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異世界に弟を奪われた姉達の奮闘記 〜なお弟はTSしても異世界を気ままに満喫中〜  作者: 狐のボタン


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初狩り



「ユリノ姉、今日ってまたあのカフェで仕事なのか?」

「いえ? 昨日店長に渡された契約書は、日付を指定されていませんから。こちらの都合か…或いはあちらから要望があればその時でいいでしょう」

それはオレにとって朗報だ。

さすがにちょっとあの格好からは距離を置きたい…。



いつもの様に宿の一階で朝食を食べながらシノンさんと世間話をして、ギルドへ向かう。

「なぁ、どうして今日はシノンさんにお弁当を作ってもらったんだ?」

「一度狩りにでも出てみようかと思いまして。武器も手に入れたことですし」

お…おう…あの見るからに命をかち割りそうな形をした武器だな。


「でも、オレはまだいいとして、ユリノ姉はいつもの服しかねぇよな? 大丈夫なのか?」

「防具とかの事ですね。そんなもの攻撃を食らわなければいいだけの話です。その前にこうっ! ですよ」

その腕の素振りだけでブンッって音がするの怖ぇからやめてくれ…。


ユリノ姉もあれだな、うちの姉達と同じってわかった。

オレは先日購入した、防御効果のあるブレザーみたいなのを着てるから、多分平気だろ。

耳と尻尾もユリノ姉が取ってくれたし。

鎖はついたままだけどな…。


なんでオレが装備してるものをオレが外せなくて、ユリノ姉なら外せのるかとかは考えるのはやめた。

考えるだけ無駄だろ。

それこそうちの姉達とおなじ。理屈も道理も通じねぇ…そう思ってたほうが無駄に悩まなくてすむ。

「何かイラッとする事を考えてませんか?」

「ユリノ姉はえすぱーかなんかなの? 心読むの?」

「また耳と尻尾つけますよ? 感情がよみやすいですし」

「やめろよ!! 無くても読んでるのに必要ねぇだろ!」

このスカートも大概短いんだから勘弁してくれ…。



会話しながらも街を出て街道を歩く。

「どこへ行くんだ?」

「難易度を考えますと、最初の森周辺が安全かと思いまして。素材類はギルドが常時買取していますから無駄にはなりません」

「へぇー」

ちょっと待て。あの森ってここから相当歩かなかったか?


まぁ…いいか。テントもあるし、シノンさんのお弁当もあるからな。

石みてぇなパンは食わなくて済むだろ。

「置いていきますよ?」

「待ってくれ!」



初めてここへ来た時に比べたら疲れなくなったというか、明らかに休憩回数が少なくても進めてるのは何だろうな。

「何かいますよ。警戒を!」

「えっ!? お、おう!」

咄嗟に弓を装備して、ユリノ姉の目線の先をズームする。


「なんだあれ…」

「何が見えるんです?」

「…わかんねぇ…説明しにくい。馬みたいな身体に、人間の女の人の上半身が乗っかってる」

「センタウルのメスですね。大丈夫です。敵対種族ではありません」

「そうか…」

初めてみた…。


「家族単位で移動しながら生活するので、会うのは稀ですよ」

「レアイベントか!」

「あまり出会わないという意味ではそうですね」

色々おるんやなぁ…。



その後は野生の見慣れた動物を何種類か見ただけだった。

鹿とかうさぎとか。

ただ、想像よりデカかった。野生動物を初めて見たからかもしれんけど。



「…森が…一体、何があったのですか?!」

ようやく森が見えるかってところでユリノ姉が珍しく取り乱したような声を上げた。

「んー? うおっ! なんだあれ…でかいものでも落ちたのか?」

「そのようなものの気配はありませんが、一応警戒してください」

「わかった」

まさか最初に降り立った森がこんな事になってるとは…。



目の前まで来ると、その惨状は森の奥まで続いているのがわかった。

「何が通ったんだよ…」

「ここは、初心者でも安心な森のはずです。何故このような事に…。戻ってギルドへ報告すべきでしょうか」

オレがゲームを始めて、ユリノ姉と初めてあった場所が…。

ん? と言うことは…。


「なぁ、ユリノ姉」

「はい?」

「オレ達はここで初めて会った、それで間違いないよな? ここだよな?」

「ええ…なんですか馴れ初めでも話したくなりましたか?」

「ちげーよ!! オレはゲームを始めたらここに立ってて、ユリノ姉と出会ったんだ」

「何が言いたいのですか? ここはゲームではないと何度も…」

「どのタイミングでオレがゲームからこの世界に来たのかはわかんねぇけど、始まりがここでチュートリアルがここなら…」

「もしかしてお姉様方も?」

「そう! リンクしてるのならありえない話でもなくないか?」

「そうだとして、それとこの森の惨状がどう繋がるのですか」

「あの姉達ならやる! 道がないなら作る!」

「蛮族ですか?」

それは流石に言い過ぎだけど、否定できる材料も無い…だって目の前がこれだし。



「ユリノ姉だって、やろうとしたらできるだろ?」

「それはそうですが、こんな野蛮なことしませんよ」

出来るんは出来るんやな…怖っ…。


「なんですか?」

「…なんでもない」

もし、オレの予想が違ったとして、ギルドに報告するにしてもある程度の情報が必要だ。

とりあえず奥まで行って確認しようと意見が一致したから進んでみる。

メチャクチャすぎて、馬車のイベントがあった場所がわかんねぇ…。

うちの姉達はブルドーザーかよ。


「レイア、あれ…」

「…もしかして馬車か?」

「おそらくは…。ひしゃげていますが…」

もしかしてあの姉達は、敵味方の区別するのさえ面倒くさがって全部なぎ倒したな。

あの三人が揃って同じ目的で動いたら…、うん。やるわ。一番手っ取り早いもんな?


「イベントキャラはどうなったんだ?」

「イベントキャラ?」

「ほら、オレが名乗らなくて帰っちゃった姫!」

「うっ…」

「ユリノ姉!!」

「大丈夫です…ちょっと頭が痛く…」

「ユリノ姉! ユリノ姉!」

不味いな。ゲームとこっちの境目みたいな所で、オレと一緒にいて一番影響を受けたであろうユリノ姉には負荷が掛かってるのかも。


ユリノ姉を寝かせて、手持ちのタオルをかけておく。

急いでテントを組み立てないと!


「大丈夫ですから…」

「ダメだ! 少し大人しくしてろ!!」

ごめん、オレが迂闊だった…。

テントの中なら落ち着けるから待っててくれ!








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