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それ、どうにかなんねぇの?



「目標までもう少しどす〜」

「………」

気にしたらだめだ。突っ込んだら負けな気がする。


剣戟と、怒号のする場所へ何故か迷わずたどり着いたオレは、そこでやたら可愛らしい見た目の二足歩行の犬達と戦っているおっさん数人を見つけた。


「なぁ…あれどっちが悪者なんだ?」

「その判断力も試されてるんだにゃ」

うぜぇ…。


判断材料がなさすぎて、もう一度よく観察してみる。

戦闘で押されているのは二足歩行のやたら可愛らしい犬達。ただ、全員武装しているし、見た目と裏腹にかなり戦いなれてはいる様子。


もう一方は、人間のおっさんたち。こっちもフル装備で戦っている。

ただ、犬たちと違って装備が統一されてない。

唯一戦ってないのは、馬車の影にいるドレス姿の女の人。


「あの人は人間だから、オッサンたちが守ってるのか?」

「お答えしかねますわん!」

「なぁ、お前のそれ、殴ったら直ったりしねぇか?」

「やめるのです! 虐待はダメなのです!」

「くっそ…せめてなんかヒントくらいくれよ」

「あなたは弓使いなので、構えるとズームできると思いますよ」

急に口調戻んなや!! 


でもヒントはありがたい。

弓を構えて引く…。

「おぉ…ほんまやん」


そしてズームしてわかったことが一つ。

「なんで、理乃姉がいるんだよ!!」

よし。わかった。理乃姉がいるのならワンワン達が良いやつだ。

あのおっさんたちは理乃姉の舎弟かなんかだろ。


迷わず矢をおっさんへ向けて放つ。

吸い込まれるかのようにおっさんへと刺さる矢。


奇襲に慌てる奴らに、更に射かけること数発。

おっさんズ壊滅。

「お見事なの! よくあの姫がワンッダ国の姫様と見破ったの」

「は?」

いや、理乃姉が舎弟と一緒にワンワン達を虐めてたんじゃ?


「助太刀に感謝する! 姿を見せてはもらえないか!」

ワンワン達がオレを探している様なので、木々の中から出ていく。


「あなたが助太刀してくれたのですね、ありがとうございます」

深々と頭を下げる理乃姉。

あの理乃姉がオレに頭を下げた!?恐っ…

いや、似てるだけか。髪の毛は金髪だし。

理乃姉は茶髪だ。


ワンワン達にもお礼を言われ、戦利品と言う名の倒れたおっさん達から回収したアイテムの分配。

回収後、おっさん達が跡形もなく消えたのはいかにもゲームっぽい。


「奴らはこの辺りを縄張りにしている山賊なんです。昼間なら大丈夫かと森を抜けたら襲われましてな」

ワンワンの隊長らしき一人が説明してくれた。

山賊が夜行性と誰が決めた…。昼間でも目立たない森の中なら動くやろ。

って…ゲームキャラに、突っ込んでもしゃーないわな。

そーいうもんなんだろう。


「あ。あの…ありがとうございました。ぜひ城へ来てくださいませんか?」

そう言いながら腕をつかもうとしてきた理乃姉を反射的に避けてしまった。

姉の動きに対して無意識に反応するのはもう条件反射みたいなもんだな。

この人は姫だったけど、似てるんだから仕方ねぇよ…。



「無礼な!! いくら恩人といえ、姫への無礼は許せん!」

沸点低すぎだろワンワン…。避けただけじゃねぇか。

「…いえ、いいのです。突然触れようとした私が悪いんです…」

シュンとしてしまう理乃姉。 うん、しおらしい理乃姉とか超絶気持ち悪い。

理乃姉なら癪に触れば即、拳か蹴りが飛んでくる。


「しかし姫!」

「いいのです。行きますよ。 助けていただいてありがとうございました…。もし、ワンッダ国へ来られた際は城へ訪ねてきてください。あの…お名前だけでも伺っても?」

オレ名前どうなってるんだ?どこで確認できる?


「名も名乗らんとは! いくら腕と見た目が良くても中身まで伴わなければ意味がない! 姫、もう行きましょう。あのような無礼な者、城へ呼ぶ必要もありません!」

「……」

名乗りたく無いわけではなく、わからんだけで…。

これも、何もかも適当に決めたツケか。



理乃姉にそっくりな姫は、ペコリと頭を下げると、馬車に乗って去っていった。

森の中なのによう走るな、あの馬車…。ぶつかんねぇのか?

「チュートリアルはこれでお終いです」

お前今までどこにいた。


「いや、この世界の情報とかは?」

「先程、しっかりと名乗られて、一緒に城へ行かれれば情報もお金も貰えたのでしょうね」

そーかよ!


「はぁ… なぁ。自分の名前とか”ステータス”とかどうやって見るんだ?」

「…?」

「いや、いい。見えたわ」


種族・ハーフエルフ 性別・女 レベル3 名前・レイア

「…………なんやこれはーーー!!!!」

「うるさいなぁ。今最適化中なんだから静かにしてよ」

いや、お前は相変わらずブレブレかよ。



「うっぷ…。やべぇ酔った…」

「ざぁこざぁこ♪」

ほんっと腹立つなコイツ…



〜〜〜〜〜〜



ここで冒頭に戻るわけなんだが…。

ログアウトも方法がわからず、緊急スイッチも使えないとか、これ詰んだのでは?


「日が暮れる前に森を出たほうがよろしいかと」

「…なぁ。お前のそれなんとかならねぇの?」

「何かダメだった…?」

本気で怖いから由乃姉の顔で上目遣いするな。


「話しにくいから統一してくれって言ってるだけだ」

「でしたら初めからきちんと決めてください。そうすれば先程のように色々と無駄にする必要も無かったのです」

「正論で心をなぐるなよ…」

「ざぁこざぁこ♪」

「お前、わざとやってねぇか?」

「お答えしかねます。それにあなたも言葉遣いがブレてますよね?」

「オレのは仕方ねぇんだよ。小さい頃に親が転勤でアチコチいってたから、方言が混ざっててな。なかなか抜けねぇんだ」

って…ゲームのキャラに説明してもしゃーねぇか。


「取り敢えず、普通の女の子みたいな話し方にしてくれ」

「普通とは…?」

「普通は普通だよ!」

どう説明しろって言うんだ。 なまじ由乃姉に似てるからあまり強く出れないのが恨めしい。

本能的に身体が怯える。


「まずは森を抜けるっちゃよ!」

「それは普通じゃないってわかってるよな?」

「…?」

無駄に疲れつつ、いつの間にか酔ってたのが治まっていたのに気がついたのは森を抜けた頃だった。




「酔いが落ち着いて楽になったのはいいけどよ、この後どうしたらいいんだ?」

「お姉ちゃん、ここでキャンプしようよー」

「頼むからその顔でお姉ちゃんとか言うのやめてくれ。寒気がする…」

「注文の多い人ですね」

普通に話せるじゃねぇか。


とっ散らかった口調のユリノに聞きながら、持ち物にあったテントを設置、焚き火も用意した。

火はユリノが魔法で一瞬。

「それ、オレは使えないのか?」

「あなたは回復魔法だけを選んでますから、攻撃系の魔法は一切使えませんよ?」

あの質問のせいか。


ユリノはオレの不足を補うようになっているらしく、近接戦闘と攻撃魔法に特化しているらしい。

有り難いような、腹立たしいような…。

「見張りはお任せを。レイアは今のうちに休んでください」

「大丈夫なのか?お前も休んでいいぞ」

「…今日知り合ったばかりでそういうのは早いと思うの」

「誤解を招きそうなこと言うな!」

めんどくせぇからほっといて、テント内へ。


外から見たサイズと明らかに広さが違うのはゲームならではなんだろうか。

やたら充実していて、ちょっとした宿みたいになっている。

「風呂とトイレまであるのか…」

贅沢言わなければここで暮らせそうまであるな。



ふぅ…。屋根壁があるだけで随分落ち着くな。 今のうちにいろいろと整理しておくか。


まず、今オレがいるのはゲームの世界。

ゲームの名前は知らん。

唯一判明した国の名前はワンッダって名前。そこに理乃姉にそっくりな姫がいる。

しかもチュートリアルでお世話になる筈が、オレが適当な事をしたせいでパーになった。

おそらく今からワンッダって国へ行っても歓迎されないのは間違いない。


次が、相棒となるサポートキャラのユリノ。

見た目は由乃姉そっくりの、キャラがブレっブレのおかしなやつ。

これも多分オレのせいなんだろうが…。


最後。

自分の事。

ハーフエルフっていう種族で、ステータス上は女になってた。

エルフっていうと耳が尖ってるのか?そう思い触れてみたけど、よくわからなかった。

後は…確認するしかないよな。とはいえ。ゲームだしな?

服なんて脱げないだろ。仮に脱げても精々下着姿だろうよ。



そう思ってシャワーを浴びようと服を脱いだ自分を殴りたい。

このゲームR18指定だったか? ちがうよな?そうだとしたらオレは買えてないはずだし…。

「ホントに女になってる…マジかよ。バットもボールも無くしてしまったのかオレは…一人野球もできねぇ」

「ナニしてるのですか?」

「ぎゃぁーーーー!」

「あー、そういう? すみません。お一人で慰められるのですね?お邪魔しました」

「ちがっ! おい! シャワーを浴びようとしてただけで…」

ユリノは勝手に納得して風呂場から出ていった。


というか、入る前に声掛けろや!!

見張りしてたんじゃねぇのかよ…。










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