情けなくて…
零くんの無事が確認できたから、一度お母さんたちに報告しようって話になってログアウト。
迎えに来てくれて嬉しかったって…零くんはそう言ってくれたらしい。直接聞きたかったよ…。
ログアウトしてからゲーム機の電源を切ったら、目の前が真っ暗になってびっくりしたけど、ヘッドセットをつけていたことを思い出して外した。
「おい! 零は!? 零はどーした!?」
すごい剣幕のお母さんが待ち構えてた…。
「私だけは会えました。女の子になってましたが元気でしたよ」
「女…? あぁ、ゲームの中ではそうなるとか言ってたやつか。それで? 零はいつ戻るんだ?」
「………あ」
「おい…詩乃、由乃、理乃!! お前らがついてて何してやがる!」
「そ、それが…うちらは姿も見えなくて。直接会話もできてないんだって!」
「あぁ? よし、お前らそこに並べ。そのドタマカチ割ったら、もうちっと利口になるだろうよ」
「ひいっ!! 待ってお母さん! 詳細! 詳細話すから!」
「そ、そうよ〜何もわからないままはいやでしょ…?」
お母さんならマジでやりかねねー…。
変に揉めたせいで、大切な話を全くしていなかった事に初めて気がついたうちらは確かにバカだ。
何してたんだようちら…。
見てきた事をお母さんに話していたら完全に朝になってた。
途中本当に何度か殴られたのは言うまでもない。
さすがに美緒へ手を出さないのはお母さんなりの理性なんだろうけど。
「戻ってきてたのか。零には会えたのかな?」
早朝からパン屋の仕込みをしていたお父さんも一度戻ってきた。
お母さんがうちら娘がいかに役に立たないかを愚痴ってる。
反論する材料がひとっつもないのは自分でも悲しくなるよ。
美緒は一度帰って休むと言っていた。
起きたらまたログインして、零くんに会いに行くといいやがったから、その時は連絡しろって言っておいた。
理乃へ連絡が来るからそれまではうちらも少し休む。
「何してるんだろうね私達…」
「ほんとね〜とりあえず無事だとわかっただけで安心してしまったわ〜」
「うん…」
「由乃姉どうしたの? 元気無いけど…」
当たり前だ…目の前にまで行って、この手で抱きしめたのに…また手放してしまったうちの気持ちがわかる?
「そうだわ…契約書、アレの書き方調べましょう〜基本くらいわからないかしら」
「内容は秘密なんじゃないの? あ、例文みたいなのって事だね?」
「そうよ〜役所とかでも見本あるじゃない」
「…調べる。多分それが零くんと会える一番の近道だよね」
うちらは休むことも忘れてスマホで検索した。
お母さんは怒ってたけど、店を蔑ろにはできないからってお父さんと仕事してる。
多分寝てないのに…。
うちらが役に立たなかったから。ごめん、お母さん…。
「あった! これじゃない? あの書類と同じだし」
理乃が見せてきたのは確かにうちらが記入したあの契約書だ。
焦ってたのもあってよく見てなかったけど、記入欄がしっかりある。
確かにあれでは破られても文句も言えないってうちらは落ち込んだ。
「はぁ…私達も少し落ち着かなきゃね」
「そうね〜お母さんに殴られても文句も言えないわよ…」
よく見て、何を書かなければいけないか確認する。
さして難しくもないのに何をやってたんだうちらは…。
冷静になるためにも少し休もうって理乃に言われて、落ち着かないけどなんとか仮眠だけはとった。
おかげで頭はスッキリしてる。
「ほら〜由乃も飲みなさい…」
「ありがとう」
詩乃姉の淹れてくれたコーヒーをのんで一息つく。
「美緒から連絡きたよ。どうする?」
「もちろん行く!」
「当たり前よね〜」
お母さんに見つかったら、絶対に今度は自分が行くって取り上げられそうだから、急いでまた零くんの部屋に行って準備。
……零くんがいない。
ベッドに転がったままのゲーム機を見てたら限界がきた。
「由乃…」
「うち…零くんに会いたいよ…抱きとめたんだよ? なのに…なのにうちは…」
「そうね〜もう一度捕まえにいきましょう? ね…?」
「由乃姉がそんなだと、私がもらっちゃうよ?零のこと。リアルでもね?」
「…上等だよ。渡さねーから!」
「はいはい。そういうセリフは私を倒してからにしてね〜?」
「「………」」
「とりあえず行こう!」
「そうだな。うん! 零くん待ってて!」
「あらあら〜」
ゲームを起動したら、昨日ゲームをやめた街の中だった。
「あっ、皆さん! すみません、私うっかりしてて…」
「ん? どうしたのミミ」
「フレンド登録をしておけばよかったなーと思いまして」
「それなに〜?」
「えっと、パーティーを組んだりもしやすくなりますし、ログインしてればわかったり、メッセージを送ることもできます」
「…なぁ、それ当然零くんとしたんだよな? してないとか言わないよな?」
「す、すみません!! 名前も知られてなかったショックで動転してて! その…してません」
「お前もかー!!」
「え? え?」
「いやー、僕達も色々抜けてて人のこと言えないからね。だからお母さんにあれだけ怒られたし」
「あ、あぁ…めちゃくちゃ怖かったです…」
殴られてないミミはマシだと思う。
顔だけは避けてくれてるのは有り難いけど…。
身構える猶予はくれるし。”歯ぁくいしばれ!!”って…。
ミミに教わりながらフレンド登録も済ませた。
マップで居場所もわかるし、メッセージも飛ばせた。
クッソ便利じゃん…これ、零くんとしたら…ふふっ。常に監視できる!
「これ、プライベート用に設定がありまして、ログイン状況や居場所を非表示にもできますから。後はブロック機能がありまして、迷惑な人とかからのメッセージを遮断できますし、キャラさえも非表示にできます」
「「「…………」」」
多分うちら全員同じ事考えてたな。
そして、零くんにブロックされるのを想像して落ち込んだ。
「待って、もしかして今ってブロックされてる状態ってこと?」
「私もそれは少し思ったのですが、そうだとしたら依頼とかも出来ませんし、私が契約した瞬間見えるようになった説明がつかないんですよ」
「確かに〜じゃあブロックされてるわけではないのね…安心したわ〜」
なんかホッとした。
「今日はネコカフェでバイトしているはずですから行きましょう!」




