運の良さ
シノ姉とダンジョンに潜り始めて数日。
資金は潤沢だし、例の装備アイテムも一日に一個のペースで見つけてる。シノ姉が…。
落とし穴に落ちた先で拾ったり、倒した敵から拾ったり。
今日は宝箱かと思ったら襲いかかってきた敵がいた。
シノ姉がハンマーで叩き潰したら再度宝箱が出てきてその中から回収。
「結構見つかるものね〜」
シノ姉の運の良さが異常なんだとは言いづらい。
「全員で行くなら六個は必要だから、見つかるならいいんじゃね?」
「そうよね〜」
いらないアイテム類は売っているから、お金は貯まる一方。
減ることがない…。
ミミにそう言ったら回復アイテムは?消費アイテムは?って言われたけど、そんなもの使わねーからな。
攻撃なんて当たらなければどうってことないし。
念の為ってミミに言われて、一通り基本の薬は買ってあるけど、使ったこともない。
「そろそろ切り上げる?」
「そうね〜リオとミミちゃんも来るかもだし…戻りましょうか〜」
そう言うとシノ姉はとあるアイテムを装備して使用。
入り口まで戻ってきた。
昨日、突然”拾ったのよ〜”って持ってたんだよな。
いつの間にだよ…。うちなんて未だに宝箱なんて見つけたことすらないのに。
シノ姉がいれば零くんの事もあっさり解決しそうな気もしないでもないけど、譲れないものはある!
街へ戻るとちょうど朝陽が登ってきていた。
「そういえば、時間のサイクルが変わるんだっけ」
「何かミミちゃんが言ってたわね〜」
夜しかログインできない人が、昼間も体験できるようにって配慮らしいけど。
殆どの時間ダンジョンにいるうちらにはあまり関係はない。
「ログインしたみたいね〜。あの子達、きちんと宿題とかしてるのかしら…」
「理乃はちゃんとやってたな。寝る前に片付けてた」
「そうならいいけど〜」
理乃も頭はいいからな。
美緒に関してはわからん!
宿で合流して、今日の戦利品を確認。
「また見つけたのですか!?」
「シノ姉がな」
「どういう確率ですか…」
うちに聞くな。
「私達出番ないじゃん…零に褒めてもらおうと思ったのに。このままじゃシノ姉の一人勝ちになっちゃう」
「張り合おうとするなよリオ。諦めろ…」
「はぁ…」
わかってた事だ。
とはいえ、零くんに褒めてもらいたいのはうちも同じ。
目に見える成果を全部シノ姉にかっ攫われてるからな。
「レイアちゃん達はまだ戻りませんか?」
「移動に二日、バイトに一日、また移動に二日…最短でも五日はかかるからな。まだ戻らねーよ」
早く会いたいけど…。
「ねぇ〜、ミミちゃん。これみたいなの他にはないの?」
「…それ、ダンジョン脱出用の指輪アクセサリーですよね。使い捨てじゃなく、パーティ単位で飛べるなんて、何百万するかわかりませんよ!」
「値段とかはどうでもいいのよ〜街から街へは移動できないの〜?」
「当然ありますよ。知られているだけでも何種類かは…有名なのですと、一人用ですが一枚の羽の形をしたアイテムです。使い捨てですが、登録した街へ一瞬でワープできます」
「今ならこの宿って事?」
「はい。リオ先輩も私もここを拠点にしていますから」
「でもダンジョンから出たらすぐ街っていう、ここではあまり意味はねーな」
「そうですね。後はレアなもので、何枚もの羽根があしらわれたネックレスですね。行ったことのある街なら好きな時にワープできます」
「「………」」
拾ったな?
なんなら今シノ姉が装備してる…。
「ちょうどそんな見た目の……」
「今日、倒した敵から拾ったのよ〜」
「もう驚きません私! それが今お話したワープのできるアイテムです。装備した状態で使用すると、行ける街の一覧が出ますから、行きたい街を選べば…」
ミミがそこまで話したところでシノ姉が消えた。
「まずいよユナ姉! シノ姉を一人にしたら!!」
「…ここから二日だっけ?ニャンダーって」
「馬車で、ですよ!」
今から向かっても…あぁもう!
運良くあっちでレイアと合流して…そんな偶然ありえる?
いくらシノ姉の運がいいとはいえ、方向音痴には効果がないんだぞ…どうする?
どうしたらいい?
「ひゃっんっ!」
悩んでたら目の前に突然シノ姉が現れて、びっくりしたせいで変な声が出た。
「うわ…ユナ姉がメスみたいな声出した」
「うるせーな…」
うちだって女なんだから間違ってねーだろ。
「便利ね〜どこからでもここに飛べるわ〜」
「ニャンダーはどこに飛んだの?」
「私そっくりの女将さんのいた宿よ〜。レイアちゃんはまだ来てないって言われたから帰ってきたわ」
宿から出なかったからか…。助かった。 あれ…?
「シノ姉、それおかしくない?」
「うちも思った。別れてから、まる三日以上経つのにニャンダーに到着してないのはおかしくねーか?」
「宿に寄らなかった、宿を変えたっていう可能性もありますが…」
「ご飯おいしい〜って言ってたレイアちゃんが宿をかえるかしら〜」
「ないね…」
詩乃姉の和食みたいで美味しいって喜んでからな。
「まさか…またユリノが連れ去った!?」
「流石にそれはないと思いたいわ〜」
そう言うシノ姉も多少疑ってるのか、不安そうな顔をしてる。
「契約がある以上、いずれは行くとは思いますが…」
「私達と役割分担したのに、そんな勝手な事を零が許すかな」
「ないね」
零くんは約束はきちんと守る子だ。ユリノも零くんに逆らうような事はしないだろう。
前回のように零くんが気を失っているわけでもないから、独断では動けないはず。
そうなると…
「「何かあった?」」
「何かって何よ〜」
「ミミ、道中でイベントが起きたりとかはしないのか?」
「えっと…ゲームなら、モンスターの襲撃、盗賊の襲撃、あとは…」
「あとは?」
「…人買いの襲撃です」
「人買い?」
「はい…戦闘に負けると、捕まって奴隷として売られます」
なんてゲームだよ…。
「それどうなるの〜?」
「自由になるための金額を払えるまで、働くしかありません。仕事は色々で、鉱山労働から、身売りまで様々です」
「「「身売り!?」」」
「…はい。アダルト要素なので、任意でカットもできます…」
うちらが気にしてるのはそこじゃねーよ。
零くんが…レイアが捕まって売られたら?しかもレイアには現実なんだぞ?
「ユリノさんがいるんですから、負けたりはしないと思いますよ…」
「それはそうだけど…もしもがあるだろ! お前は平気なのかよ?」
「…私は…別れないとか言いましたが、実際は彼女どころか友達ですら無いようですし…」
「そーかよ! がっかりした。うちらとライバル張れるやつだと思って頼りにしてたのに」
「皆さんにはわかりませんよ! 私だけ他人な上に、友達ですらないんですよ!?」
「ミミがそれで諦めるのなら私達はミミをここに置いていくよ」
「そうね〜。その程度の想いなら邪魔だわ…」
ライバルが減るのならいい事なんだろうけど、素直に喜べねーよ…。
「なぁ、ミミ。もし本当に諦めて、零くんのことをどうでもいいと思うならここで手を引け。無理強いはしない。巻き込みたくねーからな。でも、少しでも諦めなくないって思うのならついてこい。どうする?」
「……」
「もう行きましょ〜」
「そうだね。ミミ、今まで巻き込んでごめんね」
「…行きます! 行きますよ! 振られたわけではありませんから! 今から友達になって、それから恋人になればいいんです! 私はリアルでも結婚だってできますからね!」
気がはえーよ。それにそこまでは許さねーから。
「よし、行こう。もしニャンダーについて、零…レイアが到着してればそれで良し、いなかった場合は探す」
「異論ないわ〜」
「私もそれでいいよ」
「はいっ!」
「じゃあ先行ってるわ〜」
「あ、シノ姉待っ…」
「ユナ姉、あの装備シノ姉から取り上げよう?」
「できると思うか? とりあえず急いでいくしかないから行くよ!!」
シノ姉一人で楽して!! せめて遭難しない事を願うしかない…。




