知らない時間の共有
ノーラに送ってもらい、ダンジョンを脱出。
宿へ帰ってきた。
結局うちがログアウトできない理由は思っていたとおりだった。
ただ、このマークが消えたらうちは…。
恐らくまたレイアとは別の世界を生きる事になる。
近くに居れば影響を受けるとはいえ、そういう事じゃないんだよ。
うちは同じ世界で生きていきたいんだ。一時的なんかじゃなく…。
今回のイレギュラーを再現するには、レイアからの強い思いが必要になる。
無理強いしたり、強制してどうにかなるものではないのはうちもわかるけど…でも…。
それだけ思いを込めてつけてくれた印が消えてしまうのはかなり悲しいものがある。
鏡で確認しても確かに薄くなってる。
なんでゲームキャラの身体が?とかはレイアの影響下にあるからとしか言えないけど、シノ姉達の話ではリアルの身体にもしっかり、印はついてたらしい。
すごく羨ましがられて、それはちょっとした優越感だった。
ノーラ達ドラゴンとレイアが夫婦とかってのは、説明を聞いても納得できるものではなかった。だって運命共同体であり、生死さえ共有してるとか…。
そんなの羨ましすぎる。
ただ、一点…レイアを傷付ける事ができるのは、後二体いるノーラが姉と呼ぶドラゴンくらいしかこの世界にいないという、そこだけは安心要素だし、感謝してる。
だからこそうちらも鉾を収めた。
もちろん攻撃するつもりなんてなかったけど、納得できる理由が欲しかったんだろうなうちらは…。
これからうちがログアウトできるようになったら、また離ればなれになる時もある。
お母さんに説明しなくてはいけないし…。
その間レイアを守れるのはユリノしかいない。
あいつもうちらと同等くらいには力がありそうだけど、前回の事があるからな。
そう考えるとドラゴンの加護は有り難い。
「ユナ姉?難しい顔してどうしたんだよ?」
「ううん、レイアからの印が消えそうなのが寂しいなーと思ってね」
「もうやんねぇからな! またユナ姉をこっちに縛り付けるかもしれないような事オレには出来ねぇよ」
「ひどいわ…ユナにだけ! 私も大切じゃないの〜?」
「そうだよ、全員と向き合うって言ったよね?」
「それとこれは話が違うだろうが…」
やっぱり諦めきれてないか。ふふっ、この優越感ヤバっ…。
「ユナ?ニヤニヤしてるとひっぱたくわよ〜?」
「負け惜しみで手を出すのは良くないと思うよ」
「〜〜〜っ!」
「私は諦めないからね! レイア、ほら見て?私の首筋…ぱくってしたくならない?」
「リオ姉、大丈夫か? オレはヴァンパイアじゃねぇぞ…」
多分リオは色気を見てほしかったんだろうけど、レイアにそれは通じないだろうなぁ…。
落ち込んでるから後でフォローするか。
それよりだ…。
「ミミ、まだ話してないの?」
「…なんて話したらいいかわからないんです。あんな姿を見せた後では…」
「レイアもミミがああなったのは、自分にも責任があるから謝りたいって言ってたよ?」
「…そう、ですか」
「ほら、話してきな。うちらは少し席を外すから」
「ありがとうございます…」
渋るユリノやシノ姉を連れてレイアに聞いた庭園とやらを見に行くか。
キレイだけど、ウザかったとか言ってたけど…。
………
……
実際に見て回ったけど、これは…何というか…。
「季節感メッチャクチャだね」
「ほんとよ〜キレイではあるけど、そうじゃないのよね」
レイアの言ってた意味がよーくわかった。
確かにこれはない。
風情とかそういうのが何もない。
「皆さんの世界はどんなところなのですか?」
「今見た景色が、一年かけてゆっくりと変化していくんだよ。一度に見るもんじゃないんだ」
「一年かけてゆっくりと…」
「ここで例えるなら、街全部がこんな風に雪景色になって、それが暫く続くんだ。それが終わると、雪がとけ、草木が芽吹き、桜が咲く」
「そう聞いてしまうと、一度に見れてしまうのはお得なようで、勿体なくも感じます」
「だろ?季節感ってのは、その時々で肌で感じ、目で見て、食で味わう、そういう物なんだよ」
うちの説明でユリノにうまく伝わったのかはわからない。でも納得はしてくれたみたいだな。
「レイアが不満そうにしていた理由がやっとわかりました」
「そうか…」
「私達の世界に興味ある〜?」
「ええ、レイアの生まれた世界ですから…」
「私達が知ってる事なら教えてあげるけどね」
「では、レイアの…レイアの幼い頃の話を聞かせてください!」
「あー…可愛い可愛い零くんの話かー。どうしようかなぁ」
「私達の大切な思い出だもんね」
「そうよね〜。幾らでも語れるけど…」
「…こちらにレイアが来てから、私しか知らない話、聞きたくありませんか?」
そうきたか…。
それは確かに聞きたい。気になる。
仕方ねーなー。
お互いに話をするか。
零くんの可愛さに悶絶するなよ?
…………
………
……
…
うちらはそれはそれは盛り上がった。
当然だよな?あの零くんとレイアの話だ。うちらにとってはこれ以上ない栄養素だからな!
レイアがうちらを探して迎えに来るまで話し込んでた。
「何やってんだよ…もう真っ暗なのに。夕食、一緒に食べようと思ったのにいねぇから随分探したんだぞ」
「ごめんね、ちょっと盛り上がってて」
レイアは首を傾げてるけど、内容は秘密。
絶対に嫌がるから。




