すれ違いと特別
「レイアは女心をわからなさ過ぎます」
中身は男なんだから仕方ねぇだろう…
反論したら長引きそうだから言わねぇけど。
「ちゃんと謝りなさい! それでしっかりと話を聞きなさい」
「はい…」
「ごめんなさい」
「……何を謝ってるの?」
「最初に名前を聞かなかったことだな」
「それだけ…?」
「……ごめん、わかんねぇわ」
「…別れないから!」
何でだよ。そんな泣くほど怒ってるのに、一緒にいるのか?
「私の名前は?」
「ミミだろ?」
「それはゲームの!」
「あぁ、美緒さんな?」
「呼び捨てでいい」
「わかった…」
わかんねぇよほんと。めんどくせぇ…
「顔に出てますよ?もう一度ひっぱたきますか?」
「…勘弁してくれ」
はぁ…。
「あのな?オレは女が苦手だし、ずっと避けてきた。だから姉達以外との接し方が分かんねぇんだよ。何が間違ってて、何が正しいかさえわかんねぇ。だからまずはお互いの事を知ろうって言ったよな?」
「知ってるよ…不器用だもんね?」
「じゃあなんで…」
「零くんを選んだかって?」
「あぁ…」
「理屈じゃないの! パッと見て好きになることもあるし、長く接してみて好きになることもある。逆もあり得るけどね」
「接してみて嫌いになるとかか?」
「うん」
これはアレか、今回のアレコレで嫌いになったとそう言いたいんだな。
「じゃあなんで別れないんだ?」
「好きだからだよ!!」
「接してみて嫌いになったって言いたかったんじゃねぇのか?」
「はぁ…もう! たとえ話だよあれは!」
なるほどわからん。
それまで普通に会話していた美緒が、突然モゴモゴ言い出した。
「お、おい…どうした?」
「んんーーー! むーーーー!」
「なんだよ!?」
「あぁ、レイアちゃんには見えてないのね? お姉さん達が我慢の限界で、三人がかりでおさえつけてるわ」
あぁ…いわれたらそんな感じだわ。
めっちゃジタバタしてる。
だったらもう少しマトモな契約書出してくれよ…。あんな物にサインしたらどうなるか…。
特に由乃姉…。
それから何度も契約書が提示されるも、オレは見る間もなく、ユリノ姉に破かれた。
店長も、これは無理よ? って言うのだけど、一向に改善されないらしい。
何してんだようちの姉達は…。
オレなんかよりずっと頭いいはずだろ?
最終的に残ったのは、ミミから支払われた五百円と、迷惑かけたお詫びに、一日ネコカフェで無料で働くっていう契約書。
なんでオレが…。
「諦めなさい。写真の儲けはもらえるらしいので、せいぜい頑張りなさい、くまパン?」
「ログアウトさせろーー!」
「私はそろそろ一度ログアウトしなきゃ。お姉さん達に何か伝言ある?」
「んーそうだな。ゲームなんて興味なかったのに、来てくれて嬉しかったって伝えてくれ。会えなかったけどな…」
「わかったよ…私には?」
「ん?」
「私も会いに来たんだけど!」
「あぁ…ありがとな! これ大切に使うわ!」
「そっち!?」
「いや、ありがとうは来てくれたことに対してだぞ?」
「そ、そう。よかった…。後これだけは言っておくけど、別れないからね! ぜった…むーーーー!」
また姉達か…。そもそも付き合ってたつもりはなかったって言ったらまたユリノ姉にひっぱたかれそうだ。
「もう帰りますよレイア」
「そうだな。 またなーミミ」
「むーー!」
またなーとは言ったものの、また会える保証なんてない…それはさすがのオレでもわかる。
大体、オレはなんだ?生きてるのか死んでるのか…帰れるのか帰れないのか。
それすらわかんねぇ…。
ミミに聞ければよかったけど、オレがやらかしてたせいでそっちの話が全くできなかったしな。
「レイア…帰りたいのですか?」
宿への帰り道、ユリノ姉はポツリと呟いた。
「そりゃあなぁ…でも、こっちも悪くないよな」
「そうですよね」
「あぁ。やっと色々と慣れてきたし!」
「私は…私はどうなのですか?」
「ん? ユリノ姉はユリノ姉だろ?相棒じゃねぇのか?」
「はいっ!」
気がついたら自然とユリノ姉と手を繋いでた。
ユリノ姉も嬉しそうだしいいよな。
あれ…?
「なぁ、ユリノ姉って女だよな?」
「…殴られたいのですね?それともここで脱いで見せろとでも?」
「ちがっ! 最後まで聞けって!」
「いいでしょう。それで殴るか決めます」
「…いやな?オレ、姉以外とはまともに関わって来なかったくらい、女の人が苦手な筈なのに、ユリノ姉とは初対面からわりと普通に接してたし、今もこうやって手を繋いでても抵抗感がないっつーか…見た目が由乃姉に似てるからかとも思ったけど、性格は違うしさ」
「私は特別って事ですか?」
「かもな。さすが相棒だな!」
「ふふっ…ええ。そうですね!」
殴られずには済んだらしい。
自分でもよくわかんねぇけど、ユリノ姉はなにか特別なのかもな。
………………
「……浮気。零くんのばかぁ!」
「あははっ! 早速寝取られたのか?」
「ねとっ…!?別にまだそこまでの関係じゃ…」
「だよな?初彼女の座は奪われたけど、零くんの初めてはぜってーゆずらねーから!」
「お姉さんなんですよね…?」
「それが何か?」
「問題あるかしら〜?」
「無くはないけど…僕たちは特別っていうか…」
「リオさんもですか!? ならなんで…私に告白するのを許可したんですか!」
「あ、あの時は…なんとか踏ん切りをつけて諦めようとしてて…だってほら、姉と弟っでってのはやっぱり普通ではないから」
「そうですよ!」
「でもやっぱり諦められなくて! 気持ちに嘘はつけないから…」
「そうよね〜。可愛すぎる零くんがいけないのよ〜」
「あっ! 写真! 買ったやつ見せて!」
「…嫌です。お金払ったの私なんですから!」
「「「あ?」」」
「ひっ…だ、ダメです! 街中で対人バトル仕掛けたら、即BANされますからね!」
「なんだよそれ…」
「ゲームにログインできなくなりますよ?いいんですか?零くんと会えなくなりますよ?」
「「「…………」」」
「そうしたら私だけ会いに来ますけど。私は姿が見えますし!」
「…なぁ、契約書ってどうやって書いたらいいんだよ!?」
「内容は人に話したらダメなんですよ?」
「私達のは由乃のそっくりさんが全部破いてたって言ってたわね〜…」
「何がだめだったんだろ。僕はちゃんと書いたはず」
……………
「くしゅっ…」
「可愛いくしゃみですね」
「ゲームで風邪引いたりするのか?」
「ここはゲームではありません」
「いや、オレから言わせたらゲームだからな?」
「基準がわかりませんが…病気も怪我もしますよ。ですから気をつけてくださいね」
「あぁ…」
街並みもアイテムの拾い方一つとってもオレにはゲームにしか思えねぇんだけどなぁ。
まぁいっか! 姉達が入ってきてるのならオレもそのうち出入りできるやろ。




