ビジネスにおいて欲というのは重要なファクターです。それは創作活動でも一緒ではないでしょうか?
今回はビジネスでよく使われる人の「欲」についてのお話をしてみたいと思います。
「欲」つまり「欲求」とは一体なんでしょうか?
欲求とは人間や動物が行動を起こすための「動機づけ」という抽象的な概念の事になります。人間は何かしらの不足を満たすと、その時に「気持ち良い・心地よい」と感じます。ただ、何もしないで満たすことはできないので、行動を起こす必要があります。行動を起こすための理由を「動機づけ」と呼んでいます。
この「動機」なのですが、面白いことに2つに分かれます。
・願望・欲望(気持ち的な欲求に対する動機)
・目標・目的(具体的な欲求に対する動機)
前者は「お腹すいたー」という気持ちで、後者は「お寿司を食べたい」という気持ちとなります。ここで、「お寿司を食べたい」というのは、前者の願望なのではという指摘をされるかもしれませんが、前者はもう少し原始的になります。前者は「自分の状態を一定に保ち続けよう」とすることから湧き上がる気持ちを示します。「お腹すいたー」の例では、「血糖値が下がっているので元の状態に戻す必要がある」⇒「エネルギーの補充が必要」⇒「食事をしてお腹を満たしたいと感じる」という形です。
そして、面白いと言っているのは後者です。後者は「知識や経験から生まれる」という性質があり、更に知識や経験から新たな欲求が引き起こされる場合があるという性質を持っています。単に「お腹すいたー」であれば、食物を摂取すれば満たされます。しかしながら、お腹がある程度満たされていてもデザートを食べるという人は多いかと思います。これは例えば、ケーキという存在をしっていなければケーキを食べたいという気持ちは起きないはずです。そして、この行為はエネルギー補充の目的を達しているにも関わらず、追加のエネルギーを摂取するという事をしてしまいます。
ビジネスの話に戻します。ビジネスの基本原理は「対価の提供」です。人は提供された「物やサービス」に対して対価を提供します。多くの人が強い欲求を抱いている分野ほど大きな市場となり、逆に誰も欲求を抱いていない分野は市場として成立しなくなるという性質を持っています。分かり易い例を言えば、携帯電話からスマートフォンへの移行ではないでしょうか? このように欲求とビジネスは密接な関係を持っています。
さらにビジネスの世界では対価だけでなく、モラール(組織体の士気や風紀)の醸成という意味でも欲求が使われます。そもそも欲求が「動機」なので、それを英語にしたモチベーションがビジネスに関わりが深いのは当たり前ですね。皆さんよく言いますね「モチベーション下がったわ」……つまり、やる気がなくなったという意味です。ビジネスは人が支えておりますので、人の生産性が下がると困ります。やる気で左右される可能性がある以上、動機付けはビジネスの世界では重要でありマネージャークラスは、この手の教育を受けます。逆にいうとロボットやAIには動機付けや疲労に対するケアの必要性はありませんので、自動化という言葉のもと置き換えられる仕事が増えてくると考えます。
この「欲求」という話について、最も有名なものに「マズローの欲求段階説」というものがあります。アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したものです。詳しい話はWebを調べると沢山出てきますので、興味がある方は読んでみるのが良いと思います。
簡単にマズローの欲求段階説を説明します。
1.生理的欲求(生命維持のために必要不可欠な欲求)
2.安全欲求(不安を取り除きたいという欲求)
3.社会的欲求(どこかに所属して関係を持ちたい、誰かに愛されたいという欲求)
4.承認欲求(認められたい、評価されたいという欲求)
5.自己実現欲求(自身が望む自分になりたいという欲求)
※下に行くほど上位概念の欲求になると言われています。
基本的に人間は上から順番に欲求を発生させるというもので、それを満たす事で人は満足するというものになります。ただし、上位の欲求を諦めることで下位の欲求が発生する場合もあるらしく、上から順番どおりに欲求が生まれるわけではないとされています。
なろうに置き換えて考えてみましょう。社会人として別の生活を送っている状況で、それにある程度満足しているとします。しかし、昔から小説を書いてみたいと考えていたとします。つまり「自己実現欲求」が発生している状況で、自身で小説のブログを立ち上げるとします。ただ、自身が書いた小説の反響が詳しくわからず、評価されたいという状況が発生したとすると「承認欲求」が生まれた事となります。ところが色々と調べていると「小説家になろう」というサイトがあり、ここで初めて感想をもらえる事が分かったとします。そして、なろうに登録するという「社会的欲求」を満たすことで安心する……たしかに上から順番に欲求が生まれるわけではないですね。
実はマズローは晩年に5段階目である自己実現欲求の上位概念としてもう1つの欲求があると発表しています。それは「自己超越」です。自己超越は「みんなでより良くなりたい」と願う欲望と言われており、自己超越にまでたどり着いた人は「フロー体験(至高体験)」をすると言われています。
ビジネスでも原動力となるのは「やる気」です。先ほどモチベーションの話をしましたが、「承認欲求」と「自己実現欲求」はとても重要な要素になります。特にビジネスにおいて人を動かす立場である人は、この承認欲求を上手く使いながら、ポジションを上げるなどをしてモチベーションを管理します。では、なろうではどうでしょうか? 自己実現欲求で書き始めてはいるとは思いますが、仕組みとして存在しますので、PVや評価などの承認欲求もモチベーションになるのは自然の流れなのかと感じます。
さて、ここまで書いてくると、なろうは読むのは無料のサイトでありますし、そもそもの「ビジネスをヒントに」という本エッセイのテーマ自体に無理があるのではと考えられる方がいらっしゃるのではないかと思います。では、本当に無料サイトの「なろう」でビジネスの話は通じないでしょうか? 私はビジネスの基本原理は「対価の提供」と書きました。
無料といっても、読み手様は人にとって最も貴重な資源である「時間」を対価として書き手様に支払っている事に気付く必要があると私は考えています。
時間を使って頂けている事はとても重要な事です。読み手様が時間という対価を支払う事で、欲求を満たす作品を読んでいると考えてみてください。そう考えると、要求を満たす作品を見つけるために、なろうでは分野別の検索を使ったり、ランキングによって人気作品が見つけているのではと考えれます。
さらに、そのように考えると「エタる(創作中のものが永遠の未完(=完結しない)で終わる)」という行為は、欲求を満たせることができないことになります。要求を満たせない事を自身に当て嵌めてみてください。せっかく買った家電やゲームが満足しなかった場合はどう感じますでしょうか? 私ならその会社(製造元)の製品を買う事はしばらく見送ります。ただ、10種類買って3種類が大満足であれば、その会社の製品は買うかもしれません。
結局のところ評価される作品というのは、読み手様の要求を何かしら満たすということになるかと考えれるのではないでしょうか?
底辺から脱出できないと言われる方の呟きを時々お見受けしますが、読み手様の要求を満たす意見を書くよりは、自分の作品が認められないと単に嘆いている場合が多いように感じます。つまり、ランキングが上位である作品は上位である理由があるのではないかと考える事が重要という事です。
最後に欲というのは小説の題材としての基本だと考えます。転生者の貧乏からの脱出や悪役令嬢の殺されないための生への執着など、全て欲ではないでしょうか?
自身の欲についての考察を巡らせる時に、欲望についての作品のヒントを生み出すというのも面白いのではないかと感じています。
いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだPTを獲得するのにやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております。