相棒は浮気になるのか?
目が覚めたら、ギルドの酒場エリアにある椅子にユリノ姉の膝枕で寝かされてた。
「はっ…ギルド怖い! オレ帰る!」
「待ちなさいレイア」
「だって!」
「これ、しっかりと見てどうするか決めなさい」
ユリノ姉が渡してきたのは契約書。
「見るなと言われたので私は見てません。レイアが自分で確認して判断しなさい」
「…いいのか?」
「レイアが見せてくれるというのなら見ますが」
「相棒だろ? 依頼は一緒に受けるもんじゃねぇのか?」
「そうですね。ふふっ…では…」
ユリノ姉はあれから大丈夫そうだな。また世界がリンクしたなら何か起きないかと心配したが…。
「私の目の前でいちゃいちゃしないでくれる!? 零くん、浮気だよそれ!」
「……」
「無視!?」
意味がわからん。相棒と依頼のチェックするのが浮気なのか?
「なぁ、ユリノ姉。オレわかんねぇんだけど、浮気ってなんだ?」
「少なくとも我々が今している事を責められるいわれはないかと」
だよな! 良かった。
なおもミミはブツブツ言っているが、今は姉達からの依頼を見なくては。
「……なんですかこれ」
「それをオレに聞くかよ…」
まず詩乃姉。
依頼内容・帰ってきて。
雇用期間・依頼を受けてから依頼の達成まで。
報酬・手料理
備考・食べたいもの、何でも作ってあげるわ〜。これからも私が毎日お味噌汁作るわよ〜。
さすがに大切な部分の空欄は無くなったな?
だけど依頼内容は変わってねぇじゃねぇか!!
帰り方がわかんねぇのに、どないせーゆーのか!
しかも何だよ毎日味噌汁って…古代のプロポーズかよ…。たしかに詩乃姉のは美味いし、毎日でも飽きないけど。
次!!
由乃姉。
依頼内容・デートして。
雇用期間・永遠!
報酬・うちからの永遠の愛とか・ら・だ♡
備考・うちを選んでくれたら、何でも望みを叶えるよ。どんな事でも!
………。
オレはいかがわしい出会い系かなんかの面接をしてるのか?
しかも、死してなお拘束されそうな契約じゃねぇか…怖ぇよ!
次!!
理乃姉。
依頼内容・美緒と別れて。
雇用期間・今すぐ、即座に!
報酬・私が代わりに恋人になってあげてもいいんだからね!
備考・初めては由乃姉にあげてもいいけど、それ以降は私のものなんだから!
ちょっと意味がわかんねぇ。くっつけようとしたの理乃姉だよな?
新手のツンデレ詐欺か何かかよ…。
姉が恋人とか流行ってんのか?
しかも、由乃姉にまず差し出すのかよ! オレは生贄か?
「アタマいてぇ…。なぁ、ユリノ姉。姉が恋人とか普通なのか?」
「別にいいと思いますよ。それは人それぞれです」
やっぱ流行りなのか。
由乃姉も似たような事よく言ってるし。
「レイア、この三人は義理の姉ですか?」
「いや、そんな話聞いたこともねぇよ、そもそもうちの母親が父親以外とくっついてたなんて聞いたこともねぇし、父親が浮気なんてしてたら世界が滅ぶ」
「…レイアのお母様は終末魔王かなにかですか?」
「うん」
「……。どうしますかこの依頼」
「受けられると思いますか? ユリノさんよ」
「無理ですね」
ユリノ姉はまた契約書を細切れにした。
「何が書かれてたの? お姉さんからの契約書に…」
「本当に聞きたいか?」
「やめとくよ…」
それがいいな。
「姉達には、もうちっとちゃんと受けられる依頼にしてくれって伝えてくれるか?」
「わかったよ」
ミミが何か話しているようだけどオレには聞き取れない。
「何がダメなんだってメチャクチャキレてるよ! 助けて零くん!」
「全部だよ! 説明しなきゃ理解できねぇのなら、二度と姉達からの契約書は受け取らねぇって伝えてくれ」
「それ私が言うの…?」
「他に誰がいんだよ…」
渋々伝えてくれたミミがどうなったかは…うん。
ごめん、としか言えねぇ…。姉は見えねぇけど、ミミがもみくちゃになってるのはわかる。
「相手にやる気がないようですし、帰りますか?」
「それもそうだな。シノンさんの晩ごはん食べたいし」
「待って!!」
「ん? せめてフレンド登録させて!」
「なんだそれ…?」
ミミに説明をされたのだかさっぱりわからねぇ。
「フレンドって言えば、フレンドの設定項目出ない?」
「フレンド フレンド 出ねぇな。なんかあんのかそれ」
「うそ…そんな筈ないよ!」
「そうは言われてもな…。ユリノ姉は出るか?」
「いいえ、試してみましたがそのようなものは…」
ミミは頭を抱えてるがオレにはサッパリだ。
そもそも設定ができねぇし。
「零くんはやっぱりそっちの世界に行っちゃったの…?」
「どうなんだろうな」
「こっちに零くんの身体がないし…」
ん…? 今、なんて…?
「お、おい! 今なんて言った?」
「だから、零くんの身体はリアルの世界にないの! ゲーム機だけ起動したままベッドの上に落ちてたって。私も確認したから間違いないよ」
マジかよ…。それじゃあオレは…。やっぱり死んでるとかそういう事か?
頭が真っ白になって倒れそうになったところをユリノ姉が支えてくれた。
「大丈夫ですか、レイア!」
「あ、あぁ…オレ、やっぱり死んでるのかも…」
「生きてますよ! レイアはここにいます! 私の腕の中にいます!」
「そうだな…。だよな?」
「ええ! 大丈夫です!」
ユリノ姉の腕の温かさも、息遣いも感じる。うん、死んではいないはずだ!
「…ねぇ、どういう事? 零くんが死んでるとか生きてるとか…」
「オレもわかんねぇよ!」
「すみません、今はそっとしておいてくれませんか? それとも自称彼女は苦しんでいる相手を気遣うこともできませんか?」
「…自称なんかじゃ…。…ごめんなさい」
悪ぃな…ミミ。
ちょっと頭が混乱しててうまく説明できる気がしねぇし、気遣う余裕もねぇわ…。
ユリノ姉はオレを膝枕で寝かせると、今分かっている事をミミに話してくれてる。
ぼーっとする頭でそれを聞いていたらひどい頭痛がして、またオレは気を失った。




