世界と想いが交差する
シノンさんの宿に泊まり、部屋でのんびりしてたら、ユリノ姉からオレたちの世界側と、姉達のゲーム側との違いを聞かされた。
「イベントが始まるタイミングと、こちらの船が出港するタイミングは同じなんです」
「港はどうなるんだ?」
「入り乱れるのではないかと。こちら側も客船に乗れなかった者達が船を用意したなんて話も聞きましたし…」
「というか…そもそも世界が混ざり合ってる場所って、どうなってんだ?」
「どう…とは?」
「だからさ、ゲーム側はプレイヤーがわんさか船を用意してんだろ?」
「そうらしいですね」
「オレたちの世界からそいつらはどう見えてるんだよ?」
「今迄の傾向から予測すると、レイアに近ければ近いほどこちらの影響を受けます。ただ、それはあくまでもレイアと親しい人のみです」
となると、姉達はゲームのイベントじゃなく、こっちで魔の国へ向かう人たちに混ざるのか?港も?
いや、でもなぁ…。オレがいてもダンジョンの入り口とかがゲームの世界になってたり、姉の破壊した森はそのままだったりしたよな…。
「あまり難しく考えないほうがいいですよ」
「なんでだよ…」
「また頭痛になったりしたら嫌でしょう?」
それは、うん…。激痛だったからな。
「その時々の世界に合わせるしかないかと思いますよ」
「わかった」
わかんねぇ事を悩んでも仕方ねぇか。
「そろそろワンッダへ出発します。ですが、出かける前に少しいいですか?」
「…なんだよ。またおかしな話する気か?」
「違います。リオさんのことです」
リオ姉?なんでユリノ姉が…?
「一度ゆっくり話してみたらどうですか?」
「…嫌われてるかもしれねぇのにか?下手したらまた殴られるんだぞ…」
何を理由に殴られるかもわかんねぇのに…。
「零、ごめん…」
突然リオ姉の声がして、振り返るより先に後ろから締め上げられ…ない?
あれ?抱き方が優しい…どうしたんだよ?
「私、零のこと大好きだよ。零は私の事嫌い?」
「…オレは別に嫌ってないぞ。むしろ嫌われてるんじゃねぇかと思ってたし」
怒ってる時は怖いけど、そうじゃなきゃ普通だし。暴走してた由乃姉も止めてくれてたからな。
「なんでそう思ったの?」
「いつも助けに来てくれるけど、絶対にオレも殴るし…怒るし。オレがいると迷惑なのかなって」
「そんな事無い! 迷惑なんて思ってないよ…。手をあげたのは…その、ごめん。心配過ぎて勢いで…」
どんな勢いだよって言いたいけど、後ろから抱きしめながら泣いてるのがわかるから、何も言えなくなる。
オレはまた姉を泣かしたのか?
「零、こんな姉だけど許してくれる?」
「別に怒ってねぇよ。嫌われてないならそれでいいし」
「そっか…」
いつの間にかユリノ姉いねぇし…。
「零は私の事、本当に嫌ってない?」
「ないって」
「じゃあ証明してよ! 不安なの! お願い…」
どうしろってんだよ…。
半ば強引に振り向かされたオレはどうしたらいいかわからず。
「ん!」
あぁ…そういう事か。
大切に思ってるって伝えたらいいんだな?
首を出して待ってるし。
「ログアウトできなくなっても知らねぇからな?」
「いいよ。どうせもう週末だし」
リアルはそうなんだな。こっちは曜日の感覚ないからわかんねぇけど。
印をつけたらリオ姉は泣き止んで嬉しそうにしてた。
今まで見た中で一番優しい笑顔を見た気がする。
「零…」
「ん? ちょ…まっ…なにすんだよ!」
「いいよね? ね?」
何がだよ!
これで、もれなく姉全員から押し倒されましたってか? コンプリートかよ!
全部揃った記念に魔王のところへご案内ってやつか!
はぁ…。落ち着け。
理乃姉、いや…リオ姉は何のつもりだよ。
さっきまで優しい笑顔だったのに、今の笑顔はめっちゃ怖い!
ヘルプ!! SOS!! ・・・ーーー・・・!
誰かー! リオ姉が壊れたぁ!!
「はいは〜い。そこまでよ〜」
突然、部屋に姉達が入ってきて、リオ姉はオレから引き剥がされた。
助かったのか?
びっくりしたー。あまりに驚いてモールスまで打ってたわ。
「いい雰囲気だったのに! どうして邪魔するのよ」
「うちの時も邪魔されたからな。抜け駆けはさせねーよ」
「そうよ〜?仲直りするまでは待ってあげたんだから〜」
みんなにも心配かけてたんだな、すまねぇ…。
「レイア?」
「なんだよ?」
「私だけ! 無いんです! おかしいですよね? 相棒なのに! 私からつけたから必要ないというのですか?そうですか。ではまた私がつけますよ。全身につけますよ。いいんですか?いいんですね?」
「落ち着け。レイアがドン引きしてるから」
なんやのん…めっちゃまくし立てるやん。
「よくその長ゼリフ噛まねぇな?」
しょーもない感想しか出てこなかったわ。
印の話だよな?
まぁ、ユリノ姉はログアウトとか関係ないから、大丈夫なんだろうけど…。
それに、これを教えてくれたのはユリノ姉だもんな。
無理やりだったけど。
早くしろと言わんばかりに抱きあげられたら逃げ道もねぇな?
「もし、何かおかしな事になったら絶対に言ってくれよ?隠したりしたら許さねぇからな」
「わかりました、約束します」
首にしっかりとマーキング。
うん、なんかいいな。オレのって感じがする。
「そうですよ。レイアのです」
恥ずかしいセリフをエスパーすんのやめろ。
「わ、私も友達から進展したらつけてもらうから!」
「ミミいたのかよ。声かけてくれればいいのに」
「無理だよ!? 濡れ場みたいなところへ踏み込む勇気はないよ!」
なんだよ濡れ場って…風呂場でもねぇのに。
ミミに、今つけろって言われなくてよかった。なんかさすがに抵抗あるし。
家族じゃないからか?わかんねぇけど…。




