変わるから
休む事なくニャンダーに走り続けて…。
途中ミミがあまりに遅れるから小脇に抱えて走った。
お母さんが美緒を家に連れてきた時もこういう事だったのか。
おかげでリアル時間で真夜中には到着。
頑張ればなんとかなるもんだな。
ミミは有り得ないって言うけど、実際着いてるんだから有り得るんだよ。
リオとミミはログアウトさせて寝かせようと思ったけど、レイアの顔を見るまでは嫌だと譲らねーから仕方なくそのまま宿へ。
シノ姉も宿に大人しくしててくれるようでよかった…。
一定範囲ならマップに仲間が見えるのは本当に助かる。
宿に入ると一瞬シノ姉かと思った女将さんに出迎えられた。
ほんとびっくりするなこれ…。
カウンターで一人座ってるのはユリノか。
じゃあレイアもいるんだよな?
シノ姉は宿にいるはずなんだけど…レイアは?
嫌な予感がしたうちは二階へ。
「泊まるなら宿代払ってよ〜」
「これでいい?急いでるから!」
リオも代金を払ってくれて追いかけてきた。
扉を開けると…
「うそでしょ…」
「…やられたっ!」
まさか抱き合って寝てるとは…。しかも二人とも幸せそうな顔しやがって!
リオと二人で引き剥がそうと頑張ってみたけど、びくともしねー。
挙げ句、”邪魔だわ〜”って寝ぼけて突き飛ばされた。
咄嗟に身構えなかったらどうなってたやら…。
「零くん浮気…?」
遅れて部屋に来たミミから見えてはいけないドス黒いオーラが。
「いてててっ…なんでつねるんだよ! 誰やねんイキナリ…ひっ…」
「…うーわーきー」
「シノ姉! シノ姉助けて! というか、いい加減おりてくれっうっごけねぇぇ…」
「なによ〜もう…せっかく幸せなのに〜ひっ…」
うそだろ…シノ姉がひっ…って!
その後はもう悲惨の一言だった。
闇落ちしたミミと、布団にくるまって震えてるレイア…。
うちらはシノ姉と一触即発。
「一人で先に飛んで抜け駆けかよ!」
「悔しかったら自分でもみつけたらいいじゃない〜」
「レアアイテムなんだからな、それ!」
「私は二つ持ってたわよ〜?」
「「はぁ!?」」
だったら貸してくれても良かったんじゃ…。
「シノ姉。それ、もう一つはどうしたの?」
「レイアちゃんにあげたわ〜」
「あーそれは仕方ないか」
「だね…」
持っててもらったほうが安心だ。
シノ姉に言いたい事はまだまだあるけど、止めなきゃいけないヤツが…。
「ねぇ…零くん? 私は彼女じゃないってー?へぇ〜。そーなんだー?だからお姉さんと寝たのー?」
「……押し倒されて退いてくれなかったから…疲れてたしそのまま寝ちゃっただけで…」
必死に言い訳してるレイアがいい加減可哀想。
「ミミ、それくらいにしとかないと本気で嫌われるからな?」
「どーせ私は友達以下ですからー、これ以上落ちようがありませんし」
だめだコイツ、早くなんとかしないと…。
ミミは冷静にさせるためにも無理矢理ログアウトさせた。
「リオ、明日様子見といて。落ち着いてない様ならログインさせるなよ」
「わかった。悪化しかしなさそうだもんね…」
震えてるしなぁレイア。
リオも学校があるしログアウト。
「レイア、大丈夫か?」
「…女怖い…女怖い…」
ひどい怯え様だな…幾らなんでもおかしい。
「ユナに少し話があるのよ〜」
そう言ったシノ姉の話は到底許せるものではなかった。
一つ間違ったらレイアは誰に売られていたかもわからない。
しかも原因となったのはユリノが無理矢理レイアを…。
それなのに…。
「制裁は私がしたからもう何もしたらだめよ〜」
「なんでだよ! 許せるわけが…」
「それなら私も〜散々零くんに手を上げて、怯えさせた由乃にはお説教していいってことかしら…」
…それを言われちゃうと弱い。
そっか、レイアがこうなってる原因はうちにもあるんだよな…。
「ごめん…レイア。私も酷いことしてきたもんね…」
「由乃姉…?」
「謝って許してもらえるとは思わないけど、うちはこれから変わるから。美緒も落ち着けば前みたいに良い子になるよ」
たぶん…。
「レイアちゃん、平気そうにしてたけど、そんなわけ無いのよ…だから安心させようと傍にいたのに〜」
「…シノ姉もごめん」
「後はユナに任せるわ〜」
そう言うとシノ姉は食事してくるって部屋を出ていった。
「零くん、うちのこと怖い?」
ふるふると首を振る仕草がもう可愛い。
「怒ってたりしなきゃ怖くねぇぞ、優しいとこがあるのは知ってるし」
「そっか。一度に色々体験して大変だったね」
「…まぁな。でもほら、無事だし!」
「ケガとかの話じゃないんだよ。心の話」
「うん?」
よくわからないって感じに首を傾げてる。
「嫌な思いや、怖い思いをしたのは記憶として残るよね?それは中々消えないんだよ」
うちもそれをずっと零くんにしてきた訳だけど…。
「ミミもオレが傷つけたから?」
「そうだね。ちゃんと名前を聞かなかったり、態度をはっきりとさせなかったから」
「そっか…。それは今度会えたら謝る。会ってくれるかわかんねぇけど…」
「大丈夫だよ」
「なんか今日は由乃姉が優しいな。話し方も普段と違って変な感じする」
「嫌?」
「ううん。いつもの元気な由乃姉も好きだけど、優しい由乃姉も好きだぞ」
ヤバい…好きって連呼されてる。これはもうオッケーって事だよね?
…いや待てうち。傷ついてる零くんに何を考えてるんだ。
ここが決めるべきところだろ!
「どーした?由乃姉」
「う、ううん! 疲れてるなら寝な。不安なら傍にいるから」
「ありがと由乃姉」
横になった零くん…というかレイアが、前より幼く、か弱くなったような気がして。
尚更下手な事できないって自分を戒める。
眠るレイアを見守ってたら、シノ姉とユリノも部屋に来た。
「今寝たから、静かにね」
「…可愛いわね。幼いときから変わらないわ〜」
「だね…」
「あの…」
「ユリノ、もう何も言うな。うちから言いたいのは一つだけ。レイアを助け出してくれてありがとな」
「…いえ…」
シノ姉に”偉いわ〜”って撫ぜられてちょっと複雑だけど。
「うちらが傍にいられない時はレイアの事頼んだからな。信用して任せる。意味はわかるよな?」
「はい。私にとってもレイアは特別ですから。二度とレイアの信用を裏切ることはしません」
レイアの信用ね…うちらに誓われるよりよほど信頼できそうだ。
その日はログアウトせず、初めて宿でしっかりと眠った。
レイアの影響なのか、当たり前に睡魔があるし、寝ればスッキリする。
どちらが現実かわからなくなりそうだな…。




