初期装備
「つまんなーい!」
「だからってオレ達の部屋に来て文句言うなよ…」
「ごめんなさいね。あまりにも暇で」
ルリマリは温泉も入り飽きて、暇つぶしとか言ってオレをからかいに来た。
おかげでまた耳と尻尾つけられたし…。もうよくねぇか? これ。
「一応契約なので」
契約の拘束力は厳しいんだっけ。やれやれ…。
お土産屋で売ってたトランプも飽きたし、温泉まんじゅうも食い飽きた。
「オレもなんか刺激がほしい!」
「ではこちらを…」
「わぁかわいいー! 鈴付きだね!」
「ユリノ姉、まさかとは思うが、外そうとしてビリビリして刺激を感じろって言ってる?」
「はい。手っ取り早いですよ」
「あははっ! ナイスボケ!」
何も笑えねぇよ! ユリノ姉って真顔でこういう事するからな…。
「街の封鎖はどうなりました?」
「今日もギルドに行ったんだけどねーまだ封鎖はとけないって」
まぁ、そう簡単にはいかねぇだろうな。
一昨日は依頼を受けてカピバラ退治というか、追いかけられに行ったけど、昨日は温泉入ったり、ブラブラと散歩してたから、さすがに今日になるとする事も無くなってくる。
散々オレの尻尾と耳を弄んだルリマリも、飽きたのか開放してくれた。
「んーやっぱりちょっと危ないけどダンジョン行くかー」
「本気!? 二人じゃさすがに危なくない?」
「でも、こうダラダラとしてると身体も鈍っちゃうし」
おい、ちらちらこっち見んな。
「ダンジョンに行くのなら街を出る事ができるのですか?」
「街の外のならうちら二人でも行けるから良かったんだけど、今は無理だねー。街の中にある別のダンジョンだよー」
「ダンジョンが街なかにあんの? それ、あぶなくねぇのか?」
「どういう事?」
「中からモンスターが出てきたりとか」
「ないない! かなりの頻度でハンターが入って狩ってるし、出入り口にはモンスターは通れない様にマジックアイテムがつけられてるから」
「へぇー。オレの持ってるテントみたいなもんだな?」
「え? レイアちゃんってば、そんないいテント持ってるの!?」
いいものかどうかは知らねぇけど…初めから持ってたし。
「レイアのは、恐らく最上位クラスのマジックアイテムですよ」
「マジで!?」
「はい。中にお風呂やシャワー完備なんて相当です」
知らなかったんだが?そういう事は教えてくれよ…。
「いいなー。私達のなんてせいぜい簡易のパイプベッドがあるくらいだよ」
「それは、そっちにお金回さずにケチってるからよ。そろそろ初心者用は卒業したいわ」
「だってー武器とか防具、薬類とか、お金かかるから仕方なくない?」
なんでそんないいものを持ってるのか全くわかんねぇ…。有り難いけど。
「そういえばレイアちゃんは弓もいいもの持ってたわよね」
「これか?」
取り出したのは初期装備の和弓。和弓とは言っても、オレの体格に合わせてかかなり短い。
リアルなら短くなった和弓なんておかしな物、ありえないんだろうけどその辺は気にしないことにする。
詩乃姉が高校の時に弓道をやってたから、見慣れてるんだよな。確か長くないと和弓として成立しないとか…。
素材や造り的に、成るべくして長くなったものらしいからな。
小さな時に詩乃姉から聞いた話だから記憶も怪しいけど…。
ただ、弓を構えてる詩乃姉はカッコよくてキレイだった。凛としてたというか…。それだけはよく覚えてる。
懐かしいな。
今はぽやぽやしてて面影ないけど…。
「これキレイよね。ダンジョンで使ってたのを見た時から気になってたのよ」
「うちも職業柄、短弓は使うけど、このデザインは初めて見たなぁー」
「和弓って珍しいのか?」
「それ和弓なの!?」
びっくりしたー。めっちゃくいつくやん…。
「和弓は和桜の国特有の武器です。刀とかも有名ですね」
「ユリノ姉詳しいな?」
「知識だけですが…」
「じゃあこれもか?」
初期から持ってる小型ナイフも見せてみた。
「合口ですか…そんなのも持ってたのですね」
「使うことほとんどねぇけどな」
暇つぶしに、いつの間にか拾ってポケットに入ってた木を削って遊んでたくらいだな。
「もしかしてレイアちゃんって和桜の国のお姫様だったりする?」
「んなわけあるか! 姫が森をウロウロしてカピバラに追っかけられてたまるかよ…」
「そういう姫に遭遇はしましたけどね」
理乃姉そっくりのな? いたな。そういえば。
「もしかして森でワンッダの姫を助けたのって…」
「レイアです。その弓で敵を瞬殺でした」
「びっくりだよ。すごいニュースになってたんだよー? その本人がまさか…猫耳くまパンだとは…」
おい、やめろよ…。そこはどーでもいいだろ!
そもそもあれはただのチュートリアルでは?
…あ、ゲームじゃないからか。 どこからだよ…わけわかんねぇ。
「うちのレイアはやればできる子ですからね」
ユリノ姉がすっごい自慢げ。別にいいけど…。
武器を見せたりしてたから、ダンジョンの話は流れたかと思ったが、ユリノ姉が蒸し返した。
「前衛が必要なら同行しましょうか? 前回も結局戦えませんでしたし…」
「ほんと!? それなら助かるけどーいいの?」
「はい。レイアはお留守番してますか…?」
「…行くよ。行けばいいんだろ!」
一人で行かせたらダサすぎるだろうが…。それこそ相棒を名乗れねぇ。
「そういう事なら申請と準備してくるわ。ルリ、行くわよ」
「はいはーい。じゃあ明日ね! 楽しみだよー」
慌ただしくルリマリは部屋を出ていった。
「不満ですか?」
「少しな。あまり危ない事してほしくないだけだ」
「心配してくれるのですか?」
「当たり前だ! いくらオレが回復魔法が使えても、ケガをするユリノ姉とか見たくねぇんだよ…」
「大丈夫です。私は強いですから」
それは知ってるけど、心配くらいするだろ! オレと違って前衛のユリノ姉は最前線に行くんだから。
「ありがとうございますレイア…」
そうやってたまに優しくハグするのほんっと姉達にそっくりだよ…。
何も言えなくなるだろ?ズルいって。
夕食と風呂を済ませたオレ達は、明日に備えて早めに休むことにした。
心配な気持ちは無くならないけど、少しだけワクワクしてるのも事実だからな。
前のダンジョンの時はユリノ姉は居なかったし…。今回は一緒に行ける。
「ほら。早く休みなさい、寝坊したら置いていきますよ」
「それしたら一生口聞かねぇからな…」
「はいはい。でしたら早く寝てください」
ほんと姉って生き物は優しいのか意地悪なのかわかんねぇ…。




