つながれた
ユリノ姉の長ーいお説教の末、気を失ったオレは、気がついたら宿のベッドに寝てた。
何故かユリノ姉にガッチリホールドされて。
「う…うごけねぇー…前衛の力やべぇよ…」
「起きましたか?」
「あ、あぁ…とりあえず離してくれ。動けねぇんだわ」
「…嫌です! どれだけ心配したと…」
「それはホント悪かったよ。トラウマがな?フラッシュバックしてて、気がついたらダンジョンの中にいたんだよ…」
あの二人、マリとルリンだったっけ…? 強かったから良かったものの、一人だったら確実に詰んでた。
「説明は二人からも聞きましたが…もう絶対に一人にはしませんからね」
「お、おう…」
ようやく腕を緩めてくれたから、顔を洗ってトイレに…そう思って立ち上がった瞬間…
「ぐえっ…」
はっ…?
「なぁ…これ何?」
「首輪です」
「ユリノ姉の待ってるそれは?」
「鎖ですね」
「オレはイヌネコじゃねぇぞ!」
「ねこメイドですね」
「うっ…やめろ。それはオレに効く…」
「またはぐれたら困りますからね」
「外せよ」
「ダメです!」
「撫ぜてやるから!」
「…ダメ」
ちょっと今揺れたか?
結局どうしても外してくれなくて、自分で取ろうとしたらビリビリってなった…。
「無理に外そうとしたら痺れますよ」
「先に言えよ…痛くはねぇけどビックリするだろ!」
「それもつけたままですからね」
「んぁ?」
ユリノ姉はオレの頭を指差してる。
嫌な予感がして触ると、ふわっとした猫耳…
「うそだろお前! まさか!」
尻尾はやめよう? 頼むから…。
「ちゃんと反省してください」
「これをつける理由を説明しろよ…」
「トラウマを克服しないとまた同じことが起こりかねませんから」
「これそのものがトラウマなんだって!」
「だからです!」
どういうロジックやねん…。
いいや、装備欄から外してやる。
”権限がありません”
……なんでや…。
”権限がありません””権限がありません””権限がありません””権限がないっていってるでしょ!”
何度も外そうとしたらなんか怒られたんだが…。
「私も鬼ではありませんから、こちらを」
「なんだよこれ…」
「いわゆる見せパンと言うやつです。”見えてもパンツじゃないから恥ずかしくないんだからねっ!”って商品ですね」
「…ふざけてんのか?」
「くまパンがいいのでしたらそれで構いませんが…」
「いる! いるから!」
なんとか見せパンとやらを奪い取った。
着替える前にシャワー浴びたいから外してほしいって頼んだら、問題ないっていわれて。
なんで扉を鎖が通り抜けてんだよ!
確かに重さとかも感じないけどさ…そもそもオレは鎖には触れることもできねぇし…。
シャワーとかの邪魔にならないのはありがたいな。
…じゃねーよ! チクショウ…ユリノ姉め。
「今日は買い物をするために市場へ行きますからね。着替えは用意しておきますからそちらを着てください」
シャワールームの外からユリノ姉の声が響く。
「ギルドは行かなくていいのかよ」
「もうお昼ですし、たまにはお休みも必要でしょう。レイアは昨日、疲れて倒れたんですよ?」
「そうか…」
その優しさをこの鎖の方面にも向けてほしいんだけどな?
シャワーでさっぱりして着替えようとしたオレは、まだユリノ姉を舐めてたんだと思い知った。
「なんで…メイド服なんだよ…」
「バイトも兼ねてますから」
「休みじゃねぇのかよ」
「お休みですよ。その服を着てウロウロするだけでバイト代がもらえます。一石二鳥でしょう」
信じらんねぇことしやがるなホント。
もういい。諦めた。
細かい事をいちいち気にしないのがオレだったはずだ。
ただの服だしな?
しかもここはゲームの中だ。
気にしなきゃいいだけ…
「うぅ…」
「お可愛らしいですよ」
「うるせぇよ…」
「鎖は私達にしか見えませんから」
「ほんとか!?」
「えぇ、その可愛い鈴付きの首輪は見えますが」
まぁ、それなら…。 なんやて?
………。
ユリノ姉も引っ張ったりとか、酷いことは今の所してこないし諦めるか。
そう安心してたら、宿の一階で食事を出してる最中のシノンさんが駆け寄ってきた途端思いっきり引っ張られた。
「なんで避けるの〜!」
「げほっ…避けたわけでは…引っ張られて」
「うちのレイアに気安く触れないでください」
「…なんでよ〜。 レイアちゃんは今日も可愛いね〜。お仕事?」
「いえ、市場へ出かけるんです。今日、仕事は休みらしくて」
「へぇ〜いいね。気をつけてね?」
「はい」
和やかに会話してるように見えるだろ?
バッチバチやねん。ユリノ姉とシノンさんが目線だけで戦ってるんだわ。
殺気で肌がピリピリする…。
今日の昼食にも美味しい和食を出してもらって、落ち着くまもなくユリノ姉に引っ張られるように宿を後にした。
「また尻尾立ってますよ」
「仕方ねぇだろうが…ユリノ姉達の殺気にアテられたんだから」
「それは申し訳ありません」
絶対悪いと思ってねぇよな。
「それで?」
「まずは市場へ。そろそろレイアも新しい服が必要でしょう」
「そんな金あんのかよ」
「…レイアがこれで稼いだものには手を付けていませんから」
あぁ。カフェの写真…まだ持ってるのかよ。
「好きなものを買うといいですよ」
「いいのか!?」
やったぜ。動きやすいまともな服がほしい。
スカートはもうイヤだ。
宿からさほど歩くこともなく市場に到着。
市場は初めて来たけど、色々売ってんのな。
食材とかは見慣れたものだし、特に変わったものもないから目新しくもない。
唯一見慣れないのはモンスターとかの素材か。
後は、現実ではありえない武器防具の店がある。
「ここに少し寄りますね」
「あぁ。オレもみてみたい」
店内には所狭しと飾られた各種武器や、防具。
どれがなんて武器とかわかんねぇけど…。
「すっげー…これ本物か?」
ゲームに本物ってのもおかしな表現だろうけど。
持ってみた感じ重さもあって本物って感じるんだから仕方ない。
「なにか買うのか?」
「ええ。私は武器等が一切ありませんから」
「そうなのか?」
オレは弓とか持ってたけど…。
ユリノ姉は色々と吟味した結果、クソ重たそうな金属の棒を買った。トゲが大量についてるのはなんなんだよ。
それを片手でブンブン振り回してて、めちゃくちゃ怖ぇ…。
「レイアはいいのですか?」
「持ってるしなぁ。それに数回しか使ってねぇから、良し悪しもわかんねぇし」
「そうですね。今はまだあれで問題ないでしょう」
金を払って武具屋を出たオレたちは、いよいよ服を買いに行く!
「いいお店を店長から伺ってますからそこへ案内しますね」
「店長?」
「ええ」
誰だよ店長って。
しばらく歩いて到着した店を見て、店長が誰か予想ができた。
「ここで好きなものを買うといいです」
「店も選ばせてくれよ!!」
「ダメです。絶対に地味なズボンとか選ぶでしょう?」
「……嘘だと言ってよユリノ」
「現実です」
ゲームだけどな?




