豪華客船
ログインしたリオとミミに現状の説明。
落ち着いてるミミと違い、イライラを隠さないリオ。
「ユナ姉、それどういう事?船代がたりないなんて。ハラペーニャで結構稼いだじゃない。無駄遣いしたの?」
「してねーよ! 船が豪華客船しかねーから切符が高いんだって」
リオとミミの所持金を足して、全員のを合わせても三人がギリ。
「こうなったらリオさんの手で行きましょう」
「リオの?」
「なにか隠してるのなら出しなさい〜リオ〜?」
「な、なに!?別に隠してなんて…」
「溶岩地帯を抜ける時に言ってたアレですよ。ハウスキューブに入って乗ってしまおうって事です」
「あぁ!」
確かにそれなら一人分でいいな。
「それ、バレたら不味くないですか?」
「当然、密航扱いで良くて通常の倍以上の額を請求されるとかでしょうね」
「バレなきゃいいんだろー?」
「ええ。今は少しでも節約したいですし…」
だな…。この先またどこで金が必要になるかもわかんねーし。
渋るミミを説得し、ユリノの分だけチケットを購入。
うちらはハウスキューブで待機。
「乗ってしまえば出てもいいのよね〜?」
「恐らくは…。ただ、どんなセキュリティがあるかわかりませんから、部屋からは出ないほうが安全かと思います」
船内はちょっと気になるけど、今は優先すべきことがあるからな。
その辺は我慢するしかない。
うちらは早速キューブ内に入り、後はユリノ任せ。
「大丈夫かしら〜。何か悪いことをしてる気がして落ち着かないわ〜…」
「実際に悪いことしてますし…。ゲーム世界でしたらペナルティ課せられてたかもしれません」
「ここって居心地は悪くないし私は別にかまわないかな。船の方は気にしないわ」
気にしないと言いながらもソワソワと一番船を見たそうなリオは心配だな…。
船内にショップや娯楽施設もある本当の豪華客船だから。気持ちはわからなくもない。
「私はここに引きこもるわ〜。お料理でもしてる…」
「私も…。お手伝いさせてください」
シノ姉は料理してるほうが落ち着くのか、あれやこれやと作り出して、ミミはその手伝いをしてる。
「私ちょっと見てこようかな」
「リオ、止めろ。せめてユリノが一度戻ってきて状況を確認してからにしろって」
「はーい…」
大丈夫か本当に…。
しばらくしてハウスキューブへ入ってきたユリノから状況を聞く。
「一番安いチケットでしたから、部屋は船倉の一部みたいなものでかなり狭く、一人用のベッドと小さなサイドテーブルくらいしかありません」
「あんな高かったのにか?」
「ランクで分けられてますから。窓もなく外も見えません。ただ、部屋を出れば何処へでも行けました」
「そっちに制限はないんだな」
「ええ。ですが…食事一つとってもかなりの高額です」
「豪華客船ならそうよね〜。割増なのよきっと。食材も積める量に限りはあるでしょう〜?」
何処でもこういうのは割増になるよな。
山に登ればトイレは有料で、自販機の飲み物も高くなる。それと似たようなものだろ。
それだけコストがかかるから仕方ねーんだろうけど。
「やっぱりちょっと見てみたいわね」
「止めておいた方がよろしいかと。どこでボロが出るかわかりませんし」
「いいじゃん。少しだけ!」
うちも見たい気持ちはあるけど、今はリスクを犯したくない。
リオを説得したけど納得してないなあれは…。
船内で食事をするような金銭的余裕もないから、ユリノもハウスキューブ内でシノ姉の用意してくれた夕食を一緒に食べた。
仕度をしてくれたシノ姉とミミには休んでてもらい、ユリノと片付けをしていたら、慌てたミミが。
「リオ先輩がいません!」
「アイツ!」
「まさか外へ?」
「だろうな。ったく…。気が済んだら戻ってくるだろ。下手に何人も部屋を出入りする方が不味いだろうしほっとけ」
「そうですね。それに、私は船よりこちらのが落ち着きます」
ユリノはこっちで寝る気らしい。
「お先に〜。さっぱりしたわ〜」
「シノ姉、リオが戻ったら説教してやって」
「何したのよ〜あの子」
シャワーを浴びてたシノ姉に説明したら、自分も船に行ってみたかったのにってかなりご立腹。
「お仕置きが必要ね〜。抜け駆けなんて…」
「シノ姉も出るなよ?」
船で迷子になられたらかなわねーから。
それからいくら待っても戻ってこないリオ。
「アイツ、遊び回ってるのか?」
「もしくは…」
バレた!? いや、そんな簡単にバレるものか?
魔法じゃあるまいし。
……魔法あるよな?この世界。
「なぁユリノ。魔王城にあったようなセキュリティが船にもあったりとかは…」
「っ…!! 乗船する時にチケットと合わせて魔力チェックがありましたから、もしかしたら…!」
「その辺の知識はないの〜?」
「船会社のセキュリティに関するものですから、機密になっている様なものですと詳細までは…」
魔王城のもそういう対策があるだろうっていう予想だったもんな。
「確認してきます!」
「頼む」
キューブを出ていくユリノを見送る。
リオ…何してんだよ!
「リオ先輩大丈夫でしょうか…」
「あの子、ショップとか大好きなのよ〜。多分見たくて仕方なかったんだと思うわ〜」
だからってこのタイミングでやらかすか!?
………
……
「戻りました! 不味いことになりましたよ」
「聞きたくねーけど教えてくれ…」
なんとなく予想はつくけどな。
「リオさんは不正乗船で捕まりました。ハウスキューブから出ないのなら暗黙の了解で見逃されていたらしいのですが…」
そっちもバレてんのかよ!
いや、こんなアイテムがある世界なら当然か…。
乗船時にチケットと同期された魔力は、船全体と個人に当てがわれた部屋にもリンクされるらしく、登録されてない魔力の持ち主がいればすぐにバレるらしい。
「魔力って指紋みてーだな」
「その認識で間違いありません。一人一人魔力の質は違いますから。同じ魔力の質を持つものは数百万人に一人位の割合だといわれています」
この世界そんなに人口いるか?
「実質、同じ魔力の質を持つものは一人しかいないと思ってもらって構わないかと」
「だろうな…」
やってくれたな、リオ。
「結局、捕まったリオはどうなったのよ〜…?」
「和桜の国に到着するまで拘束されます。その後はあちらの法で裁かれることになるかと…」
「どうなるんだ?リオは…」
「罰金刑、払えなければ禁固刑。もしくは…」
「な、なんだよ?」
「強制労働に連れて行かれるかもしれません…」
「それ、うちらが払ってもいいんだよな?」
「ええ。ですが今は私達も手持ちがありませんし」
だな…。
「リオ先輩…」
「和桜の国に到着次第、ダンジョンへ行きましょう! 刑の確定と執行迄は数日の猶予が有るようですし」
「向こうにはダンジョンあるのか?」
「はい。なので罰金を払えるだけのお金をリオさんの刑が確定するまでに用意します」
ほんと、何やってんだよリオ…。これに懲りてくれたらいいけどな。
「ユリノはよく見逃されたな?」
「ハウスキューブそのものの持ち込みは罪ではありませんから。私達のように馬車や馬を持ち込むというのは普通にあるようですし。チケットを購入してないのにキューブからでて、乗船したリオさんが問題なだけです」
うちらは馬扱いで見逃されてるのかよ。
捕まったのがリオ一人だからまだ助かったと思うべきか…。
「ひどい目にあわされたりはしないわよね〜?」
「その心配はありません。和桜の国は法治国家ですし、無体な事をされたりはしません」
「そう〜…なら安心したわ。拷問とかされるのなら無理にでも助けに行こうかと思ったけど〜」
シノ姉は国に喧嘩売る気かよ!
でもいくらリオが悪いとはいえ、そんなことをされる可能性があるのなら、うちも黙ってはいられなかったな。
「ユナ、お母さんにリオがログアウト出来なくなったって伝えておくのよ〜?」
「…ログアウトして逃げたらダメか?」
「間違いなく悪化しかしませんよそれは」
「だよな…。言ってみただけだって」
またリオはお母さんからの説教も確定だな。
案の定、報告したらお母さんブチギレ。
「あのバカっ! 優先順位をどう考えてやがる…! まだ躾が足らなかったか」
ログアウトできるようになったらリオは…。
頑張れリオ。
うちらが助けてやれるのは和桜の国からだけだからな。




