔。
「乗ればわかると言うことですね?」
「そうだぞ。 疑うのならこっちでもいいぞ?」
レイアがもう一つ出したのは、どう見てもただのボート。しかも人力。
海を行くのに足で漕ぐとか無理っしょ…。
そう思ったけど、港にその人力タイプで出発した人達が何組かいて、流石に声に出せなかった。
チャレンジャー過ぎるだろ、ここ海だからな?
途中で力尽きたらどーすんだよ。
まぁうちが気にしても仕方ねーけど。
レイアは、2隻のうち、好きな方を選べばいいって言うから当然うちはレイアを信じて帆船に。
みんなもそうだよな。足漕ぎは無理。
誰も乗りたがらなかった足漕ぎの方を仕舞うと、レイアは帆船に乗り込んだ。
うちらも続く。
乗った感じは特に変わった感じも特別感もない。
「レイアちゃん、何が特別なの?」
「まぁ、慌てんなって。 ユリノ姉、帆をたたむから手伝ってくれ」
「はい?帆船なのにですか?」
「それはカモフラージュだからな。無くてもいいんだよ。ただ、無いと目立つだろ?だからつけただけだ」
「わかりました」
大きな船でもないし、帆も小さいからあっという間に帆がたたまれる。
ロープを引っ張るだけとか、スクロールカーテンかよ…。
「じゃあみんな船内に行くぞー」
レイアが船の後方にある扉を開けてくれたからそこから中へ。
「嘘…なにこれ」
中は現代的で、しっかりと明かりもついてる。
「全員分の個室もあるし、各種設備もあるからな」
「なにがあるの〜?」
「シノ姉が喜ぶキッチンもあるし、風呂やシャワー、レクリエーションルームもある」
もう豪華フェリーだな。
「一番大事な所を見せるからついてく来てくれ」
うちらは他に何があるんだ?ってお互い顔を見合わせて、それでもついていく。
到着したのは、まるでSFのような操舵室。
「もう出港していいんだよな?」
「うん。むしろ遅れてるくらいだからいつでもいいよ。レイアちゃん動かせるの?」
「ちゃんと説明書読んで頭に入れた。任せてくれ」
レイアが出港ー! って叫んでボタンを押したら、ゴゴゴゴってすごい音が。
「なにこの音!? レイア本当に大丈夫なのよね?」
「リオ姉は疑い深いなー。そこの窓から外が見れるからよく見てるといいぞ」
真正面を指差すレイア。
え…。
「沈んでる沈んでる!! 大丈夫じゃないよレイア!」
「これはそういう船なんだって」
海に潜る…?
「レイア、これまさか潜水艦?」
「ユナ姉正解! 海中なら波の影響も少なくて酔いにくいだろうし、何より他の船を気にせず進めるからな」
マーキングの時といい、この船といい、予想外のことしてくるなぁレイアは…。
「レイア、魔の国はもう少し左方向です」
「りょーかい! つっても、行き先を設定したらオートパイロットだからほっとけば着くけどな」
「すごいわ〜レイアちゃん!」
「いや、凄いのは姉達だからな?こんなパーツ集めてきてくれたんだから。ありがとな!」
そんないい笑顔でお礼言われたらうち我慢できなくなるよ!?
耐えろ…耐えるんだ…。
ほんとにもう…。どこかに大切に仕舞い込んでしまいたいよ…。




