船と王女
「そんな警戒心の無さでは危ないよ?」
「ふえっ!?」
な、なに…?なんで私は知らない人に壁へ追いやられてるの!?
「怯えなくてもいいよ。何もしないから。心配だから少しからかっただけ」
実際、言葉通り何もされてない。
びっくりはしたけど…。
「そうだ、名乗ってなかったね。僕は和桜の国、第三王女の楓花だよ」
「アリサです。 って王女様!?」
「まさか、男だと思われてた?」
僕って言うし、服装も行動も男の子っぽい気がする。
でもそっちじゃなくて、王女!? 王女……。
「痛…っ……」
「座るといいよ。その頭痛は持病なの?」
「ううん。死にかけるくらいの怪我をしたらしくて…。覚えてないけど…」
「…そうか。よかったら医者を呼ぶけど…」
「その必要はないわ!!」
「アリス…?」
「アリサ!! こんな所で何浮気してるのよ!!」
「え…?ちがっ…」
浮気って何…?
「誤解があるようだから言っておくけど、迷子になって体調が悪そうだったからここへ案内しただけだよ」
「それを信じろと? いくら呼びかけても返事もないし、気配をたどるのにも苦労したのよ!?それをどう説明するのよ!」
アリス呼びかけてくれてたんだ…。聞こえなかったけど。
「それは僕がこの船にいるからだね」
「は? 何者よアンタ」
楓花さんは再度名乗った後に、説明してくれた。
「王女の僕がいるからね、妖力で保護されてるんだよ。君達の力もこの船の中では通用しないよ」
「それはどうかしらね…たかが五尾の妖狐が舐めないでくれる?」
今にも掴み掛かりそうなアリスに、楓花さんは両手を上げて争うつもりはないってアピール。
「おっと! 別に敵対するつもりもないし、危害を加える気もないよ。もしそうなら、とっくにアリサに手を出してたよ」
「なんですって!!」
もう意味がわからない…。情報を整理しないと。
えっと、つまりこの船は和桜の国の物で、今回はたまたま乗っていた王女を保護するために妖力が満ちてる?
でも、私達は部屋で訓練してたよね?
”部屋では結界を張ってたし、外へ出る時にも力を抑えてるのよ! なんか不穏な気配があったから余計なトラブルを避けるために警戒したの! こいつだったのね…アリサの間近にこいつがいたなら、抑えてる力では届かないはずよ…”
だから部屋から出なかったの…?
”ええ…。でもアリサも外へ出たいかと思って…その結果がこれよ! こいつに何されたの!?”
何もされてないよ! 警戒心がないのを叱られたけど…。
”当たり前よ! ホイホイ他人についてこんな個室へ入るなんて!”
ご、ごめんなさい…。個室ってそんな危ないんだ…。
楓花さんは、この個室を自由に使っていいと言い残して部屋を出ていった。
「全く…心配したわ」
「ごめん…アリスとはぐれてから探してたんだけど見つけられなくて。部屋もわからなくって…」
「本当に何もされてない?」
「うん」
はぁ〜っとため息をついたアリスは抱きしめてきた。
怒ってたんじゃないの…?
「心配だったからよ…。不穏な気配もあるし、まだ常識も怪しいアリサを一人にしてしまったって」
私は常識も怪しいの!?
「常識のある娘は二人きりでこんな個室に入らないわよ! バカッ」
バカって言われた…。
「…まぁおかげでアタシも自分の気持ちがハッキリわかったわ」
「え?」
「こっちの話よ。 もう不穏な気配の原因もわかったから気にしなくていいわ。買い物に行くわよ」
「うん…」
アリスに手を引かれて店の並ぶエリアへ。
「服に宝飾品、菓子類と何でもあるわ。何を見たい?」
「…わからないから順番に見たいかな」
「それもいいわね」
アリスと手を繋いで店を見て回る。
似合うからって服を何着かと、アクセサリーもいくつか。
一口サイズのケーキも受け取って部屋に戻ってきた。
帰りはまたはぐれないようにって手は離さずに…。
幸い、行きのように団体客とはすれ違わなかったから問題なかったけど、前からくる人をアリスが睨んでるのか、怯えながら避けてくれた。
なんかごめんなさい…。
「アリサが謝らなくていいのよ。船が狭いのが悪いんだから!」
まさかの船へのダメ出し!
「アタシの優先順位はアリサが一番だからよ」
「ありがとう…」
記憶があやふやだから、どうしてそこまで想ってもらえてるのかわからない。
感謝してるのは私の方なのに。
だってアリスは命の恩人だもん。今度は私がアリスを守る。
その為にも強くならなきゃ…。
「………」
「アリス…?」
なんで急に抱きしめてきたの?びっくりした…。
「アリサはアタシを守ってくれたわ。それで酷い怪我をしたの」
「そうだったんだ。 守れてよかった」
「ええ。だからこれからはアタシがアリサを守るから」
「私だって!」
「ふふっ。じゃあ和桜の国につくまで訓練頑張りましょうね?」
「うん!」
船旅の間、アリスの訓練を受けたり、買い物に行ったりと充実してた。
おかげで私達の部屋の場所も覚えたし…。
「よく言うわよ! また迷子になって、あのムカつく王女に捕まってたくせに! 何度目よ!」
「ご、ごめんなさい…」
「次、迷子になるようなら繋ぐわよ?」
「繋ぐ…?」
「首輪と鎖でね」
首輪…?鎖…?
「うっ…」
「…あぁもう! 冗談よ! (本当に何されてるのこの子!?)」
「う、うん…」
「アタシはそんなひどい事しないわ。ね?」
「ありがとうアリス…」
「大切なんだから当たり前よ。ほら、明日には和桜の国につくから荷物とか仕舞っておきなさい」
「はーい」
船旅の間に随分荷物が増えたからね。
何故かお店で商品を見ていると、知らない人がお金を払ってくれたり、サービスだからって貰ったりと物が増えてしまった。
あまり認識されない筈なのになんでだろう?
「アリサが可愛いからよ?」
「そうなのかな…」
「でも! あまりアタシ以外の人に可愛さを振りまくのはダメよ?」
そんな事をしてるつもりは…。




