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創作を新規事業のキャズム理論になぞらえて考察してみました

 ビジネスの世界では「新規事業」という言葉があります。新規事業とは文字通り今まで実施してきた事業とは異なる事業を展開するときに使う言葉です。基本的にプロでなければ、書き物をするということは新規事業に似ているのかとも感じています。そういう意味では少しでも気付きがあればいいかと考えています。


 さて、冒頭に書きましたように新規事業で言われている話を「なろう」になぞらえるという事をしてみようと思います。今回は私の仮説が入っておりますので実践は自己責任でお願いいたします。


 新規事業で言われる言葉に「キャズム」と言う言葉があります。その前に「イノベーター理論」の話をしたいと思います。これは「拡散モデル」を市場に当て嵌めるという内容となります。


 まず、市場を席巻する登場人物を詳細しましょう。


■イノベーター (innovators)

市場の2.5%を占める革新的な内容に飛びつく人の事を示します。

■アーリー・アダプター (early adopters)

市場の13.5%を占める人で流行に敏感で、情報収集を自ら行い判断する人の事を示します。

■アーリー・マジョリティー (early majority)

市場の34%を占める比較的慎重派な人。ブリッジピープルとも呼ばれる

■レート・マジョリティー (late majority)

市場の34%を占める慎重派な人。周囲の大多数が試している場面を見てから同じ選択をします。

■ラガード (laggards)

市場の16.0%を占める人で最も保守的な行動をします。


 イノベーター、アーリー・アダプター、アーリー・マジョリティー で市場の50%を占める事ができ、アーリーマジョリティまで浸透すると新規事業は成功すると言われています。


 これを、なろうの世界になぞらえてみます。


■イノベーター (innovators)

新着や完結済み(短編・長編)をみて面白いと感じたらポイントを入れる人

■アーリー・アダプター (early adopters)

日間や週間ランキングをみて面白いと感じたらポイントを入れる人

■アーリー・マジョリティー (early majority)

月間ランキングの作品をみて流行だした作品を読む人

■レート・マジョリティー (late majority)

四半期ランキングの作品を読む人で外れを読みたくない人

■ラガード (laggards)

人気ジャンルのアニメ化書籍化作品のみに手を出す人


 実は私は意外とこの仮説は合っているのではないかと感じています。


 そうすると、まずイノベーターを制することができれば、最初のステップを超える事ができることになります。では、どうやったらいいのでしょうか? これには何個か答えがあります。ここでマーケティング理論の店頭を制するを使います。


1.長編作品を完結させる事

 まず、完結作品は完結作品一覧から消える時間がとても遅いです。運が悪ければ半日ほどで消えてしまいますが、運がよければ1日残ることもあります。つまりイノベーターの目に止まりやすいのです。


2.長編の最初の4話を予約投稿で4時間毎に投稿する事

 新着にできるだけ載る回数を増やす感じです。もちろん1時間で消えてしまうこともありますが、それでも4話分の4時間はイノベーターの目に止まるという形になるはずです。

 このことからも9000字の短編をだすなら、3話に分けて投稿して完結させた方が良いという事になります。


3.毎日投稿する事(平日だけでもOK)

 毎日投稿することでイノベーターが気付いてくれるかもしれません。イノベーターが仕事で忙しいなら1日のチャンスだけでなく数日の機会があったほうが確率が上がります。

 これらいずれかの方法でイノベーターの注目を得て、PTを頂き日間ランキングをまず取れたとします。その場合、次はアーリー・アダプターと対峙することになります。


 アーリー・アダプターの特徴は、ポイントが入っている理由を探して自分に合っていれば同じくポイントを入れる所にあると思っています。そして、私はこの自分に合っていればという部分の確率が約10%程度だと想定しています。10%という確率は自身のコメディ小説の話数とユニークユーザー数から割り出しました。この10%という数字にも別の根拠もありますが、ここでは話をしません。


 アーリー・アダプターと対峙することができると、いわゆる100pt越えを見えてきます。もちろん、ジャンルそのものに潜在人数が違いますので、到達の傾き(日数)は変わります。人気ジャンルであればアーリー・アダプターの人数がそのものが多いので到達は早くなりますが、その代わりランキングに入れる確率は低くなるという形になります。


 ここまで理論展開をして、たまたまエッセイを読んでいる人は、そんなの無理だよと思う人もいるかもしれません。実はアーリー・アダプターに比較的早く対峙する方法があります。ただし、諸刃の剣になりますので注意してください。


 その方法とは以下の2つです。


1.イベントに参加する

 なろうでは色々なイベントが開催されております。イベントに参加すると読まれる可能性が高くなります。新着欄から消えてもイベント読みをする人がいるので、自身の小説を読んでもらえます。重要なのはイベント読みをする人はアーリー・アダプターである確率が高いということです。ただし、面白くなければ、その人はレッテルを張られることになります。


2.ファンを作る

 ある程度作風に方向性があると、それを期待して読む人が出てきます。いわゆる逆お気に入りユーザー様です。お気に入りユーザー様の新着はなかなか流れません。いつも新着を読むわけではありませんが、運が良ければ読まれる場合があると思います。

 ここでのポイントは作品の方向性をずらさない事だと思います。ここで方向性がずれてしまうと期待外れとなってしまって読まれなくなります。もし方向性を変えるなら活動報告を入れておいた方がよいと考えます。


 ここまで話をして、なんだそんな事か! そんな事なら誰でも言えるよ! とおっしゃられる方もいるかもしれません。でも、気付いて頂きたいのですが、まだアーリー・アダプターまでしか話をしておりません。


 実は新規事業の話には続きがあります。最初に出てきた「キャズム」がポイントになります。では「キャズム」とは何なのでしょうか?


 キャズムとは、先ほどのイノベーター理論で定義された「アーリー・アダプター」から「アーリー・マジョリティー」へ物が行き渡る際に存在する溝のことを言います。この溝を超えられないと大衆には受け入れられないまま市場から消えていきます。なろうでいうなら読まれない作品になります。


 では何故キャズムが生まれるのでしょうか? それはアーリー・アダプターとアーリー・マジョリティーでは求めているものが違うと言われているからです。これは有名な話です。


 では、アーリー・マジョリティーは何を求めているのでしょうか? それは安心感といわれています。なろうになぞらえると私はジャンルに対する期待だと理解しています。コメディなら楽しさ、ホラーなら怖さ、恋愛ならキュンキュン感、異世界転生なら転生する事での優位性等々だと思います。つまり王道ということです。


 私が思う事は、王道を外すならジャンルを巻き込んで外すべきだという事です。私の大好きな作家様でコメディを書かれている方がいますが、その内容は異世界が舞台です。でも異世界作品と私は思いません。その作品は立派なコメディなのです。コメディの王道をいっているからこそアーリー・マジョリティに受け入れられるのだと思います。


 ビジネスでも同じで、ここを間違える人は失敗します。特に二番煎じの人は間違える事が多いです。きっちりと王道(顧客が期待するところ)にターゲットを絞りながら、方向性を変える柔軟さが必要だと感じています。


 余談ですが実はアーリー・マジョリティーとレート・マジョリティーの間にもキャズムがあります。でも、この話はここで語る必要もないと思います。もし、興味があれば以下の本をお読みになることをお勧めします。


キャズム ジェフリー・ムーア著 出版社翔泳社


 最後に……新ビジネスの立ち上げと運営の難しさを表現する言い回しとして「せんみつ(千三つ)」というのがあります。これは1000のアイディア・ベンチャービジネスがある場合、成功するのはそのうち3つに過ぎないというものになります(※本来は別の用途で使われている言葉です)。


 逆にいえば0.3%なので、333個の物語を書けば1個は当たるという話でもあります。この数字をみて絶望するか、失敗は当たり前なんだからと前向きになるかは人次第だと感じています。


 いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだPT取得にやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私はアーリー・アダプターを取り込めるかがランキングを駆け上がれるかのボーダーで、アーリー・マジョリティーを取り込めるかが書籍化にリーチを掛けられるボーダーのように感じています。 この話を…
[一言] キャズム 感じます 短編を投稿していると 投稿初日のポイントやPVにはそれほど差がないのですが ・そのままのろのろと失速するもの ・翌日からぽこっと上がるもの があります タイトルやあらすじ…
[良い点] ビジネスの視点で考える「なろう」、とても興味深いです♪ 読み手としての自分を考えた時に、少し失礼な言い方かもですが、「この作者さんの作品はどれを読んでも外れがない」と思うことが最近よくあり…
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