初めての買い物と詐欺被害?
「レイアに似合いそうな服が沢山ありますよ?」
「………」
「そんなに嫌ですか?」
「ヤダ」
「可愛らしい見た目にあった服を着れるのは、レイアの特権ですのに…」
「オレはヤダ!」
「仕方ありませんね、お互いの妥協案を探しましょう」
なんで着るのはオレなのに、オレが妥協するのか、これがわからねぇ。
「いくつか見せますから、その中でコレならって服を選んでください」
「ここ限定かよ!」
「そこは譲れません」
まずそこを妥協しろよ。そう言えたらいいんだけど、さっきのアレをブンブン振り回してる姿を見た後ではとてもじゃないが言えねぇ…。
ユリノ姉は、フワッフワなのから順番に、だんだん落ち着いた服を並べていく。
「どうです?」
「もう一声!」
「…仕方ありませんね」
そう言って持ってきたのは、まるで学校のブレザー制服みたいな服だった。
「これが妥協できる最後です。これ以上駄々をこねるのなら私が選びますよ?」
ひでぇ…。知ってるか?それ脅迫って言うんだ。
こっちに選択肢をくれないのは由乃姉とそっくりだよホント。
いつだったか…突然部屋に来て、デートに行くから、映画かショッピングか選べって言われて。
選ばなかったら、ホテル一択になるって言われた事があった。
当然、断るなんて選択肢は初めからないし、ショッピングに付き合ったっけ。
あちこち見て回る由乃姉に振り回されて、どっちの服が似合う?とか…。一緒にクレープも食べたな。
楽しそうな由乃姉を見てるだけなら別に嫌じゃないからいいんだけどな。
「どうしますか?私が選びます?」
「それでいい! 今持ってるそれで!」
「そうですか。ではレイアも買い物をしてみましょう」
「ん?」
「いつも私に任せてばかりでしょう?そろそろ買い物にも慣れないと」
「あぁ、そうだよな。頼ってばかりですまん」
「いえ…それはいいのですが。欲しいものを自分で買うのも楽しいでしょう?」
そう思うのなら店も選ばせてくれよ…。
渋々ではあるが、レジカウンターへブレザーを持っていく。
「すみません、これ…」
「こわいよ…早く帰って…」
「え?」
どうしたんだこの店の人。
オレなにかしたか?
「何をしているのですか。接客しなさい!」
少し後ろで見守っていたユリノ姉から鋭い声が飛んだ。
「は、えっ…!? い、いつの間に…ごめんなさい。お客さんですか?」
「これ、欲しいんだけど」
「ありがとうございます。こちら戦闘用で値がはりますが大丈夫ですか?」
「そういえば値段見てなかったな」
「大丈夫ですよ。持ち金で買える範囲で選んでますから」
さすがユリノ姉。抜かりねぇわ。
「そういう事なのでこれお願いします」
「はーい。着ていかれますか?更衣室もありますよ」
「せっかくです。着替えてはどうですか?」
「バイトはいいのかよ…」
「充分でしょう。市場を散々ウロウロしましたからね」
「…あっ! その服!! もしかして貴女が噂の猫耳くまパン?」
頼むやめてくれ…それはオレのトラウマを抉る。
「ほら、崩れてないで会計を」
「お、おう…」
出掛けにユリノ姉に渡された、オレの稼ぎが入ってるという革袋から金を…金…出しにくいなチクショウ!
思わずカウンターにぶちまけてしまった。
「不合格です!」
「うるせぇよ! 中で金を掴んだら手が出せねぇんだから仕方ねぇだろ!」
何かの罠だろこれ…。ゴツい革だから引っ張っても伸びねぇのな?
「ふふっ…じゃあサービスです。これ使ってください」
店員の女の人がくれたのはファンシーな巾着。
…これをオレが使うの?
いや、折角の厚意を無下にするのはさすがにだめだよな…。
「ありがと」
「いえいえ、また来てくださいね。更衣室はあちらです」
レジカウンターの左奥ね。
「ユリノ姉、ちょっと行ってくる」
「ええ。手伝いましょうか?」
「いらんわ!」
全く…。
カウンターから離れて更衣室へ向かおうとしたら、突然何かにぶつかった反動でコケた。
「なんだよ…」
「どうしたのです?」
「いや、なんかここでぶつかったんだけどな?」
「何も見えませんよ」
「っかしいなぁ…確かになんか柔らかいものにぶつかったんだけどな」
ゲームのバグかなんかか?
「ちょ…ユリノ姉引っ張るなって!」
「何もしていませんが?」
「…えっと、お二人には見えてないのですか?」
なに!?やめろよそういうホラーみたいなの。
詩乃姉じゃないけど、見えないモノは一番怖いんだって。
詩乃姉も唯一おばけとかそういうのだけは苦手なんだよな。
理由を聞いたら見えないと殴り飛ばせないからって…。
確かにな?詩乃姉なら車でさえ拳で破壊するから。
考え事をしてる間も、体中触られてて気持ち悪いのなんの…。
おい、やめろ。そこはまだオレも怖くて触ってねぇんだぞ!
「え? はい…わかりました」
誰と話してるんだよこの店員!
「あの、詩乃、由乃、理乃、美緒って方がそこにいるんですが…」
「はぁぁぁぁ!? いや待って、美緒って誰や!」
「美緒って誰やって言ってますが…」
見えない何かと会話するんはやめてくれ。
「その美緒って方、泣きながら崩れ落ちましたけど…」
そうは言うても、知らんもんは知らんし…。
愉快なゆーれいだな。ちょっと怖くなくなったわ。
そもそもがだ。
「なんで姉達がいるんだよ」
「迎えに来たと言ってますが…」
意味がわからねぇ。ゲーム内にあの姉たちが?
ゲームに全く興味のない姉が?理乃姉なら、多少ゲームはしてた気がするけど、あくまでスマホでだし…。
あり得ねぇよな。
しかも見えないし。
あっ、これゲーム内詐欺だな!
「オレは見えるものしか信じねぇ!! 詐欺なんかに引っかからねぇから! ユリノ姉行こう!」
「ええ。なんだか気味が悪いです」
「待ってください! 私をこの人達の中においていかないでー!!」
同情を誘うのも詐欺の常套手段だから気をつけろって理乃姉に言われたからな!
何かにぶつかりながらもダッシュで店を飛び出したオレ達は、そのまま止まらずに走り続けた。
真っ直ぐ宿に戻るのも危ないとユリノ姉に言われて、例のカフェにバイト代を貰うついでに向かった。
「裏から入って、報告したら表へ出ますよ!」
「ああ!」
カフェの裏から店へ入ると、店長が丁度書類仕事をしてた。
「あら、会えたのね?良かったわ」
「今はそれどこじゃありません! バイト代をもらいに来ました!」
「あぁ。待ってね、用意してあるわ。 ハイこれよ。写真の売上もあるから」
「ありがとう。表から出てくけど許してくれ! ちとワケアリなんだ!」
これちょっと言ってみたかったセリフ。
「え、ええ…構わないけど。またバイトよろしくねー」
「はい。 それでは…」
店の表から通りへ飛び出そうとしたらまた何かにぶつかって、今度はすっごい力で押さえつけられた。
「ぐぇっ…死ぬっ…なんだこれ…ユリノ姉、逃げろ…」
「レイアを置いて逃げるわけ無いでしょう!」
こんな時くらい、オレのかっこいいセリフを聞いてくれてもいいと思うんだが?
そのままオレは締め上げられて気を失った。
遠くで、由乃姉が”零くん!”って呼ぶ声が聞こえた気がした…。




