姉達の狩り
「いない…?」
「はい。しかも店長もまだログインしてないらしいので、確認も取れません」
うちらはまるで指名の子がいないのに店に来てしまった客みたいになってる。
「せっかく書類の書き方も覚えてきたのに〜…」
「零くん…」
「ユナ、必ず会えるわ…?ね?」
「うん…」
今日は会える、そのつもりだったから…。
「こうしてても仕方ありません! 皆さんギルドへ行きませんか?」
「ここで待たずに?」
「はい! だって…皆さんその…お金無いですよね?」
言われたらそうだ。
いつまでもミミにたかってるのは流石に…。零くんに呆れられるよね。
「わかった。ここへ来るためにも稼ごう!」
「ええ〜そうね…」
「わかったよ。ギルトに関しては僕たちは素人だし、また頼るけどごめんな、ミミ」
「大丈夫です! サポートすると言いましたから。ただ私もそんなにお金はないので稼がなくてはいけませんし!」
それは申し訳なかった。リアルでご飯くらい奢ってやるか。
ミミの案内でギルドへ行くと、中は酒場みたいな待機エリアもあって賑やかだった。
全部が全部プレイヤーではなく、AIで動いてるキャラもいるとは聞いたけど、見分けはつかない。
別に他の誰かと関わる気もないしいいけどな。うちらの目的は一つだし。
「先ずは登録をしましょう。名前と職業、使う武器種などを書かなくてはいけませんので、記入漏れの無いようにしてください」
「記入漏れがあったらどうなるの〜?」
「きちんと書けるまで何度でも書き直しです」
契約書と同じか…。今日は落ち着いて間違えないようにしないと。
同じ失敗はしない。
結構細かく記入しなくてはいけなくて、面倒くさがりな零くんがよくこれを書いたなと感心してしまう。
代筆不可らしいから、例の相棒とやらに書いてもらうのも無理だろう。
…なんだよ、相棒って。しかもうちにそっくりとか。
まさか! うちが好き過ぎて、そっくりな相手を?
嬉しいような、ムカつくような…複雑だなこれは。
書類を書き終わり、確認もした。大丈夫。
「それをギルドへ提出すると、こういう会員証が貰えます」
ミミは首から下げてる札みたいなのを見せてくれた。
身分証明も兼ねているらしく、いろいろな場面で役に立つそう。
「ギルドに所属しなかったらどうなるの?」
「ゲーム的には問題ありませんが、不便なので皆さん何かしらのギルドに所属してますよ」
「その口ぶりだとここだけではないってことかしら〜?」
「はい。店を経営するような人は商業ギルドですし、土地を開墾して畑とかをするなら農業ギルド、釣りや漁師なら漁業ギルド…と色々ありますね」
手っ取り早く稼ぐならこの狩猟ギルドが早いって言うから、うちらはここでいい。
受け付けのキャラに書類を渡したら、機械に通した後、すぐに札をもらえた。
首にかけておくのが良いみたいだからそうするかー。
「端末に会員証をかざすと、今受けられる依頼が表示されるので、その中から選んでください」
「紙の書類じゃないのか?うちら書く練習してきたのに」
「依頼を出す場合は書きますが、それらをまとめて管理しているのは、この端末ですね」
数が多すぎるから紙で貼り出したりとかやってられないとか?
「ギルドへ来て直接依頼を出すのならあちらの端末で記入もできますよ」
ミミが指差すのは、パソコンみたいな端末。
ファンタジーなのか現代的なのかよくわからなくなってきた。
「一緒に一つの依頼をって事はできないの?」
「あっ…そうですね、ではパーティー組みましょう!」
ミミに言われて、うちら姉妹とミミとでパーティー結成。
零くんを連れて帰るまでだから! 一時的な同盟だし…。
……前よりミミに対して拒否感がなくなってきてる。
もちろん零くんを渡すつもりはないけど、仲間意識みたいなのはできてるのかもしれない。
ライバルであり、零くんを助けるための同士。みたいなものか。
相談して選んだのは当然、狩り依頼。
ミミは心配してたけど、報酬もいいし手っ取り早い。
ちまちまとアイテム集めとかやってられないし。
「思いっきり暴れられそうでいいわ〜」
街から出た途端ハンマーを振り回すシノ姉。
「ちょっと! 僕達に当たらないように気をつけてよ!」
「あら…ごめんね〜」
謝りながらも振り回すのをやめないのは、いかにもシノ姉らしい。
ターゲットは鹿やイノシシのような肉になる動物。
うちらのような駆け出しレベルだとまだモンスターみたいなのは相手にできないんだとか。
ゲームだし、大した苦もなく獲物を仕留めていく。
アイテムを回収すると消えていくから抵抗感もない。
途中、牛か人かわかんねーのがいて、勢いで殴り飛ばしたら更に数匹襲いかかってきた。
ミミは敵じゃないのに! って言ってたけど、襲いかかってきたし。
そいつらもうちらには敵じゃなかった。あぁ、敵じゃないってそういう意味か。
「格上…しかもレアキャラを…あっさり全滅…?」
「なにかキレイなの拾ったわ〜」
「あ、それ! 奴らが振り回してた!」
「レアドロップ武器まで…どういう強運なんですか」
シノ姉は運がいいから別に不思議でもない。
ある程度狩ってたらいい時間。
もう一度カフェに確認しに行きたいから、そろそろ切り上げる。
ギルドへアイテムの納品と報告がてら、拾ったいらない物を売却。
シノ姉が拾ったのは斧らしく、うちらは使わないし、ギルド経由でオークションがあるって教えてもらったからシノ姉が出品。
あっという間に纏まったお金ができた。
「相変わらずだよねシノ姉」
「いつものことじゃん」
「これで零くんを一日中指名しようかしら〜」
「私が何日もかけて貯めた金額を、二時間かからずに越えられた…」
慣れないミミはショックで落ち込んでるけど、これからこんな事は幾らでもあるから慣れろとしか言えないな。




