大切のシルシ
レイアに風邪を引かせてしまった。
それはそうだろう、大切なレイアを半裸で放置して口論してたのだから…。
ほんとにうちらは何をしてるのか。
変わると約束しておいて…自分の不甲斐なさに腹が立つ。
反省を込めて看病はユリノに任せ、シノ姉とニャンダー近くのダンジョンを荒らしまわった。
おかげでアイテムも資金も更に増えたのは言うまでもない。
まぁ…シノ姉のおかげなんだけど。
うちだって戦ってるのに…! レアアイテムなんて出やしない。
レイアが寝込んでるここ何日かで気になることといえば、ミミがログインしてこない。
学校で会ってきたっていう理乃から聞いた話では、レイアに対してやらかしたのを後悔してるらしい。
頭が冷えて冷静になったら、もう合わせる顔がないって落ち込んでるんだとか。
あれはなぁ…すっげー闇落ちしてたからな。
レイアも気にしてるからそろそろ復帰してほしいものだけど。
理乃が説得してるそうだから任せてる。
最大の懸念はそろそろお母さんが限界で、零に会いに行くって言い出してることか。
うちらは魔の国の場所もお母さん魔王の居場所もわからないから、それを調べるまで待ってほしいと伝えてある。
一目レイアの姿を見たいって聞かなくて、調べたらスクショ機能を見つけたから、それを使い、風邪で寝てるレイアを撮影。
スマホのアカウントで確認できるから、それを見せたら泣いて喜んでた。
自分のスマホに写真を転送しろってうるさくて…。
もっと撮ってこいって言われたからまた撮らないと。
それで我慢してくれるのなら対価としては安いものだ。
うちとしても可愛いレイアの姿をいつでも見れるのはモチベにつながる。
ただ、この写真作戦も一時凌ぎなのはわかってるから、なるべく早く魔の国へお母さんを迎えに行くか、レイアを連れていけるようにしないと、もしもの時困ったことになる。
当然ユリノにも話はしてあるから、魔の国へ向かうような依頼がないかギルドでチェックしてもらっている。
だからこそアイテムの回収を急いでる訳なんだけど…。
天空島に行くより先に、魔の国へ行かなければならないかも。
数日程でレイアの風邪も治り、安心したのもあって、うちらは今日、難易度の高いダンジョンへ入ってきてる。
レイアも今日から復帰するから、肩慣らしを兼ねて一番難易度の低いダンジョンへユリノが連れて行くらしい。
うちも頑張らないとな。
アイテムに関しては今日もシノ姉の幸運無双…。
「ユナ、これまた拾ったわ〜」
「……ほんとなんなの?」
「そんなこと言われても〜」
レアアイテムでもある街から街へ飛ぶ装備がこれで全員分揃った。
ミミが聞いたらまた壊れるかもな…。
飛行装備はまだ集まらないけど、そっちも時間の問題じゃないか?
うちもなにか活躍しないと…。
今のところ怯えさせたり風邪引かせたりとかしかしてない! 挽回しなくては…。
そんな焦りが悪かったのかもしれない。
敵に気を取られて罠を見過ごし、身体に矢が数本刺さった。
ゲームとは思えない痛みで気が遠くなる。
レイアの影響範囲にいるから?
いや、うちの焦りと慢心が招いた結果でレイアのせいにするのはお門違いだ。
「しっかりしなさい! すぐに連れて帰るから!」
「ごめん。シノ姉…」
「…いいのよ。おとなしくしてなさい」
うちはそこで気を失った。
目が覚めたときには、泣きじゃくるレイアの顔が目の前にあった。
「由乃姉! 由乃姉! 大丈夫?傷も毒も治したけど、まだどこか痛い?平気?」
「喋り方どうしたの?昔みたいだよ…」
「無理しないで! お願いだから…」
「ごめんね。零くん…」
心配して泣いてくれるのがこんなに嬉しいなんて。不謹慎だけどケガして良かったって思っちゃったよ。
「毒が強すぎてギルド所属の者では治癒できなかったんですよ」
「レイアちゃんが回復に特化しててよかったわ〜…ほんとに心配したのよ…?」
泣いてるレイアを抱きかかえながら、気絶してる間に何があったか聞かせてもらった。
シノ姉がアイテムを使い、うちを抱えてダンジョンを脱出。街までは例の装備で帰還。
ギルドで手当をしたけど、怪我は治せても毒が抜けなかったと…。
そこに、たまたま別行動をしていたレイアとユリノが帰還。
うちが気を失ってるのを見たレイアがパニックになったらしい。
「由乃姉がそんなことになるはずがないって、泣きじゃくってたよ。ちょっと羨ましかった。あんなに心配してもらってさー。あまりにも取り乱すからユリノがひっぱたいて落ち着かせたほどだったんだから」
「リオも来てたのか…」
「たまたまだけどね。ちょうどシノ姉が抱えて帰ってきた時に…。 ユナ姉、油断しすぎ。らしくないよ?」
「返す言葉もないね」
「泣きながらも必死に治してくれたレイアちゃんに感謝しなさいよ〜?」
それは…うん。勿論だけど。
こんなに抱きついて甘えられるとさすがのうちも戸惑う。
最近はうちからばっかりで、それも嫌がられてたから。
こんなのは小さいとき以来だな…。
「ありがとレイア。助かったよ」
「もう、絶対無茶すんな! じゃなきゃ嫌いになるからな!」
「わかったよ…だから嫌わないで?」
「約束したからな?」
「うん…」
突然顔を近づけてきたレイアは、そのままうちの首筋に…えっ…?うそっ…。
「これ、大切な人につける印なんだろ?由乃姉は大切だからつけとく」
「……っ!!」
「はいッストップ!!」
あぁーー…うちもレイアに印つけたかったのに!!
「レイアちゃん?私は〜?」
「私も大切じゃないの?どーなの!!」
「レイア…私が変な事を教えたばっかりに…まったくこの子は…」
ユリノのアレをそう解釈してるのか…。
可愛すぎでしょう!
三人が自分にも印をつけろって追いかけ回すものだから、うちに助けを求めてきた。
「ユナ姉、助けて!」
「…っ! 三人ともストップ。そういうのは強制するものじゃないでしょ?」
「自分がしてもらったからって!!」
「…ユナ〜?レイアちゃんをかして…」
「レイア! そういう事は本当に好きな人にするものです!」
「なんだよー由乃姉の事は好きだぞ。違うのか?」
はい。もう可愛すぎる。
レイアを怯えさせるの?って言ったら三人とも諦めたようで、一応はおとなしくなった。
ただ、あの目は完全には諦めてなさそうだけどな。
うちもゲーム内のケガがリアルに影響あるのか気になるし、一度ログアウトして確認したい。
そう思ったのに…
うちに思いもよらない事が起こった。
「…ログアウトできない」
「はぁ!? ユナ姉、オプションは?」
「開けない…」
「どういう事よ〜…」
可能性としては…うちの首につけられたレイアからの印?
それとも死にかねない怪我をしたから?むしろその両方?
当然だけど、怪我もしていなくて、印もつけてもらえなかったシノ姉とリオはログアウト可能なまま。
「…ごめんユナ姉…」
「ううん! 嬉しいんだよ。これで一緒にいられるね?」
「怒らねぇのか…?」
「なんで?うち言ったよね。零くんが戻れないのなら、どうやってでもこっちにくるって」
「そうだけど…」
レイアを抱けなくなったとかそんな事どうでも良くなるくらい、今こうやって傍にいれるのが嬉しいのに。
優しく優しく抱きしめる。
「嬉しいからいいの。ね?」
「わかった…」
シノ姉とリオは諦めきれない様子だったけど、うちの身体がどうなったか見に行ってもらった。
これで身体がなかったら…。
「ただいまー。由乃姉の身体、普通にあったよ。キズ痕もなかった。ただ、触れても感じなかったでしょ?」
「え…何したの!?うちの身体に」
「…ふんっ」
「理乃!!」
「ちょっとくすぐっただけよ〜。キズの確認をしたのに反応がないから、おかしいと思って…」
「どういう事でしょうか…」
わからない…。
「こっちに片足突っ込んでるのか?」
「「それだ!!」」
零くんは昔から時々核心をつくんだよな…。
言っといて理解してないのもいつもの事。首を傾げてる。
「一度ノーラに確認したほうがいいかもしれませんね」
「そうね〜」
「私、会ってないから行きたいかもー」
「オレも会いに行かなきゃいけねぇんだった。ノーラの妹に会ったらな」
またレイアが意味のわかんない事を言い出した…。
「ユリノ、説明して〜」
「はい…」
……………
…………
………
相変わらずというかなんというか…。
レイアは零くんだな。
姿は変わっても本質は変わってなくて安心したようちは。




