座敷牢
楽しそうに案内してくれる女王様は、そんな本人の雰囲気とは裏腹にどんどん暗いエリアへ。
やっぱりなんかついてったらやばいんじゃねぇか!?
ついにはゴッツい鉄製の檻の前に。
まさかオレも捕まるのか…。
「陛下!」
「楽にしておれ。我が居るのじゃからな」
「はっ!」
檻の鍵を開けた兵士らしき人はそのまま直立不動。
どこの侍だよ。恰好なんかまんま時代劇の役人。刀じゃなく十手もっててくれよそこは…。
知らんけど。
「レイア、ついてくるんじゃ」
「あ、あぁ…」
薄暗い通路はいかにも牢獄って感じで、どの牢にも捕まってる人がいるけど、映画やドラマで見るような冊をガシャガシャしたり、怒声をあげて絡んできたりもしない。
まぁ、女王様だもんなこの人。
下手なことしたら…。
うん、考えただけで恐ろしい。
「ここじゃ。 ん?一人増えとるのぅ…ここには誰もいれるなと言っておいたはずなんじゃが…」
部屋を覗くとたしかに二人。
「アリス! と、リオ姉…何してんの? え、なに?仲良くなったのか?」
「はぁ!?やめてよこんな脳筋と! アタシにはアリサしかいないって言ったわよね!?」
「レイア…良かった。本当に無事だったんだね。私の事もわかるんだね?」
「リオ姉の事はわかるけど、なんでリオ姉が牢屋にいるのかは全くわかんねぇよ?」
何がどうなったらこんな事になるんだよ…。
「なんじゃ、こやつは姉か?」
「あぁ。話した四人いる姉の一番下の姉だよ」
多分ユリノ姉はユナ姉くらいだろ?
詳しい年齢は知んねぇけど…。怖くて聞けるわけがない。
「ちと待っとれ」
「わかった」
女王様は入り口へ戻っていった。事情の確認に行ってくれたんやろうな。
「アリサ、無事で良かったわ。アイツらに何もされてない?」
「あぁ。何度頼んでも会わせてもらえなくてな。まぁ鈍かったオレも悪いんだけど…。遅くなってごめん」
「いいわよ。こうして来てくれたもの。好きよアリサ…」
「オレもアリスの事は好きだから大丈夫だ。それより、まずはちゃんとお礼を言わせてくれ」
「お礼?」
「助けてくれただろ?アリスの力が半減するほどの事をしてまで。だから…」
「そんな事はいいの。いいのよアリサ。貴女の為ならこの力全部だってあげるわ。でも、それをしたら守れないもの」
「これからはオレも強くなってアリスを守るからな!」
「ええ。頼りにしてるわ」
檻越しとはいえ、やっとアリスにお礼を言えた。長かったな…。
実際は記憶が戻って数日なんだけど、本当に長く感じた。
「ち、ちょっとまちなさいレイア! 何よその恋人みたいな会話は!」
「なにがだよ。命の恩人にお礼を言ったらダメなのか?」
「あぁ、アリサ…可愛いわアリサ」
アリスの目が虚ろになってるけど大丈夫か?
ここに居たから体調悪くしてるのか!?
リオ姉にいたっては”ちょっと目を離したスキに!?”とかブツブツ言ってるし…なんやこれ。
「レイア、すまぬが姉はしばらくこのままじゃのぅ」
「うちの姉は何したんだ?」
「うむ…不正乗船じゃ」
「こっそり密航したとかそういうやつ?」
「そのようなものじゃな。なに、罰金さえ払えばすぐに出してやれるが、手続きがあるからのぅ…」
「罰金って幾ら?」
手持ちで払えるのならオレが払えばすむだろ。
「レイア止めて!」
「リオ姉…?」
「お願いだから止めて!!」
何でだよ…。
「レイア、姉にも矜持があるんじゃろぅ。わかってやれ」
わかんねぇよ…。出れるならそれでいいじゃねぇか。
ほんとうちの姉はわかんねぇ…。
そのままアリスは釈放されて、二人で借りてる部屋に戻った。
リオ姉はあの後、目も合わせてくれず、話もしてくれなかったし…。
「アリサ、アリサ…」
アリスはずっとこんな調子で、オレにくっついて離れない。
「いくら釈放されたからって見せつけてくれるね? 少しくらい離れなよ」
「アリサ、アタシを見て?アタシだけを…」
「大丈夫か、アリス? まさか牢屋で体調悪くしたりしたのか?」
「そんな筈ないよ! うちは罪人だとしても人道的な対応しかしないんだから」
じゃあアリスはどうしたんだよ…。
「この国にいる間は枷はついたままだからね。出かける時は監視もつくから、何かやらかしたらすぐに牢へ逆戻りだよ! って聞けよコラ!」
ついには楓花まで言葉遣いが…。
つまり、今のアリスは仮釈放みたいなものか?そういうの詳しくないからわからんけど…。
「じゃあオレたちは早くこの国を出たほうがいいってことか?」
「だめ!」
「何でだよ…」
「何でもだよ! 離れなさいってば! アリス!」
「アリサ…ねぇ、そろそろ欲しいでしょ?」
「ん? …っ…くっ………」
「いい加減にしろー! め、目の前で…僕がいるのに、そんな…破廉恥な!」
あ…ヤバい。アリスの血…メチャクチャ美味い…。
「…ちょっと! レイアちゃんもそんな色気満点な顔しないでよ…やだぁもぅ…見せつけないでよぉ。アリス! 代わって!」
「ガキはすっこんでなさい。そんな真っ赤な顔して代われるのかしら?」
「アリスのバカァ!!」
楓花の怒鳴り声で我に返ったオレは、唐突に恥ずかしくなった。
何してた!?オレは今、何を…。
「照れちゃって…可愛いわぁ」
「や、やめ…」
「ふふっ…見られて興奮したのかしら」
「ちがっ!」
我に返って恥ずかしくなっただけで…。
その後、楓花は泣きながら部屋を出ていったし、満足げなアリスに離してもらえず…。
久しぶりのアリスの血のお陰なのか、ふわふわして気持ちがよく、気がついたら朝になってた。




