ここにもいない
お母さんがやらかしたおかげで、三日という期限は無くなったけど、理乃と美緒は休みが終われば学校が始まる。
うちも当然大学があるけど、一月や二月休学しても問題はない。
休学届も郵送してある。急な事で学費の免除はされないけど、その分は自分で払う。
零くんの一大事なのに、大学なんて行ってられるか!
そもそも大学へ行ったのだって零くんをよゆーで養える職につくためだ。
それも今や投資で稼いだからなんとでもなる。
ただ、学費を出してくれた両親に申し訳ないから卒業だけはきちんとする。
そこは私なりのケジメをつけないと。
お母さんともそれに関しては約束をした。 それで休学の許可も貰った。
自由に動けるのが詩乃姉だけっていうのはさすがに…ゲーム世界で遭難したら最悪だし。
お母さんも、”それは…そうだな。あいつの方向音痴はどうにもならねぇから、頼む”って。
そう言うお母さんも方向音痴なんだけどな。 絶対認めないけど。
休みの最終日。
リオとミミはできるだけカピバラックに近づけるよう移動してる。
うちらは街の中を脚を使ってレイアを探す。
レイア本人もだけど、それっぽい痕跡も。
漠然としすぎてて何を探せばいいかなんてわかんねーけど、じっとなんてしてられない。
「…ねえ、ユナ? 一つ思ったのだけど〜」
「うん?」
「ユリノは私達からレイアちゃんを引き離そうとしたのよね…?」
「リオが言うにはそうらしい。レイアに負担かけないようにって言ってたけど」
「その上でお母さんの、アレがあったんだものね…」
「こっちの街ではその話題も殆ど聞かないけどな。封鎖されてて不便だったとかそんなのだけだし」
「でも…追われてると思ったのなら、身を隠すのに最適じゃない〜?」
シノ姉が指差すのは街の中にあるダンジョンの入り口と言われている場所。
確かに可能性としてないとも言えないけど、安静にって言われたのにそんな無茶させるか?
うちから見てもユリノはレイアを大切にしてた。腹立つくらいに…。
本当ならうちがそのポジションにいたかったのにっ…!!
一度、隠れられるような場所なのか見てみましょう? ってシノ姉が言うから、ダンジョンへ入ってみることにした。
でも、入り口にかなりの人が並んでいたせいで足止めされて…。
人の流れが悪いと思ったら、ギルド会員証を入り口で提示しないと入れないらしい。
テーマパークかよ…。
こんな並んでまで、人目につくところへ入るか?
いや、レイアが零くんだって知ってる人がいなければ問題ないのか。
なんとかダンジョン内には入れたけど、そこにもすごい人。
このゲームどれだけ人気なの? 探しても買えないわけだ。
内部にはギルドの出張所や、アイテムの売り買いをしているプレイヤーもいる。
きょろきょろしてたら見つけたものが。
…あれなんだ?
「シノ姉、ちょっと来て」
「うん〜? なによぅ…」
「なんか新聞みたいなのがあるんだよ。なにか情報があるかもしれない!」
「なるほどね、いい目の付け所よ〜」
二人で張り出されてる告知を見る。
”魔王様ご乱心!? 世界へ宣戦布告か?”
デカデカと書かれた見出し。お母さん言われてるよ?
魔の国、魔王様からの告知です。
”今すぐに出てこい。隠れても無駄だ。 もし匿うようならそれらも含め全て潰す”
…あれ?
「これがユナとリオが言っていたやつね〜」
「そうなんだけど、微妙にうちが映像で見たのと違う!」
「…え?」
声に出せないし、情報共有のためにパーティチャットでみんなと会話する。
魔王からの告知に”零”の名前がない。
一緒に通知映像を見ていたリオも、零くんの名前は聞いたって言うし、そもそも零くんの名前が出てなかったのならうちらが名前を言わないようにって気をつける必要もなかった筈だ。
大体、その魔王本人はうちにいて、零くんを呼び付けたのは間違いないんだから。
「それ、”ズレ”ですよ! 間違いなく零くんはその街か、周辺に居るはずです!」
これがズレか! 確かにそう言われたら納得する。
「そうなると、零くんは逃げ隠れしてないって事だよな? 追われてると思ってない訳だし」
「魔王って名前で察してたらわかんないけど…零ってちょっと鈍いから」
だよなぁ。その抜けてるとこも可愛いんだけどね。
「そうだとしたらこのダンジョンもハズレかしら〜」
「…宿に戻ろうシノ姉」
「そうね…」
居るかもしれないって思ったから入っただけで、そうじゃないなら用はない。
結局見つけたのは小さな”ズレ”だけ。しかもそれがどんな影響を及ぼすのか見当もつかない。
零くん、近くにいるのなら見つけてよ…。うちはここにいるよ?
「詩乃姉と由乃姉だよな? こんなとこで何してんだよ?」
なにって零くんを探してるんだよ!
ほとんど手掛かりもないまま探し回る大変さがわかる!?
どれだけ心配かわかるの!? 何よりも大切な相手を奪われる辛さがわかる?
「ユナ! ユナってば! 待ちなさい!」
「なんだよ! うちは今落ち込んで…て…」
え…うそ…零くん!? 本当にうちを見つけてくれたの?




