拘束中のリオ
ちょっとした好奇心だった。
だって船内にショップとかまであるような豪華客船、なんて言われたら気になるじゃん!
ユナ姉には止められてたけど、ちょっと見るだけ…。
そう思ってキューブを出て、あまりにも狭い部屋にガッカリしつつ、それならショップを見に行こうと部屋を出た途端取り囲まれた。
「不正乗船で拘束します」
「お金は払ったよ!」
「それ、貴女じゃありませんよね?大方、厩舎キューブかハウスキューブ…それらを使って入り込みましたね?」
なんでバレたの!?
「抵抗されますと立場が悪くなりますからお気をつけください。他の方にも追求が及ぶのは本意ではないでしょう?」
みんなの事もばれてるの?
「わかったよ。抵抗なんてしないから」
「賢明ですね」
手と足に嵌められた枷。
兵士に囲まれて連れて行かれたのは、高い金額を払った部屋より遥かに豪華な部屋。
「監視が付きますから部屋から出ようなどとはなさらないように。食事は運ばれますし、部屋の設備は自由に使っていただいてかまいません」
「わかったよ、ありがとう…」
丁寧だなぁ、私捕まったんだよね?
あまりの待遇の良さに混乱してしまう。
唯一実感するのは手枷や足枷だけど、それも重さも無ければ触れもしないから、視覚的な威圧感だけ。
部屋を一通り見てみると、トイレにお風呂とシャワー、フカフカのベッド。
窓からは真っ青な海と地平線がみえて、これぞ豪華客船って感じ。
運ばれた夕食も美味しい和食で、レイアが喜んだだろうと思えるクオリティー。
大満足でお風呂に入り、ベッドへ潜り込んだところでふっと我に返った。
どうしよう!?キューブに戻らなかったらみんな心配してるよね!?
「ヤバい…こんなのお母さんにバレたら…」
全身から血の気が引くのを感じて、ログアウトして説明というか、せめて言い訳を…と思ったのに、オプションすら開けず…。
これがユナ姉達の言ってたログアウトできないってやつ?
「これ、私本気で詰んだのでは…?」
レイアを迎えに行くはずだったのに、私は何をしてるのか。確実にお母さんにシメられる…。
…こんなだからレイアのキスマークがついてても私だけはログアウト出来たのかな…。
アレだって私が強引につけさせたようなものだし。
嫌われてはない…と思う。嫌がらずに付けてはくれたし。
でもその後私は何をしたっけ…。
嬉しくて、我慢できずに押し倒したね。
本当に私は何をしてるのよ! 反省しろって事かな…。
こんな事じゃレイアにもお母さんにも合わせる顔がない。
今回の事で迷惑をかけるユリノや姉達にも…。
ましてや後輩のミミにはなんて言えばいい?
はぁ…。
船旅の間に、一度だけ事情聴取のような物もあったけど、厳しくもなく…本当に事情を聞かれただけ…。
いっそ厳しいほうが良かったよ…。
その翌日、ユリノが面会に来てくれた。
「ご無事で安心しました。ようやく面会が許可されまして…。遅くなってすみませんでした」
「謝らないで。悪いのは私だから。本当にごめんなさい…」
「どうしたのです?らしくないですね…」
「私だって今回は本当に反省してるんだよ…」
「…不自由はしていませんか?」
「うん。見ての通りだよ。いい部屋でしょ? ただ、私はオプションとかさえ使えなくなった」
「それはおそらくその枷のせいではないでしょうか」
「だよね…」
「安心してください。必ずお金は用意して自由にしますから」
「…ありがとう」
優しくしないで…。今はその優しさが辛いよ。
ほんとごめん。
初日のようには食事も喉を通らず、私を捕まえた人に心配されたほど。
「食事はきちんと摂ってください。和桜の国へ到着次第、また聴取がありますから、体力がないと保ちませんよ?」
「…はい」
そうは言われても…。そんな気分にもなれないよ。
ユリノと会った次の日には港へ到着。
窓からの景色でそれがわかった。
ピンク色の花の咲く木は桜だろうか。
港に沢山植えられていてキレイだけど、気持ちがアガる訳もなく…。
夜になってから迎えに来た人に連れられて下船。
窓のない馬車に乗せられて、私はどこへ連れて行かれるのか。
しばらく走った馬車が止まると、降ろされたのはまるでお城の石垣みたいな塀の側。
「明日もう一度事情聴取がありますから、今日はお休みください」
「……」
石垣にある重厚な扉を抜け、長い長い地下道みたいな道を上り、連れて行かれたのはまるで時代劇で見るような座敷牢。
「一人先客がいますが、問題を起こさないように」
「はい…」
これ以上何かやらかしたりなんて…。
そう思ったのに!
入れられた座敷牢に布団を敷いて、こちらに背を向け横になってるのは私と同じくらいの年格好の女。
銀色の髪…。あの髪は見覚えがある。まさか…
振り返った顔を見てそれは確信に変わる。コイツだ!!
「…なんでアンタまで捕まってるのよ」
「吸血鬼…! お前がレイアを!!」
「此処で争うのは愚か者のすることよ? それくらいの分別も無いのかしら…これだから脳筋は嫌いよ」
言わせておけば…!!
でもここでトラブルを起こしたらみんなに迷惑がかかるだけ…。
だから必死に怒りを飲み込んだ。
「レイアは? 私のレイアはどこ?」
「…アンタのじゃないでしょ。あの子ならこの城で保護されてるわ。 記憶も戻ってるわよ」
記憶が!? それでお前は捕まったのか…。
ザマァないなと思ったけど、今は私も同じ立場だった。
「それで?なんでアンタは捕まったのよ?脳筋よろしく破壊活動でもしたのかしら?」
「……」
「言いたくないのならいいけどね」
「船に乗るお金がなくて…」
「はぁ? まさか密航したの!? やるじゃない。好きよ、そういうバカは」
「うるさい…」
バカだったのは自覚してるよ!
「あら、思ったより堪えてるの? だらしないわね、その程度でへこたれるなんて…。そんな事じゃアリサを守るなんて到底無理ね」
「………」
「張り合いないわね。シャワーならそっちにあるから使いなさい。魔法は使えないから不便よ」
座敷牢なのにシャワーが…?
吸血鬼が指差した奥へ行くと、確かにトイレとシャワー。
不衛生とは無縁なきれいなもので…。
この国は捕まえた罪人への対応が手厚すぎない?
逆に罪悪感がすごいんだけど…。
シャワーを浴びながら頭もクリアにしておく。
とりあえずレイアは無事なのはわかったから。
しかも吸血鬼が言うには記憶さえ戻ってるって。
「レイア…。良かった、良かったよぉ……」
安心して溢れたものをシャワーと一緒に流してしまわないと…。
ここには敵がいるのだから。
私がするべきなのは、早くこの事をみんなに伝える事…。
でもここに居ては…。
「…ごめん、みんな…」




