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異世界に弟を奪われた姉達の奮闘記 〜なお弟はTSしても異世界を気ままに満喫中〜  作者: 狐のボタン


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獣人



馬車の移動中、シノ姉にすがりついて泣くだけ泣いて全部吐き出した。

うちはもう泣かない。レイアを取り戻すまでは!

「ユナ、大丈夫〜…?」

「うん、ごめん…シノ姉も辛いのに…」

「いいのよ〜これでも私はみんなのお姉ちゃんなのよ〜?」

本当にそのとおりだよ…。敵わないね。


魔の国との境目、セーラの背中から、大陸へ入る。

今回は吸血鬼の城があった山脈沿いに東へ移動してきた。

「ここからは私はついていけない…?気をつけて。レイアを連れて帰ってきて…?」

「はい。ありがとうございます」

「セーラ、本当にごめん…必ずノーラとフォーラにも会いに行くから」

「うん…貴女達も無事でね…?」

「行ってくるわ〜…」


見送ってくれたセーラと別れて、いよいよ魔の国を出る。

どこからゲームの世界じゃなくなるのか、うちらには境目がわからないけど…止まるわけにはいかない。


馬車をユリノに任せっきりなのもアレだから、うちは御者席に移動。

移動中でも、扉からすぐに出られるのは楽だけど、これは馬車ってより寝台列車とでも言った方がいいのかも。

それくらい中も広いし、設備も充実している。


「大丈夫か?」

「ええ。これくらいなら…。それに、何かに集中していないと耐えられなくなりそうですし…」

「そうか…。えっと…馬車の動かし方を教えてもらえないかな?」

「どうしたのです?気持ち悪い…」

「おい、言い方ってあるだろ! こっちだってらしくねー事してるのはわかってんだよ!」

「ふふっ、いいですよ。厳しくいきますからね」

「ふつーでいいから!」

ったく…。歩み寄ろうとしたらこれか。



でも、セリフとは裏腹に、ユリノは丁寧に教えてくれた。

「無理に手綱を引いたりせずに、基本は任せてください。この子達は自身の目で見て、判断できますから」

「生き物だもんな」

うちの知ってる車とかとは違う…。

「ええ、手綱を振るうのは速度を上げるとか、止まる、進路を変えて曲がる、後は緊急時くらいでしょうか。手綱を握る側もリラックスしている方がよろしいかと。緊張は伝わってしまいますから」

「なるほどなー」

走り出してしまえば、基本は持ってるだけで、任せておけばいいのか。


「ちょうど緊急時です! 手綱を引いて止めてください!」

何だ!?

ユリノも手を貸してくれたから、手綱を引いて馬車を止めた。


道には大きな木が倒れて道を塞いでる。

「戦闘準備を!」

「ああ!」 

なんとなく予想はついた。


馬車内のシノ姉にも合図を送る。




「命が惜しかったら抵抗するんじゃないよ」

「なんだよ、女ばっかりじゃないか…チッ…」

道沿いの低木や倒れた丸太の陰から出てきたのは、女ばかり十数人。


なんなの?海賊といい、この山賊みたいなのといい、女ばっかりなのはなんなんだよ。

貞操観念とかが逆転してるとか言わねーよな?

「そちらはどうか知りませんが、こちらの世界は男女比率が女性に大きく偏っているんです。圧倒的に男性不足で、その男性も大きな街に集中します。ですから、地方ではあぶれた女性がああなります」

「行き遅れかよ!! 切実すぎるっ!」


「うるせぇよ!? お前らだって女だけだろ! まさか馬車に囲ってるのか?」

「金持ってそうだし、あり得ますね、お頭どうします?」

「確認しろ」


お頭ね…。何時だったか国境付近で出会ったブタみたいなモンスターそっくりじゃねぇか。

「獣人ですから…」

「違いはどこだよ!?」

「知性があって会話が成り立つかどうか。でしょうか…」

「会話成り立ってるか?」

「一応は…」

うちらがヒソヒソやってる間に、馬車の扉を開けに行った数人が吹き飛んでいった。

シノ姉、容赦ねーな…。


「私達も行きます」

「だな…」


その後はもう言うまでもなく、一方的な蹂躙。

当然うちらが。



「「「すみませんでした…」」」

「こいつらどうする?」

「連行する為に戻るのも時間の無駄ですし、ここで始末しましょう」

「ひっ!! 命だけは! お願いします…家族がいるんです!」

「それで許されたら世話ねーよ。家族がいるなら何でこんなことしてんだよ」

「そ、それは…」


あまりにも命乞いするから已む無く話を聞いた。


全員が近くの集落から来たらしく、深刻な男不足のために集落の存続を憂い、最終手段として凶行に及んだらしい。

既に集落に男は老人と、一人の小さな男の子しかいないと。

小さな子に手を出せるはずもなく、みんなから大切に可愛がられてるんだとか…。

その子にもう会えなくなるのはヤダって泣かれるとなぁ…。


「どうします?」

「初犯らしいしなぁ…」 

「武器、防具だけ没収して、放りだせばいいんじゃない〜?」

「落としどころとしてはその辺りでしょうか」

プレイヤーならステータスカードを取りあげればログアウトされるから楽だけど、どうやらこいつらはレイア達のいる世界の住人らしいからな。

こっちも無闇に命を奪うような事はしたくない。


「聞きましたね?武器防具全て置いて行きなさい。それで今回は見逃します。二度目はありませんよ!」

「「「「ありがとうございます!!」」」」

身ぐるみ剥ぐような状態で、もうどっちが悪者かわかんねーけど、半裸になった女達は逃げていった。


道を塞いでた丸太はシノ姉が新しく手に入れたハンマーで叩き砕いた。

相変わらずすっごい破壊力…。

うちより小さな身体で何処にあんな膂力があるんだと不思議になる。



それ以降はトラブルもなく、魔の国を出発してニ日目の夕方、丁度リオとミミがログインして来る時間帯には、馬車が小さな村に到着した。

「ここが例の?」

「ハラペーニャです。もう少し進めば直ぐに溶岩地帯です」

そうそれ…。

ニャってつくから予想はしてたけど、真っ赤な体毛のネコが二足歩行でウロウロしてる。


レイアと吸血鬼を見てないか猫たちに聞いてみたけど、ここしばらく人族は見てないって返答で統一されていた。

ここには寄らなかったのか?

追われてる自覚があるならそれもあり得るか…。

仕方ない、うちらはどうせここで一度足止めだからな。


それにしても…

「ここの猫は獣人でいいのか?」

「ええ。獣人にも数種族いまして、耳や尻尾など以外は人と変わらない種、彼らのようなほぼ獣の姿で二足歩行もする種、後は…」

「昨日の賊みたいなのか」

「ええ。顔や手足は獣の特徴が大きく体毛もありますが、生活様式は人と変わらない種ですね」

色々といるんだな。後はエルフとかもいるんだっけか…。

確かレイアはハーフエルフだった筈。


というか、こんな世界でレイアが零くんとして男のまま来てたらと思うと恐ろしくなるな。

「奪い合いで大きな争いになりかねませんね、それ…」

だからさぁ…心読むなよ!

「レイアのはわからなくなりましたが、ユナさんのはよくわかりますから。思考パターンやツッコミなどよく似てるんです、レイアに…」

「そうなのか…」

素直に喜んでいいものか悩むな。それで考えがユリノに駄々洩れなのだから。


うちらはハラペーニャの村、唯一の宿に部屋を取り、ダンジョンに潜る準備を始めた。

ここで足止めを食らうけど、仕方ない…。

溶岩地帯へ少し近づいただけで、熱気により呼吸もままならなかったから。

とてもじゃないけど強行突破とか不可能。


「ここ迄来れたって事は、私達はすでにゲーム世界を飛び出したって事でしょうか?」

「ミミ、これ食べてみてください」

「ユリノさん? は、はい…」

ミミはユリノから受け取ったモノを口に入れた。


「辛しょっぱいっ!! なにこれぇ…」

「保存食です。先程ハラペーニャの市場で買いました。味がわかるという事はゲーム世界から出てますね」

「うちも何かもらっていい?」

「ええ、確認してください」

ユリノから受け取ったのはピーマンのような野菜。

なんでうちは生野菜なんだよ! まぁいいか…。


そのまま齧る。

「辛っ!!!! ユリノお前これ…!」

「ハラペーニャの特産品らしいですよ?」

「ハラペーニョじゃねぇか!!」

「いえ、ハラペーニャです」

うるせーよ!! くっそ…口の中がヒリヒリする…。

覚えてろよ、ぜってー仕返ししてやる!


「特産品だからと差し上げたのに、酷いですね」

「わざとじゃねーのかよ!」

「…ユリノって世界の知識があるなら、それがどんなものかくらい知ってたはずだよね?」

そうだよ! リオの言うとおりじゃねーか! 確信犯だろ!


「私の知識では特産品として有名で、熱烈な愛好家がいるという事くらいです」

もう何処まで信じていいかわかんねー…。

とりあえず手持ちの水を飲んだけど口内がヒリヒリして…。


「ユリノ、とりあえずお前も食え。それで水に流してやるから」

「わかりました」

何食わぬ顔でシャクシャクと…一個食切りやがった!?


「辛味が癖になりますねこれ…。肉料理と合いそうです」

「そうね〜ハンバーグとかにソースとして使ったり、ピザのトッピングにしたりと使い道も多いわよ〜」

「食べてみたいですね」

こいつ…辛さに耐性でも持ってんのかよ! 


「ユナはこれ飲みなさい。マシになるはずよ〜。気をつけないと腹痛にもなるから〜辛いものは要注意よ〜?」

好きで食ったわけじゃねーから。

コップでシノ姉が渡してくれたのは牛乳。

飲むと確かにヒリヒリも落ち着いた。酷い目にあったな…。

レイアに言いつけてやる…。ユリノに酷いことされたって!

「水に流すと言ったのにそれは反則では!?」

知るかっ!






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