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デートってこういうものなのな? そして始まりへ



「理乃姉、オレ出かけてくるから。由乃姉の事よろしく」

「それくらいならいいよ。かわりにプリン買ってきて」

「はいはい…」

昨日も由乃姉は帰りが遅く、”零くんとの時間が短すぎる!” とかいって付きまとわれて、今もオレの部屋のベッドで寝てる。

襲われそうになった所を、理乃姉が背後から殴って気絶させてくれて、逃げ出したオレはリビングのソファーで寝た。


デートだって由乃姉にバレる前に家を出ないと。

こんな時の為に、オレは着替えを家のあちこちに常備してる。

部屋に入れなくなるなんていつもの事だし。

着替える為に部屋へ戻って、由乃姉を起こしてしまったら何をされるかわかったものではない。

”零くんの生着替え…ハァハァ…”とかいってプッツンするのは間違いないだろう。



詩乃姉が淹れてくれたコーヒーを飲んで、家を出る。

うちから駅までは徒歩だと15分くらいか。

今9時半だから、約束の時間より早めにつけるな。


昨夜 由乃姉を殴り倒した理乃姉に、デートするならどこへ行くかくらい考えておくようにって言われた。

だけどな?思いつくわけがないだろ。好みとか全く知らない相手だぞ?

駅から行くとしたらファストフードか、モールか…。

それくらいしか思いつかん。


そんな事を考えながら駅に到着したら、昨日の子が。

「おはよ!」

「悪ぃ、早く出たつもりだったんだけど、待たせちゃったか」

「ううん。今来た所だから!」

「そっか、取り敢えずその大きな荷物は持つな」

なんかでっかい紙袋持ってるし。


「ありがとう。女の子が苦手って聞いてたけど、そういう所は気が利くんだね?」

「…うるせぇよ」

「ふふっ。 私の事知ってもらう為に行きたい所があるからいいかな?」

「あぁ」

その前に名前を…って言いたいけど、いまさら聞きにくくて言い出せないまま。

何してんだよオレは…。



連れて来られたのは…

「ゲーム屋?」

「そう! 私の行きつけなんだよ」

「へぇー」

オレもゲームは多少やるけど、禄にクリアとかした事ねぇな…。

話題だから〜とか、興味本位で買うゲームもあるけど、片手間の遊び感覚でしかないから飽きればすぐやめる。


有名なモンスターを狩るゲームを友達とやってた事もあるけど、装備にしろなんにしろ適当に選んでやってたら、やる気あるのか?ってキレられて辞めた記憶がある。

死んでねぇんだからいいじゃねぇか、遊びだろ?マジになるなよ。って言ったら更にケンカになったのも、今はいい思い出だ。


それ以降も別に険悪になるわけでもなく、普通に友達だし。

ただ、お前とゲームはやらねぇって笑いながら言われた。

オレも友達に迷惑かけてまでゲームをする気もないから、それっきり協力プレイのゲームとかは手を出していない。

オンラインゲームなんて以ての外だろう。

必死にゲームをしている見ず知らずの人と、オレみたいなのが組む事になったら申し訳ないからな。



「こんにちわー! てんちょー、アレまだある?」

「おう。 今日からオンラインも始まるって時にないわけ無いだろ? ほれ、そこの棚にあるぜ」

「ありがとう! あちこち売り切れてるって聞いてたから」

「あぁ、大手はそうだろうな。うちみたいな個人経営店は、売値も定価だからな。他所で買えなかった奴らが最後に来るだろうよ」

なんの話だ?


「じゃーん! これが私を語るにはかかせないゲーム! シリーズ十作目の今作が、初めてオンライン協力プレイに対応したんだよ。第一作目なんて、ドット絵だったんだから」

「そ、そうか…」

めちゃくちゃゲームについて語ってくれるけど、全くわからねぇ…。


「これ、一緒にやらない?」

「オンラインか… いや、オレはオンラインゲームには向いてないんだよ」

「このゲームね、初めはしっかりとチュートリアルがあるし、オンラインでもオフラインでも遊べるよ。オフラインで始めても、途中からはいつでもオンオフ切り替えれる様になるから」

「そうなのか?」

まあそれなら、試す余裕はあるか。


「初めはオフラインで始めて、ダメだったら辞めてもいいから…お願い!」

「…本体はどれになるんだ?持ってないやつはさすがに無理だぞ」

本体ごと買うとかは流石にハードルが高すぎる。


「それなら大丈夫! それ、もらって欲しくて持ってきたの」

彼女が指差すのは、さっき重そうだからと預かった紙袋。

「コントローラーのスイッチが一個だけ反応が悪くてね、買い替えたんだよ。 あっ、でも! ゲームの最中には使う事はまずないスイッチだから」

「いや、本体って高いだろ。貰えないって」

「じゃあ、レンタル! どうしても合わなかったら引き取るから」

それならいいか。


修理に出さなかったのか聞いたら、その間ゲーム出来なくなるって…。

それはそーだろうけど。高い本体をポンって買い換えるのか…よほど好きなんだなゲーム。


その後、ゲームソフトまでお金を払ってくれようとするのを止めて、自腹で購入。

「うちは中古の買取もしてるから、合わなかったら持ってきてくれ。人気商品だから高値で買い取るぞ」

それなら無駄にはならないか。つってもゲームの代金くらい、パン屋を手伝えばなんとかなるからいいけどな。


オレがゲームを買ったのがよほど嬉しかったのか、歩きながらも色々とゲームの話をしてくれた。

まだ季節的に暑くはないとはいえ、何時までも歩きながらってのもな。

それに、借りたゲーム機がそこそこ重てぇんだわ。ぶつけて壊したら申し訳が立たねぇ…。


そんなわけで、駅近くのファストフード店へ。

ゲーム機のレンタル代として、それくらい出すといったんだけどなかなか納得してくれなくて。

待ちくたびれた店員のお姉さんに盛大なため息をつかれて、ようやく折れてくれた。

「ごめんね、ありがとう…」

「いいって。借りるんだしな」

オレに奢らせて当たり前! っていう理乃姉との差よ。

これが詩乃姉なら遠慮せずに払ってもらう。家の食費から払うだけだからって言うし。

由乃姉の場合は払われたら最後、”お礼は身体で返してね?”ってなるのは言わずもがな。




隅のボックス席に座り、食べながらもゲームの話。

剣や魔法のある世界で、たくさんの国もあっていろいろな種族もいる。

それぞれにちゃんとした文化もあるらしく、設定が細かい。

釣りや、狩り、家を買って装飾したりもできると。

すでに面倒くさくなってきた…。


「取り敢えず遊んでみて! もしオンラインを始めるのならメッセージ頂戴? どこにいても必ず見つけて迎えに行くから!」

なんやそのセリフ、男前かよ。




と、まぁそんな事があって。早く遊んでみてほしいからって言われてデートも早めに切り上げた。

姉以外とのデートってこういうものなんだな。初めて知った。


帰りに駅前のコンビニで理乃姉お気に入りのプリンを買うのは忘れない。

プリンは冷蔵庫へ。

買うの忘れたとか言ったら明日の太陽は拝めないからな。


自室で、まずはゲーム機本体のセッティングをして…。

そこで初めてこのゲームがVRだって知った。しかも最新の。

「大丈夫かこれ…酔うよな?間違いなく」

FPSゲームを15分と保たず断念したオレを舐めてはいけない。


後、この本体めちゃくちゃ高いだろ。レンタルにしてよかったな。

相手のことを知ろうって段階の、未だ友達未満みたいな子から貰うには値段が高すぎるだろ間違いなく。


オレの性格からして、どうせ直ぐ辞めるだろうな…。

そんな適当な気持ちでベッドに横になって、ヘッドセットをつけ、コントローラーを握る。

すぐに視界いっぱいに広がる仮想世界。

「綺麗だな…」

リアル過ぎない、ゲームらしい綺麗さと言うのか…。



次々と切り替わる画面。大草原や大きな城。

ファンタジーな街を行き交う人達を眺めていたら突然のアナウンス音声。


”ボディスキャン開始…”

ん?

”スキャン完了、キャラの見た目変更はされますか?”

別にどうでもいいな。 いいえ。


”あなたの名前を…”

ランダムで。


”職業を選んでください”

これは、選ぶか。

剣士、魔法使い… めちゃくちゃあるな。

ん? 質問に答えてあなたに合った職業を選択することも可能です、か。

これのが良さそうだ。


”近接戦闘と遠距離戦闘、どちらが好みですか?”

遠距離だろうな。広範囲を見渡せたほうが色々と楽だろ。


”魔法は攻撃と回復どちらが大切だと思いますか?”

回復だろ。どんなゲームでも回復役がいなかったり、回復アイテムがないと詰む。


”和風と洋風どちらが好きですか?”

は?メシの話か?イキナリだな。

詩乃姉は和食が一番上手いから、食べ慣れてるって意味でも和風か。


”巨乳と貧乳どちらが好きですか?”

…知るか! どーでもいいわそんなもん。


”…………”

…………。


”…………”

…………!



なんの意味があるのかわからない、ものすごい数の質問に答えて、もう辞めたくなってきた所でようやく終わりが見えた。


”この世界で、あなたのサポートをするキャラクターを作成してください”

…ランダムで。もうめんどくせぇ!!


適当にボタンを連打してたらようやく画面が切り替わった。



”お疲れ様でした。それでは……ガガッ……ピーー…の世界をお楽しみください”

…おい、聞き取れんかったぞ?なんやて?

そういや、本体の説明書は借り物だからと基本はパラパラと読んだけど、ゲームは全く気にせず本体に入れたな。

最近のゲームは説明書なんてないし、チュートリアルがあるって言ってたから気にしなかった。

せめてタイトルくらいちゃんと見とけばよかったか。


そんな事を考えていたら、視界が真っ白になって、あまりの眩しさに目をとじる。

なんでこういうロード画面って白にするんだ? 眩しいだけだろ!

目ぇイカれるわ! 黒にしろ黒に!




まるで現実かと思うような環境音にびっくりして目を開く。

風の流れで揺れる草の音、鳥の鳴き声。

風は肌を撫ぜる感覚まであるような?

遠くには川のせせらぎまで聞こえる。


オレが立っているのは森のそば。

目の前はなーんにもない草原。後ろは鬱蒼とした森。

起動時に見たゲーム画面よりずっとキレイだな…。


「お目覚めですか?」

突然話かけられて振り向くと…

「由乃姉!?」

「私の名前はユリノです」

サポートキャラか。 

ランダムだから知らねぇよ。というか、髪の色は赤色だから違うけど、なんでよりにもよって由乃姉に似てるんだよ!


「直ぐにチュートリアルを始められますか?」

「ん?そうだな…何もわからんし」

「了解いたしました」


「キャーーーーーー!!」

なんだ!?


「チュートリアルです。モンスターに襲われている馬車の乗員を助けてください」

イキナリだな!!

「”武器”とかは?」

そう呟いた瞬間、持ち物が一覧で見えた。


武器は…和弓と矢か。これしかないな。

「”装備”はどうするんだ?」

そうユリノに聞いた途端手に持ってた。


「便利かよ!」

「早くなさらないと間に合わなくなってしまうぞー」

「おい、口調どうなってんだよ」

「最適化中なんよ〜?」

そうかよ!!


取り敢えずこのサポートキャラは放置だ。

声のした方向は森の奥。何故か確信があったからそちらへ向かって走る。










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