くしゅっ…
目が覚めたら目の前にユナ姉がいてびっくりした。
そういえば昨日、傍にいてくれるって言ってた…。
本当に約束を守ってくれたんだな。
ログアウトしなかったのに、睡眠とか大丈夫なのか?
ぐっすり寝てる感じだけど、姉達にはあくまでゲームの筈だし。
うーん…
「なぁに?零くんはうちに見とれてるの?」
「ちがっ…」
考え事してたらいつの間にか起きたユナ姉がとんでもない事を言い出した。
「本当に傍にいてくれたのは嬉しいんだけど、大丈夫なのか?」
「うん?なにが?」
「ずっとゲームしてる様な状態だろ?睡眠不足とか平気なのかよ」
「んーーっ、それがしっかり寝た感じでスッキリしてるんだよね」
あくびしながら伸びをしてるし、大丈夫ならいいけど…。
「それはほら〜食事のと同じじゃないかしら〜」
「急に味がわかったやつみたいなってことか?」
「そうそう〜」
てか、シノ姉もこっちで寝てたのかよ。
「なんかあれだな?二人ともこっちの世界に来たみたいだな!」
オレがそういったら、姉二人が慌てだした。
なんだよ…。
「レイア、それ…以外と真理かもしれませんよ」
ユリノ姉も真面目に考え込んでて、話についていけないオレだけおいてけぼりなんだが?
三人が顔を突き合わせて難しい顔しながら話し込んでるから、オレは朝食を頼んでくるか。
部屋に持ってくればいいよな。
部屋を出て一階に降りる。
早朝だからか、まだ食堂に客はいないけど、出汁のいい香りがしてる。
「シノンさんおはようございます」
「おはよ〜レイアちゃん。朝ごはんならもうすぐできるから待っててね」
「はい。 姉達が部屋で話し込んでるので、みんなのは部屋に運んでもいいですか?」
「いいわよ〜後で届けておくわ」
「ありがとうございます」
シノンさんはお茶を出してくれたから、カウンターに座って頂く。
「五人分でいい?」
「いえ、部屋にいるのは三人なので」
「いつの間にいなくなったの?」
「オレも寝てたんで…」
ログアウトしたとか言っても伝わらねぇよな。
カウンターでお茶を飲みながら、食事を作るシノンさんと話してたら、慌てた様子の三人が降りてきた。
「よかった…いたわ〜」
「びっくりしましたよ…」
「もう! 離れるなら言って!」
みんなの飯を頼みにきたのに怒られる理不尽な?
結局全員降りてきたから食堂で朝食を食べた。
気がついたらオレがいなかった、とお説教されながら…。
せっかくの美味しい食事が台無し。
「心配かけるのが悪いのです!」
「三人だけで難しい話をしてたからじゃねぇか…」
姉達が言うには、睡眠にしろ食事にしろ現実と同じように出来ている今の状態は、ある意味こちらに来ているのと同義なのでは?って言うんだけど…。
「二人も向こうに身体無くなっちまったのか?ログアウト出来ねぇとか?」
オレがそう言ったらまた慌てる二人。
「ログアウトはできそう、シノ姉は?」
「こっちもよ〜」
「しかし…レイアの影響範囲にいる間はほぼこちらにいるような状態なら、危険を犯してこちらへ来ようとしなくてもいいのでは?」
「それはそれ! もしレイアが戻れないのなら、うちはこっちに来るよ。絶対に!」
「でも〜そのためにはお母さん達を説得しなきゃいけないのよね…」
無理じゃね?あの母親だぞ?
「気持ちは嬉しいけど、無理しないでくれ。オレの事にこれ以上巻き込んだらって思うとツラくなるからな」
「零くん…」
「もう少し検証は必要よね〜」
ごめんな…。オレが普通にログアウトできたらこんな事にならなかったのに。
「レイア、そろそろ仕度しなさい」
「ん?」
「ニャンダーへ戻ってきた目的を忘れましたか?」
「……なんだっけ」
「バイトです! 猫カフェに行きますよ! これで最後にしますから」
「ほんとか!? 約束破ったらアザの事みんなに言うからな!」
「「アザ?」」
「あっ…」
「…レイア」
「悪ぃ…」
姉達に部屋へ連れ込まれ、ひっぺがされた後、三人が揉めに揉めたのは言うまでもない。
「どこまで! どこまでやりやがった!」
「あんなにマーキングして…!」
「私の相棒です! 印くらいいいでしょう!」
「お前…うちでさえあんな事したことないのに!」
「あんな事までしたなんてきいてないわ〜」
「言う必要のないところは伏せましたからね。詳細まで話す必要は無いでしょう!」
「あるね! うちは姉であり零くんの女なんだからな! 相棒より上なんだよ!」
「そうよ〜! 相棒は仕事に限った話でしょう…?」
「いいえ! 私生活でもです!」
「くしゅっ…」
「「「……あ…」」」
その日、オレはカフェのバイトの心労と、短期間で何度もたて続けにひっぺがされて放置されたせいで夜中から高熱を出し、見事に風邪を引いた。
回復魔法で治そうと思ったが、頭がぼーっとして魔法が使えない。
結局、数日寝込んだオレは、回復後に姉達からものすごい謝罪と、お見舞いとか言って、アイテムやら装備やらを山のようにもらった。
こんなにもらってもどうしたらいいんだよ…。
金を使わなくていいのはありがたいのかもしれねぇけど。
ん?金…? なんか確認しなきゃいけない事があったような…
「あーー! 思い出した! シノ姉、聞きたいことがあるんだ」
「うん〜?レイアちゃんの質問なら何でも答えるわよ?」
「シノ姉、オレの名前で貯金してた?」
「うん〜?」
「そういえばそんな事もありましたね、手をつけていないので忘れてました」
だよな。元々使う気なんてなかったし。
「お金はあって困らないから…貯金はしてるわよ〜」
「なんでゲームの中に送金してんだよ?ギルドに意味のわかんない額が貯金されてたぞ!」
「…どういう事かしら〜私は零くん名義にはしたけど、ちゃんと銀行に預けてるはずよ…?」
「でも、シノ姉から送金されてたぞ?だよな。ユリノ姉」
「はい。利子もすごいことになってました。その時の明細もあります」
「見せてもらえる…?」
シノ姉は明細を見て悩んだ後、一度確認してくると言ってた。
「うわっ、何この金額!! うちらより零くんへ渡してる額が多いとは予想してたけど、ここまで!?」
覗き込んだユナ姉が驚くほどなんだな。
買い物について行っても、由乃姉は結構高額の買い物をポンポンとしてたから持ってるんだと思ってたけど、詩乃姉から貰ってたのか。
てっきりお金持ちのパパでもいるんやと思ってた…。
「それ、本人に言わないほうがいいですよ?ショックで立ち直れなくなります」
「お、おう…」
また泣かせたら罪悪感すごいしな。そして相変わらず心の声はユリノ姉にだだ漏れなのな?
「シノ姉、これ…金額おかしいって! うちらの何倍?」
「それはそうよ〜零くんとの幸せな未来のためだから、妥協はしないわ〜」
そんな金のかかる未来ってなんだよ…。島でも買うのか?
「レイア、私も多少なら持ってますからね?しばらく遊んでられるくらいには…」
「いや、それはちゃんと自分のために使えよ。オレだって報酬はしっかり分けてもらって持ってるんだから」
「ほんとにこの子は…」
やめっ…締めるな!
「失礼な…力加減くらいできます」
「おい…いちゃついてんじゃねーよ」
「…休んでる間にアザは消えたわね〜。全く! レイアちゃんも無防備すぎるのよ?」
理不尽が過ぎねぇか?
どうやったって勝てねぇ姉が四人もいてどないせーと…。
「私達以外にです」
「そーかよ…」




