意外でもない出会い
テントで一泊し、今日もダンジョンを進む。
相変わらず罠はルリマリが潰してくれるし、敵に関してはもう…ユリノ姉無双。
「専門職の私達より先に敵を見つけちゃうんだもの。さすが上位職は違うわね」
最上位らしいぞ?うちの姉は。
初めてユリノ姉の使う規模の大きな攻撃魔法も見ることができた。
炎の爆発ですっごい突風。
吹っ飛ばされて転がったのはオレだけ。
「ナイスくまさん!」
うるせぇよ!? なんでみんなへーきなんだよ。
「来るとわかっていれば身構えてなんとかなります」
オレはそんな超人じゃねぇからな?
ただそんなユリノ姉もその後の事態は完全に予想外だったらしい。
地面が揺れてゴゴゴゴゴ…ってどう考えてもやばい音。
「フラグ回収かよ!」
「今はつっこんでる余裕はありません! 全員、今すぐに撤退を!」
「お、おう!」
珍しく真面目なユリノ姉にびっくりしたが、後退しようとした踏み出したオレの足元が崩れた。
あー…お約束だよなー。
そんな事を思いながら落下していく身体。
「レイア!!」
ユリノ姉の声が遠くから聞こえる。
これ、落ちたらやっぱり死ぬのか…? ゲームだぞ?
いや…オレにはここが現実なのか。
リアルな落下感に初めてそう実感した。
せめて痛くねぇようにあっさり逝かせてくれ…
ザブーーーーン!
「がぼぼぼ…」
水かよ!!
焦るな。前にユリノ姉で溺れたときより動けるだろ!
上へあがれ! 諦めるな!
「はぁ…はぁ…ここ最近、窒息しかけて目が覚めたり、締め落とされたりとしていたせいか冷静に対応できたな…」
なんとか岸に泳ぎついて一息つく。
ってもなぁ…、はぐれた上にココどこだよ。
「おーーーーい! ユリノ姉ー!!」
”おーーーーい…”
さすがに無理か。
自分の声が反響しただけで虚しくなる。
「うるさいのぉ…せっかく寝ておったのに。何者じゃ? まさか妾を倒しに来た愚か者か?」
「あ? 誰だよ」
声はすれど姿は見えず。
地底湖なのか、広い洞窟みたいな空間で、暗視で見える範囲には水面と壁しかない。
キョロキョロしてたらまた声が。
「上じゃ」
「ん? うおぉ!? すっげー! でっけー! かっけー!」
「そ、そうか? そうじゃろ? 見る目があるではないか」
壁だと思ってたのは身体だったのか。目の前には大きなドラゴン? イメージ通りだから多分合ってる!
「その様子じゃと妾を倒しに来た訳じゃなさそうじゃの」
「オレは大きな揺れで足元が崩れて真っ逆さまに落ちてきただけだぞ? 水がなかったら死んでただろうな」
「その割に冷静じゃの…。 さてはお前アホじゃな?」
「うるせぇよ! 初対面でアホとか言うな!」
「くくっ…面白いやつじゃ。妾を見ても憶しもせぬとは…」
「あー、それな? お前よりやべーのが身近にいるからだよ」
「なんじゃと!?」
どう考えてもうちの姉達ならフルボッコにしそうだし。
「さ、最近はそんなヤバいのが地上にはおるのか?」
「あぁ、オレの知ってる限りで四人な? みんなオレの姉」
「お前ら姉妹は世界を滅ぼす魔王の娘かなにかか!?」
「うん」
ドラゴン(仮)は器用に前足で頭を隠して震えてる。
「妾は、ここでのんびりしておるだけじゃ…。頼むからそっとしておいてくれ、な?」
「別にどうこうするつもりなんかないぞ? たまたま落っこちてきただけだし。 あーでも帰らないと姉その四が突っ込んでくるかも…」
「送り届ける! 送り届けるから!」
「ホントか?それなら助かるけど。 でも、どうやってだよ…そんなでかいと無理じゃねぇか?」
どう見ても十メートルはゆうに超えてる。しっぽや翼を入れたらもっとだろう。
「妾はここの管理者じゃ。造作もない」
は? 管理者…
「それって石油王…じゃなくてダンジョンマスターってやつか!」
「そうじゃ。力の強い妾がここを巣にしてからダンジョンになったのじゃ。すごいじゃろ?」
「ほーん…」
「興味無しか!!」
「いや、そーゆーものなんやなーと」
「肝が座っとるのかアホなのか…」
「なんだよ。お前だって頭抱えて震えてたくせに!」
「あ、あれは…妾でも死ぬのは嫌じゃ!」
「だからそんなことしねぇって。こうやって普通に会話もできるのになんで攻撃しなきゃなんねぇんだよ」
「ふふっふははは! ほんに、面白いやつじゃ! 一つ妾と約束をせんか?」
「ん? オレに守れることならいいぞ?」
「魔王と姉たちに妾を攻撃せんように、頼んでくれんか?」
「いいぞ。そんな事かー」
「お前にはそんな事なんじゃな…変わりにほれ…頭を出せ」
「あ!? 首おいてけーとかってやつか!?」
「違うわ! そんなおっそろしい事言わんわ! こちらへ向けてくれればいい」
ドラゴン(仮)が何言ってんだよ…。
オレが、近づくと大きな手をこちらへ伸ばしてきた。
「じっとしておれよ」
おでこにドラゴン(仮)の爪がちょんっとあたった。
その瞬間また頭に通知が…。これあれか、ユリノ姉が暗視をくれた時と同じ…。
雑音みたいになって聞き取れねぇけどなんか貰ったのか?
「妾とお前は繋がった。妾が生きておる限りお前も不死身じゃ。 いいか?妾が死ぬとお前も死ぬ」
「なんだよそれ!」
「心配するな、妾に寿命はない。安心して…」
「違う!! もし、オレが死んだらお前はどうなるんだよ! お前まで道連れにするとか嫌だからな!」
「…ふふっ。大丈夫じゃ。妾はアースドラゴン。この世界に四体いる最強ドラゴンの一体ぞ? この地の守り神じゃ。 そんな事起こりえんわ」
「絶対か? オレが世界を超えてもか?」
「なんじゃ、お前渡り人か…問題ない。そんな心配せずとも…」
「レイアーーーー!」
この声、ユリノ姉?
「レイアを返しなさい!!」
あ、これヤバい奴!
「ユリノ姉ストップ!! こいつが死ぬとオレも死ぬぞー!!」
「えっ…はぁ!?」
完全にドラゴンへ殴りかかる、その勢いを殺せないままドラゴンの横っ腹に激突するユリノ姉。
武器を叩きつけなかっただけマシなんだろうが…
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
「あー……大丈夫か? お前本当に最強のドラコンなんだよな?四体の中でも最弱とかいうやつか?」
心配になってきたぞオレは。
「…酷いのじゃ! 妾の美しい鱗が…生えかわったばかりじゃったのに! 数百年このままじゃ…」
「それはすまん。うちの姉が悪ぃな…手当する」
「人の身でなにを…妾はドラゴんなぁぁぁぁ!?」
「よしっ、これで元のきれいな鱗になったぞ。 ユリノ姉は大丈夫か?」
「ええ。身体は平気ですが説明をしてもらえますか?」
なんかドラゴンはでけー口を開けたまま固まってるし、ほっとくか。
「ユリノ姉こそどうやって来たんだよ?」
「穴に飛び降りました。 言いましたよ?レイアは私の全てだと…」
「無茶しやがって! もしオレが死んでたらどうしたんだよ…」
「その時は一緒です!」
「バカなの?お前はアホなの? ユリノ姉の命はユリノ姉のだろうが! ちゃんと生きてくれよ…」
「………」
「約束してくれ。守れねぇってそう言うなら相棒はやめるからな」
「そんな!!」
「大丈夫だ。オレは死なねぇらしいから」
「はい?」
ユリノ姉にドラゴンとのやり取りを説明。
「姉その四って…私の扱いに疑問を感じますが、安心していいのですか? 私でも倒せますよ?このドラゴン」
「やめてやれよ。のんびりここで暮らしてるだけの相手をなんで攻撃する必要があるんだよ」
「そうですが…。もし、他のものに狙われたら?」
「お前らみたいなのがそうそうおってたまるか! 妾はこの地の守り神じゃぞ? 普通は傷つけることすらできんと言うに…何者じゃよお前らは…」
「あぁ、オレはレイアだ! よろしくな」
「そういう意味ではないんじゃが…。妾はアースドラゴンのノーラじゃ」
「私はユリノです、先程は失礼しました」
「…痛かったがな。治して貰った事じゃし水に流してやるのじゃ」
「ありがとうございます」
「アースドラゴンなのに水に流すのか? どう見ても地面タイプだろ」
「…お前と話しておると疲れるな…? 飽きなさそうじゃが…」
「なんだよ。のじゃドラゴンのくせに」
「のじゃ!? …まぁよい…仲間も待っておるようじゃから、近くまで送ってやる。約束、頼んだぞ…」
「あぁ。アースドラゴンのノーラは友達だって言っとくよ」
「友か…それもいいな。また遊びに来るんじゃぞ?」
「無理だぞ?」
「なんでじゃ!?」
「落ちてきたって言ったじゃねぇか。またアレをするのは勘弁してほしい」
「あぁ…そういうな? 大丈夫じゃ。妾とつながったお前ならいつでも遊びにこれる」
「マジでか! じゃあまた会えるな!」
「うむ。ここで寝ておるから気が向いたら顔を出すのじゃ。二百年後くらいがいいのじゃな。眠いし…」
感覚おかしいだろ。二百年てお前…。
まぁ、いいか。来たら起こせば。
「ほれ、じゃあまたの〜」
ドラゴンのその声とともにオレたちはキラキラした光に包まれた。
「だから眩しいって言ってんだろうがぁ! 黒にしてくれよ!」
「な、なんじゃ…わかった次はそうするのじゃ」
「ありがと! よろしくなー」
「……はぁ…何というか、レイアですね」
ーーー
ーー
目を開けたら落っこちた穴のすぐそば。
その穴もすぐに塞がっていった。管理者やべー…。さすが石油王。
「レイアちゃん! ユリノさん、本当に見つけたんだね!」
「良かったわ…飛び降りるって聞かなくて必死に止めたのだけど。力では勝てないわ」
「ユリノ姉。何してんだよ…」
「すみません、取り乱しました…」
「でも、ありがとなユリノ姉。来てくれて嬉しかった」
「…はいっ!」
「ホントに心配したわよ」
「無事なんだからよかったじゃんー!」
二人にも地下での出来事を説明したら驚きすぎてて面白かった。
「そーいや、結局あの地震は何だったんだ?」
「あれよ…」
マリンの指差す先には…
「げぇ……キモ…」
「何言ってんの!? すっごいんだよ? ワームだよ? ワーム!」
いや、しらんがな…。でっけーミミズやん。
「どーせユリノ姉が命をカチ割ったんだろ? 早く素材回収してくれよ…」
「そうですね。売れば当分遊んで暮らせますよ」
誰が欲しがるんだよこんなもん。 まぁ、でもカフェでバイトしなくてすむならありがたいな。
「それはそれです。カフェはいずれ行きますよ」
「なんでだよ!」
「契約書がありますから」
あー…姉達のせいでタダ働きするやつな?
はぁ…。
てことは結局帰らなきゃダメじゃねぇか。
封鎖、いつとけるんだ?
温泉はさいこーだけど、街を出られないって言われると出たくなるよな…。




