溶岩地帯を行く
いよいよ溶岩地帯へ踏み込む。
何があるかわからないし、とりあえずはうちとユリノで。
シノ姉はハウスキューブの中。理由なんて一つだよな。
こんなエリアではぐれたら悲惨だから。
全員が耐熱装備を着込むと、ほぼ会話ができない。
装備そのものが出すガシャンガシャンっていう音と、ヘルメット内部を酸素か何かが循環するようなシュコーシュコーっていう音で外の音が聞き取りにくい。
停止していればなんとか会話ができる程度。
なので、ユリノの提案で緊急時のハンドサインだけは決めてあるから、それに頼る。
ゲーム側ならチャットが使えたけど、すでにゲームエリアは出ているし、そもそもユリノと違う世界に行ってしまったシノ姉とは使えない。
装備の見た目や着心地は最悪だけど、暑さを感じずに歩けるのは助かるな。
すぐ近くを真っ赤な溶岩が流れていたり噴き出したりと、リアルなら絶対に近づけない距離にいるし。
前を歩くユリノから止まれの合図。
何かと思ったらドラゴン…?
「ファイアリザードです。迂回しますか?」
「避けられる戦闘なら避けたいけど、難しそうじゃねーか?」
前方、広範囲に転々といるから、ここを避けても違うやつにぶつかる。
「ですね…。殲滅します!」
新しい棍棒を構えて、真正面のファイアリザードに突っ込んでいくユリノ。
うちもお母さんからもらった新しい棍棒を構える。
出発する時に、全員お母さんというか、魔王城の倉庫から武器をもらってきた。
レイアに習って、持ち出しても平気な物から選んだ。
レイア…。
…落ち着いて、それでいて早くここを抜けよう。
必ず迎えに行くからね。
ファイアリザードは広範囲に散らばっていたから、数体ずつだけ相手にして進めばいい。
魔法も使ってみたけど、うちの氷の礫ではここの熱に負ける。
これは、新しい魔法をなんとか覚えないと…。もう二度と同じ間違いは犯さない。
戦いながら進むこと半日ほど。
途中から戦闘にシノ姉にも参加してもらった。
迷わないかと不安はあったけど、溶岩が流れてるおかげで歩けるエリアが限られてるから、迷いようがないのは助かった。
時々広い場所があるときだけ気をつけていればいい。
「そろそろ暗くなります。ハウスキューブ内で休みましょう」
「だな…汗もかいたし、シャワー浴びたい」
「リオとミミちゃんもそろそろログインしてるんじゃない〜?」
メニューから時計を見るとたしかにそんな時間。
ハウスキューブ内に入って、耐熱装備を抜いでたら二人がログインしてきた。
「お待たせー。少しは進んだ?」
「あぁ。結構な戦闘もしたから休憩」
「じゃあここからは私に任せて」
「わ、私も行きます!」
「大丈夫か?無理しなくていいぞミミ」
「私もレイアちゃんのお母様に鍛えてもらいましたから! ここで戦わないと意味がありません」
気合入ってるのはいいけど、心配だからリオにちゃんと見ておくように言っておく。
装備を着て外へ出ていく二人を見送り、うちらは交代でシャワーを浴びて、シノ姉は夕食の仕度。
「手伝うよ」
「ええ〜」
うちもゲームエリアを出たからか当然のようにお腹もすくし、睡魔もある。
食事の仕度が終わった時点で、リオ達をチャットで呼び戻して一緒に食事。
「そういえば、早速来たよ」
「なにが〜?」
「お父さんのお姉さん達」
いきなりかよ…。
「ゲームの確認はしてくれたのか?」
「それなんだけど…、お父さんにべッタリで、お母さんがブチギレてね」
想像したくねーなそれ…。
「お父さんが止めなかったら大喧嘩で大惨事になってたよあれ」
「会いたくないわ〜…」
「うちもだな。今日はログアウトするのやめよう」
「ズルっ! 私は明日も学校だからこっちにいられないのに!」
「夜は帰らねーのか?」
「泊まる気満々で、すごい荷物持ち込んでた…。店の倉庫にしてる一階の部屋を勝手に改装してたし」
めちゃくちゃだな…。それはお母さんもキレる。
「ただ…機材とかも持ち込んでたから、ゲームの調査をするつもりなのは間違いないと思う。何人かスタッフも連れてきてたし」
「仕事はしてくれてるのね〜…」
それ、やんなかったら何しに来てんだよって話だけどな。
そういえば…
「なぁ、リオ。零くんって学校でどういう扱いになってんだ?」
「病気で長期入院、面会謝絶って伝えたってお母さんが言ってたけど…」
「クラスではみんな心配してます…。零くん、隠れファンが多いですから」
初耳なんだけど? まぁ零くんなら当たり前なんだろうけど。
「それ詳しく教えて下さい!」
「零くんは可愛いから、男女共に人気なのもありますし…その…」
「なによぅ〜…ハッキリ言いなさい〜」
「上級生とかはペットにしたいとか、囲ってしまいたいとか…」
「それ私も聞いたことあるから、言ってたやつはシメたけど、まだいるの!?」
「そうですね…理乃先輩の耳に入らないところで噂はありますし」
「クラスと名前教えなさい」
「そこまでは私はわかりません! 上級生がそういう話をしてるって噂を聞いただけなので」
気持ちはわかるけど、どこの誰かわかんねー女にそんなことさせねーよ?
「理乃?」
「理乃〜…?」
「わかってるから! 見つけてシメとく」
キッチリな!
「理乃先輩、お願いですから加減してくださいね…?先輩まで停学とか退学なんて嫌ですから」
「わかってるよ。バレないようにヤるから」
理乃ならその辺抜かりはないだろうな。うちより要領はいいし。
食後もログアウトまでは進んでくれると言うリオとミミに任せて、うちらは休息。
明日はまた一日中、戦闘と移動だろうからな…。




