旅ドラゴン
ここからセーラ姉様の所まで海しかないのじゃな…。
翼を休める場所すらないが、妾なら問題はないのじゃ。それにフォーラは元々海のが得意エリアじゃし!
「ノーラ姉様、本当に大丈夫なの?船にこっそりのってもいいのよ?」
「大丈夫じゃ! 外に出るのが久しぶりとはいえ、最強のドラゴンのうちの一体じゃぞ妾は」
「そうだけど…。その四体の中でも最弱になってないといいわね」
「フォーラじゃろそれは! 生意気になりおって」
末っ子のくせに調子に乗るでないわ!
「だといいわね…。ここまでもあたしの速度について来れなかったのは誰かしら?」
「ま、まだ仮初の体に慣れておらんだけじゃ!」
しばらく会わんうちに可愛げまでなくしたのかフォーラは。
海を渡り始めて数時間。
だ、だめじゃ…しんどい…。
なんじゃこれは…。
「妾ならこんな海くらい余裕で越えられたはずじゃろ…?」
「…はぁ…。運動不足で身体は鈍って、それだけ丸々としていたら以前と同じ様にいくわけがないじゃない」
「うっ…お、落ちるのじゃぁ〜〜〜〜!」
「もう! 世話が焼けるわね!」
海に落下する…その直前で本来のサイズになったフォーラが受け止めてくれた。
た、助かったのじゃ…。妾はあまり水が得意では無いからな…。
「あたしの背中で少し休むといいわ。速度は落ちてしまうけどこのままセーラ姉様のところへ進むから」
本来のサイズになったフォーラは海を泳ぐ。その背に乗るというのもなかなか…。
「うむ、快適じゃな! 初めからこうすれば良かったではないか」
「…姉としてノーラ姉様がそれでいいのならいいけどね」
…それは、ちょっとまずいかもなのじゃ…。
フォーラの背は存外心地よく、名残惜しかったが、姉として譲れぬものもある故、再び空を行く。
「また落ちる前に言ってよ?休ませてあげるから」
「…大丈夫じゃ! あれは、そう。ちと油断しただけじゃからな!」
妾にもドラゴンとして、姉としての矜持があるのじゃ。
ーーーー
ーー
「最弱の称号はノーラ姉様に譲るわ」
「うぅ…屈辱なのじゃぁ!!」
海を渡りきるまで、何度もフォーラの世話になり、その度に虚勢を張ってはみたものの結果は…。
決めたのじゃ。妾は自身を鍛え直す!
こんな体たらくではレイアにバカにされてしまうのじゃ…。
「…随分かかったね…? その身体じゃ無理もない…?」
「セーラ姉様! お久しぶりです」
「…ひさしぶり? フォーラは変わってなくて偉いね…?」
「はいっ! 誰かとは違いますから」
それは妾のことか!?
「ノーラ…? だよね? 丸々コロコロと…鍛え直さなきゃかな…?」
「ひっ…」
セーラ姉様の訓練だけはもう嫌なのじゃ!
あの土地を任せられる時に、鍛えると言われて散々な目に合うたんじゃから…。
「セーラ姉様、そっちはとりあえずどうでもいいのよ。 レイアに何があったのか知ってますか?会いましたよね?」
「……うん…。少し長くなるから場所を変えようか…?」
こんなに辛そうなセーラ姉様なんていつぶりじゃろうか…。
ヴァンパイアとの決戦を前に、まだ幼かった妾とフォーラを結界の中に封じる時以来じゃろうか。
セーラ姉様に連れられて行ったのは、ピラミッド型のダンジョン。
その最奥にあるコアのある場所。
ここで何があったかを話してくれた。
その後、何があったかも…。
「じゃあレイアは記憶も何もかもなくしてヴァンパイアに攫われたの?」
「そう…。でも、私達が助かったのもそのヴァンパイアのおかげ…?」
「…レイアの姉は大丈夫なんじゃろうか…」
「魔王がはっぱかけてたから、立ち直った…?」
不可抗力とはいえ、まさかあの姉がレイアをな…。
耐えがたかったじゃろうに…。
「二人の無事だけでもまずは知れてほっとした…?」
「あたしたちも一瞬死んでたのかと思うとゾッとするわね」
「三人もの加護が意味をなさないとか予測不可能…?」
「あの姉達じゃからな…。さもありなんじゃろう」
体当たりだけで妾の鱗をかち割ったんじゃからな。
それにしても…またヴァンパイアとは。
「セーラ姉様はそのヴァンパイアどうするつもりですか?」
「あの子に悪意はない…。寂しかったんだと思うから…?」
「まさか見逃すのですか!?」
「落ち着くんじゃフォーラ。どちらにしてもレイアの姉達が向かったのなら妾達の出番は無いじゃろ。無事にレイアが戻ってきたらまた加護をやればいい」
「戻ってくるの!? せっかくあの子と友達になったのに…記憶だってなくしてるのよ?」
「大丈夫…。絶対あの子は帰ってくる。 多分、ヴァンパイアも一緒に…?」
「じゃろうな…レイアが間を取り持つじゃろ」
フォーラはまだ納得がいかないって感じじゃな。
まだまだお子ちゃまじゃの。
妾も地下で長く一人で過ごしてきて、そして出会ったレイアとの時間は僅かでも楽しかったのじゃから。
あやつはアホじゃが、相手の気持ちを汲み取れんような愚か者ではないのじゃ。
はよう戻ってこいレイア…。
また妾を笑わせてくれ。
そして悲しそうにしているセーラ姉様のことも…。




