ゲームと現実の狭間
港でシノ姉達を待っていたら、ミミがログイン。
うちらがキューブ内にいないからか、外へ出てきたミミに今わかっている事を教えておく。
「では、この国の法機関が動いてくれるということですか?」
「多分な。うちらが当てもなく探すよりマシだろ」
「そうですね、私もこちらの事は全くわかりませんし」
ゲームの世界から完全に出てしまっているのだから当然だよな。
「なぁ…ミミは本当に良かったのか?」
「何がですか?」
「好きなゲームで遊びたかっただけなのに、こんなことに巻き込んでるからな」
「…たしかに好きなゲームですけど、レイアちゃんがこうなった発端は私に責任がありますし、ゲームより、えっと、その…」
「ん?」
「レイアちゃんのが大切ですから!」
「そっか…じゃあ頼るからな?」
「はいっ! ユナさん変わりましたね…。初めは私の事嫌ってませんでしたか?」
「まぁな…。うちの大切な零くんを取られた! って冷静でいられなかったから」
「私はまだようやく友達、ですけどね」
「…うちも何が一番大切かやっと理解したから…かもな。 先ずは何よりレイアの安全、次が連れて帰る方法を探す事。それはうち一人でどうにかするのなんて無理だって実感したからな」
「そう、ですね…」
「だからミミも、無理しない範囲で力を貸してくれると嬉しい」
「もちろんです!」
迷いなくそう返事をしてくれるミミが、今のうちにとってどれだけ心強いか…。
ミミに学校での零くんの話を聞いていたら、シノ姉とユリノが戻ってきた。
何で仲良く手を繋いでるんだ?
迷うからだってのはわかるけど、目を疑った。
よくシノ姉が嫌がらなかったな…。
「お待たせしましたか?」
「いや、気にしなくていい。伝えたい事があるからキューブ内に行こう」
「わかりました」
「情報みつけたの〜?さすがよユナ〜」
ごめん、期待させて悪いけど情報を見つけるための下準備が出来ただけなんだ…。
キューブ内で、お互いに情報の交換。
相変わらずシノ姉は…。
分けてもらった金額が過去一で高額なのは何なんだよ!
「宝石が取り放題の様に出てきましたから」
「そっちはどうでもいいのよ〜! 明日はみんなでギルドに行きましょう〜?」
「それがいいだろうな。国が動いてくれたなら既に何か掴んでるかもしれねーから」
「一晩でですか!?」
「国が動くという事はそういう事ですよミミ」
そうだといいけどな…。
リオを開放するためのお金も出来たから、そっちも何とかしないと…。
うちは一度ログアウトして、お母さんに報告がてら家で休む。
そう思ってヘッドセットを外したら、零くんの部屋で揉めてるお母さんとお父さん、それに、知らないけどメディアでは見たことはある二人の女。
…例のお父さんの姉か。
「わからねぇのに勝手なことをして零達が戻れなくなったらどうするんだ!」
「これが唯一の手掛りなのだから調べるのは当然でしょう」
「私達だって細心の注意は払うわよぅ。零ちゃんの危険になるような事はしないわぁ」
「麻乃、ここはプロに任せよう?僕らじゃわからないんだから」
「それで零と詩乃に何かあったらどうするんだ!」
どうやら零くんと詩乃姉のゲーム機を調べようとしてるのをお母さんが止めてる真っ最中だったらしい。
こんな夜に家にいるってことは、本当にこの二人はうちに住み着いてるのか?
お母さんはお父さんに説得されて渋々引き下がり、ゲーム機はお父さんの姉二人がパソコンに繋いで何やら調べてる。
会社のトップなのに、現場仕事もこなせるのかよ…。
何者だよこの二人。
てっきりテレビで見たセレブ姉妹って感じのまんま、お飾り的なものかと思ってた。
でも、リオが言ってたか…会社そのものを立ち上げたのがこの二人だって。
単に親の会社を継いだとか、そんなんじゃないなら当然か。
「由乃、あれからどうなってる?」
「それを話そうと思って戻ったんだけど」
お母さんは例の二人から目を離す気はないらしく、零くんの部屋で報告をした。
「じゃあ理乃の方は目処が立ったんだな?」
「うん。そっちは大丈夫。レイアの方も明日には何かしら情報は手に入るかもしれない」
「わかったらすぐに教えてくれ…」
「もちろん。その時はすぐに…」
「…零ちゃんはアチラで元気にしてるの?」
「…今はわからない」
「どういうことなのぉ?一緒にいるのよねぇ?」
「…由乃、説明してやれ」
「わかった」
お母さんがいいなら…。
今の状況を二人にも話して聞かせた。
「それでエリアの開放をしろってしつこかったのね」
「零ちゃんのためだからとしか言わないんだものぉ…。一応エリアの開放は終わってるのよぉ」
「どういうこと?」
「ゲームとしての実装はされていないし、クエストやNPCの配置もしてないの。本当にマップとしてエリアを追加しただけ。だから正式に発表もしてないわ」
「それっていつ!?」
「話を聞いて直ぐに取り掛かったけど、完了したのはついさっきね」
二人から追加したエリアの情報を聞いたのだけど、大凡体感してきたそのまま…。
過酷な溶岩地帯に海…そして船でしか渡れない和風な島国。
NPCってのはプレイヤーじゃないキャラだろ?それらは居ないって事は、うちらが出会って話したのは向こうの世界の住人って事だよな?
もう意味がわかんねー…。
「停電した時に電源が落ちなかったのは間違いないのね?」
「あ、あぁ。両親も見てるから間違いないよ」
「真っ暗な中でも付いていたよ」
「理乃は呼び戻すまで普通にゲームしてたからな。だよな?由乃」
「うん。あっちでも何事もなかったって言ってたし」
パソコンを見ながら悩む二人。
「姉さん、何かわかった?」
「わからないのよ。今、本体のログを見ていたのだけど、零ちゃんのは起動後、一時間もしないでスリープ状態になってるわ」
「詩乃のは例の停電の時ねぇ…。電源がそこで一度落ちて、それ以降はスリープ状態よぉ」
「それって、バッテリーで?時計機能とかの維持をしてるっていう…」
「本体に内蔵されているバッテリーで維持できるのは厳密には時計だけではないの。ゲームそのものを一時的にスリープ状態、つまりゲームだけをオフライン状態にして、ヘッドセットを外してゲームから離れたり出来るのよ。その状態なら停電しても短時間ならゲームのデータを維持はできるわ。でも、本来は停電とかで突然落ちた場合に、勝手にスリープへ移行するような機能ではないの」
つまり二人は意図的にスリープ状態にしたわけでもないのに、そうなってると?
でも零くんのはゲームを始めて、短時間でゲームからは消えてたけど、停電までログインだけはしてたんだよな?美緒のアカウントで…。
どうなってる?
「おトイレとか来客、そんな緊急の時に態々ゲームを切ってたりしてたら時間がかかるし面倒でしょぉ?そういう時にプレイヤーが意図的に使える機能なの。アカウントのログインは維持したままだから、再プレイ迄も短時間で済むから便利なのよぉ」
「でも、二人のはアカウントをログアウトした状態でスリープになってる…。どういう事…?」
「オンラインからは完全に切れてるわねぇ…。停電のせいだとしてもおかしいわぁ…」
確かにトイレは…。でもそんな機能うちは知らなかったな。
というか、レイアと会ってからは向こうで普通に飲み食いして、トイレもお風呂も使ってるよな、うちら…。
だからってこっちで漏らしてたりもしてないし。
どうなってんだよ…!
「スリープ状態でも二人は向こうにちゃんといたけど?うちはオンラインにいるのに…」
「どうなってるのよぉ…」
「このスリープ機能って、ゲームじゃなくて元々本体側についてる機能なのよ。だからゲームによっては利用できないものもあるわ。このゲームはうちの出してるものだから当然対応してるけどね」
「サードパーティだとつけてないゲームが多いわねぇ…。手間だものぉ」
他にもこの本体で遊べるゲームがあることすらうちは知らねーけどな。
「零ちゃんの本体、そのボタンの反応が悪いわね…」
「位置的に落として壊したのかしらぁ」
左手で握るコントローラーの裏を確認しながらそんな話をしてる二人。
うちの本体も比較として一度調べると言われたから預ける。
しばらくログインできないけど、どうせ今夜はこっちに居るつもりだし構わない。
零くんを連れ戻す、その手助けになるのなら…。




