不思議なリンク
テントを組み立てて、ユリノ姉を運ぼうとしたらあっさり抱きあげられたことに驚いた。
だって、オレよりも背が高くスタイルのいいユリノ姉を持ち上げられるとは思わなかったから。
そんなこと今はどうでもいいか。
テント内は宿みたいなものだし、落ち着くはず。
………オレはバカか?
原因がハッキリしないのに、なんでテント内なら大丈夫だと思ったんだよ。
アホすぎる…。
自分が落ち着けたからと言ってユリノ姉もそうだとは限らないだろうに。
「レイア、ありがとうございます。だいぶ落ち着きました」
「本当か!? 無理するなよ!」
「ええ…。頭の痛みも引きましたから」
「そうか…」
オレの判断は正解だったのか? 顔色を見る限り痩我慢ってこともないよな。
さっきまでは真っ青だったから。
無理しても良くないからと、説得をしてこのまま夜を明かすことにした。
「そういや、テントの外は大丈夫なのか?」
「何がです?」
「ほら、モンスターに壊されたりとか」
「テントはマジックアイテムで、それ自体がシェルターみたいなものですから、完全な安全地帯ですよ?」
「じゃあなんで最初の時、見張りをするとか言ったんだよ」
「……あの時はわからない事だらけで少し一人になりたかったのです」
「そうか、ごめんな…」
多分だけど巻き込んだんだよな、オレが。
ユリノ姉が、今はゲームのサポートキャラじゃないのはもうわかってる。
じゃあ、この由乃姉にそっくりなユリノ姉は誰なんだ? って話になるけど。
「何を謝るのですか! ひっぱたきますよ?」
「なんでだよ…」
あれ結構痛いからやめてほしい。
「確かに私は、レイアに会う前の自身の記憶はありません。世界の事は”知っている”のにですよ。自分の生まれ故郷も親兄弟のことも知りません」
「だったら!!」
「私の記憶の全てはレイア、あなたなんです。笑ったのも怒ったのも。レイアが私の全てなんです」
「………」
「それなのに、レイアに謝られてしまっては私の存在を否定されたみたいではありませんか…」
「そんなつもりは…」
巻き込んでしまったのなら申し訳ないと思っただけで…。
「もし、罪悪感があると言うのならこれから私としっかりと向き合ってください。私の存在意義はあなたなんです、レイア」
「お、おう…」
「どうしたらいいかわからないといった感じですか?」
「あぁ…こういう事に慣れてないからな」
「抱きしめていてください。今夜はずっと」
「わかった」
それでユリノ姉が落ち着くのなら。
ユリノ姉に誘われるまま同じベッドに入る。
今までも同じ部屋で寝泊まりはしてたけど、流石にこれは初めてだな。
知らない間にガッチリ締められてた事はあった。でも自分からってのは…。
思ったような抵抗感がないのは、自分の身体がリアルと違うからなのか、由乃姉に似てるからなのか…わからん。
小さい頃は姉達と同じ布団で寝るなんてしょっちゅうだったし…。
「私の腕の中で他の人の事を考えるのはやめてください」
ほんとエスパーかよ…。
色々あったせいか直ぐにユリノ姉の寝息が聞こえてきて、オレも安心して眠ることができた。
…………
………
……
目が覚めたのは、ものすごい圧迫と、空気を求めてだった。
息が吸えないと人間はパニックになる。
暴れに暴れたオレは、ようやくユリノ姉の腕の中から這い出て空気を吸った。
「はぁ…はぁ…死ぬかと思った…」
「…めちゃくちゃしますね? もう嫁に行けませんよ私」
「こっちは夢からあの世に行くとこだったんだよ!!」
「幸せだったのです私は。レイアがそばにいるって思うと」
だからって締め上げないでほしい…。姉の思いってみんなこんなに重いのか?
つい先日もオレを締め落としたのは由乃姉らしいし。
「そろそろ街へ帰る仕度をしましょうか」
「大丈夫なのか? 外に出て…」
「わかりませんが、永遠にここで過ごすわけにも行かないでしょう」
「それはそうだが…」
「私はレイアとここに住むのはかまいませんが、食事とかに困りますからね」
ユリノ姉はいつの間にか下着姿になっていたけど、ササッと着替えて、外に出てしまった。
また倒れたらと不安になり、オレも直ぐに追いかけた。
「ユリノ姉! 大丈夫か?」
「ええ…それよりも…」
「ん? 嘘だろ…」
昨日あれだけ荒れていた森が綺麗になっていた。 潰れた馬車もない。
どういう事だよ!!
「リンクが切れたのかもしれませんね…」
「それって姉達のゲームとのってことか?」
「ええ。それくらいしか説明が付きません。一晩であの惨状が元に戻るはずもありませんし」
てことは何か? 昨日、あのタイミングで姉達はログインしていたとかそういう?
ゲームにハマったのか? あの姉達が? わからねぇ…。
あの姉達は何を考えてるのかさっぱりわかんねぇからな。
何年か前まではそんな事もなかったんだが…。
由乃姉に押し倒されて襲われそうになってからか…?
そーいや、その後、母親と姉三人で何やら話し込んでたな。
みんなやたら怒りっぽくなったのもその頃か…。オレの女への苦手意識もあの頃から強くなった気がする。
ま、今はユリノ姉が平気そうにしてるだけで充分か。
「ギルドの依頼に関しては帰りの道すがら狩りでもすれば充分ですし、街へ向けて帰りましょうか」
「そうだな。ユリノ姉の事もあるし、もうここへ来るのはやめような?」
「心配してます?」
「当たり前だろうが!」
「ふふっ、そうですか」
なんで嬉しそうなんだよ…。あんなツラそうにしてたら心配するのは当然だろ!
帰り道で野生動物を狩りながら街へ戻ってきたのは、お昼も過ぎたくらいだった。
「まずは報告に行きますよ」
「そうだな。狩ったものが腐る前に届けないと」
「また訳のわからないことを…」
「あん? なんでだよ、生肉は冷凍とかしなきゃ日持ちしねぇんだぞ?」
「持ち物として収納している間は大丈夫です。そんなことも知らないのですか? このくまパンは…」
「…じゃあ何か? 仕舞っておいたらアイスでもとけねぇのか?」
「そうですね、取り出したらとけていきますが」
そういう便利なことは早く教えてくれよ…。
そんな便利な収納だかポケットに、オレは変なキノコや石っころいれてるのかよ。
後で捨てよう…。
でもな? 気がつくと増えてんだよ。不思議だよな。
依頼の報告のためにギルドへ来たオレ達はそのまま受け付けで達成報告をした。
「気づきませんかレイア」
「あぁ、オレでもさすがにな」
入ったときから違和感はあった。何がって言われてもハッキリわならなかったが、今は確信がある。
だって、ギルドにあるはずのないパソコンみてぇな端末があるから。
「なんでしょうねこれ…」
画面に触れると会員証を乗せろと表示が。
首からかけているドッグタグを外して、端末の隣にある光っている場所へ乗せるも反応しない。
「私達には使えないという事でしょうか」
「みたいだな…」
受け付けで達成報告はできたのに。基準がわかんねぇ…。
「あーーーー! 零くんいた!!」
「んあ?」
叫び声の方へ目をやるとミミの姿が。
「やはり…」
またリンクしてるのか今…。
ミミが目の前に来た直後、オレはまた凄まじい力で締め落とされた。
こんなんばっかやん………




