熱い街
今日も変わらず溶岩地帯を進む。
どれくらい進んだのか、後どれだけこの溶岩地帯が続くのか…それさえ解らない。
レイアという目的がなければ心が折れてたんじゃないかと思う。
そう、今のうちは何にも負けない。
せめて、レイアに謝るまでは…。
昼間は基本的にうちとユリノで交代しながら進み、戦闘になったらシノ姉も呼ぶ。
夕方からはリオとミミが。
そんな過酷な移動を数日して、ようやく溶岩が少なくなってきた。
「この先に街があります! やっと溶岩地帯も抜けられましたよ」
何日も進み続けて、ようやく溶岩地帯を抜けたらしい。
「そうか…やっとか」
「もう二度とこの装備着たくないわ〜…」
「うちも…」
「ですね。動きづらい事この上ないですから」
戦うのにも慣れなくて、初めは苦労したし。
溶岩地帯を抜けた所でハウスキューブ内へ戻り、シャワーや着替えを済ませる。
もし街にレイアがいて、汗臭いまま出会ったら…なんて考えたくない。
時間的に、リオとミミもログインしてくるだろうから少し待つ。
「レイアちゃん、街にいるかしら〜…」
「どれくらい遅れてるかもわかんねーからな」
「和桜の国へは船が出ていますから、ここに居なければ港街のウオッカーから、それに乗って追う事になると思います」
「その港って酒で有名なのか?」
「…? いえ、新鮮な魚介類で有名な街ですよ」
ウオってそっちのウオかよ!
「ちなみにこの街はなんて名前なの〜?」
「スコヴィールです」
「なんで突然単位なのよ〜!」
「シノ姉、それどういう意味?」
「辛さを示す単位がスコヴィル値って言うの〜」
「そうなんだ…」
また実の名前とかで来るかと思ったら違ったからか。
「この街は激辛料理で有名です」
「なるほどな。程々ならまだしも激辛とかはいらねーな」
「そうですか?私は少し食べてみたいです」
ハラペーニョを丸かじりしてたユリノなら大丈夫かもな?しらねーけど。
リオとミミもログインしたから街へ。
「やたら露出の激しい格好をした獣人?でいいのかな?が多いわね」
「獣人族のが過酷な環境には強いですから。それでも暑いのは暑いんだと思います」
確かに溶岩地帯を抜けたとはいえ、真夏のような暑さ。
リアルの夏と違い、湿気がないだけマシだけど、肌の乾燥がヤバい。
「カサカサになりそうです…」
「ミミちゃん、水分補給は定期的にしなきゃだめよ〜」
「はい…」
うちも手持ちから飲み物を出して飲むも、潤う気がしない。
こんな場所にレイアが長く滞在するか?零くんって暑いのに弱かったから。
真夏に外出して、ぐったりして帰ってきた時はびっくりしたし。
「多分ここの街にはいないと思うわ」
「そうよね〜暑すぎて嫌がるわよ…」
「うちもそう思う。辛い料理も特別好きとかでも無かったしな」
「零くんって暑いの苦手なんですか?」
「あぁ。夏休みとかはよくグッタリしてたな」
「だね。パン屋の手伝いも夏は厨房に入るとフラフラしてたから、表で接客をするようにってお母さんに言われてたし」
そういえばそうだったな。
お父さん以上に若い女を集める客寄せになってて、イライラした覚えがある。
「でしたら早めにここも出立した方がいいかもしれませんね」
「だな。 ユリノ、港街へはどれくらいかかる?」
「馬車を出せば三日から四日って所でしょうか」
「曖昧ね〜?」
「未開の土地ですから…。道の整備がされていませんし」
「だったら走ったほうが早くねーか?」
うちらなら馬車より早いだろ。
「すみません、私はその速度について行けるか…」
「私達が運ぶし。それが嫌ならキューブの中にいたらいいよ」
「だな。戦闘とかになったら手を貸してくれたらいいし」
「…すみません」
落ち込むミミをリオが慰めてるから任せておく。
多少減った食料とかを買おうとしたけど、やたら辛いものが多い。
「果実でしたら大丈夫かと」
「本当だろうな?」
一度ハラペーニョでやられたからな。警戒はする。
山盛りで果実を売ってる店で、ネコ科っぽいおっちゃんに確認。
「これ、辛かったりしねーよな?」
見た目は真っ赤なんだけど…。
「ははっ! 甘酸っぱいから大丈夫だ。人族なんて珍しいな?辛いもので懲りたか?」
「あぁ…ハラペーニョでな」
「ハラペーニャか! あんなもん辛いうちに入んねぇだろ」
うっせ! うちには辛かったんだよ!
受け取った実は真っ赤でデコボコとしてて、あまり美味しそうには見えない。
「ユナ、それアセロラよ〜」
「ドリンクとかになってる?」
「そうそう〜。日持ちしないから生で食べられるなんて贅沢よ〜?」
そうなのか。シノ姉が言うなら間違いない。
いくつか購入し、そのまま齧る。
酸味が爽やかで美味しい…!
「ユナ姉、どうなの?」
「美味しい。食べてみ」
リオにも渡してやる。
「…ホントだ! もっと酸っぱいかと思ったわ」
たしかにそんなイメージだな。
「あ、あの! 赤い髪の女の子が来ませんでしたか?銀色の髪の女の人と一緒にいませんでしたか?」
「ん〜…何日か前に人族を見た気がするが…あまり覚えてねぇな。すまねぇな嬢ちゃん」
「いえ…ありがとうございます」
うちらもここまでの道中で買い物をしつつ、レイアとあの憎き吸血鬼を見てないか?って聞いてみたけど、知らないって言われるか、見かけたであろう人もだいたいこんな反応。
人族なんてほぼいない街なら目立ちそうなものなのに。
みんな、見た気がするかも?とかそんな返事。
どうなってんだ?
「ここまでくると、吸血鬼特有のナニかがあるのかもと疑うべきかもしれませんね」
「ナニかってなによ〜?」
「…そこまでは」
ユリノにも吸血鬼に関する知識はないから仕方ないよな。
食べられそうなフルーツとかを何種類か買い込んで、その日のうちに街を出発。
リオとミミがログアウトするタイミングでうちらもハウスキューブで休み、朝から港町へ向かって徒歩で移動。
翌日の夜にはウオッカーに到着。
「馬車だったら大変でしたね」
「だな、道なんてあって無い様なものだったし」
「流石に疲れたわ〜船の確認だけしたら休みましょ…」
「そうですね。乗れる船があれば乗ってしまって、船で休むのも有りです」
「船でもまた時間かかるのか?」
「ええ。嵐やらのトラブルがなくても七日ほどは…」
…遠いな。レイアがこんなに遠く感じたのは、うちらの世界から消えてしまった時以来か。
いや、今はうちらの記憶さえないから…余計に遠く感じるな。
「ユナさん、必ず見つけましょうレイアを!」
「ああ!」
「ほら、早く港へ行くわよ〜」
「道わかんねーんだから一人で行くなって!」
初めての街ではぐれたら目も当てられねーんだから。
スタスタと先を行くシノ姉を追いかける。
「私がご案内します」
「頼む」
おかしな方向へ行くシノ姉を捕まえて、ユリノの案内で港へ。
結論を言うと、船はあった。
和桜の国へ真っ直ぐに向かう船が。
ただ、どれも豪華客船って雰囲気の帆船で、船代が高い!
「手持ちでは乗れても二人ですね…」
「また稼がなきゃなの〜?」
「近くにダンジョンとかあるか?」
「ありません…手持ちのものを売るのも一つの手段ですが」
とは言ってもなぁ。要らないものはハラペーニャで売ったし…。
「どーすんだよ?」
「どうしましょうか?」
「早く追いかけたいのに〜!」
港で頭を抱えるうちら。
…取り敢えずリオとミミがログインするのを待つか。




