「ビジネスにおける利益モデル」と「なろうでの創作戦略」は近いものがあるかもしれません
ビジネスでは利益モデルという考え方があります。私は常々なろうでは「読み手様は時間という対価を支払って作品を読んでいます」という持論を展開しています。
それであれば、利益モデルも実は「なろう」に通じるのではないかと考えたのがこの回になります。エイドリアン・スライウォッキー著の「ザ・プロフィット」という本があります。この本は成功している企業は利益を生み出す利益モデルを創り上げているという仮定から23個の利益モデルを紹介しています。
その中で6つの利益モデルを例に挙げて、なろうに通じるものがないかを考えてみたいと思います。
・スイッチボード利益モデル
・時間利益モデル
・利益増殖モデル
・インストール利益モデル
・取引規模利益モデル
・新製品利益モデル
先に話をしますと、私の小説への取り組み方や書き方は主に「スイッチボード利益モデル」と「取引規模利益モデル」に当て嵌まっているのかなと感じています。私の書いた35作品が100pt以上を獲得している点から見てもある程度は信頼できる推測ではないかと感じています。では、各モデルの説明をしていきます。
スイッチボード利益モデルとは、需要と供給をマッチさせるモデルです。本来このモデルの本質は製品を売るために需要に合った形でパッケージとして売り出すという利益モデルなのですが、なろう用に解釈を変えたいと思います。なろうでは個人企画というものが定期的に開催されています。この個人企画では通常「お題」があるため、その企画自体の読者が集まる傾向にあります。つまり、「お題」のテーマ作品を読みたい読み手様と「お題」のテーマ作品を書いてみたい書き手様の需要と供給が合う形となります。そのため、お互いがWin-Winとなる事が多くPTも期待できると考えられます。
時間利益モデルとは、いわゆる流行にいち早く乗るというモデルです。ライバルが追いつく前に一気に勝負をかけるモデルです。例えば公式の企画などで最初に投稿するのも含むと思います。あとは「聖女」や「ざまぁ」が流行っているなら、いち早く作品にしてしまう事を示します。本来のこのモデルは他社が追いついたときに値下げをしたりするのですが、なろうでは次の流行に乗る事で差をつけるという解釈もできるかと考えます。小説の流行を読み切るという絶え間ない努力が必要なモデルとなります。
利益増殖モデルとは、強みを活かすモデルです。簡単に言うと○○と言えば△△だよねと言わせるモデルです。過去に私は自分のブランド化という話をさせて頂きましたが、これが、まさしく利益増益モデルだと思っています。読み手様の期待もありますので、作風を外した作品を書く時は注意が必要な気がします。元々読み手だった私もこの人の作品ならと思いながら読む場合が多いです。
インストール利益モデルは、いわゆるビジネスモデルのレーザーブレードといわれるもので、最初に購入される製品を安価で提供し、その後の消耗品や保守サービスで継続的に儲けます。プリンタビジネスが該当します。このモデルは顧客の使用頻度を高めるのがポイントとなります。なので、このモデルをなろう流に当て嵌めると、最初に短編を書いてウケが良いものを長編化するという形にも解釈できるかと感じます。
取引規模利益モデルは顧客に対して密接に対応し、取引規模を大きくするモデルです。売り込みだけを熱心にするのではなく、アフターケアに力をいれるモデルです。なろうで当て嵌めるとお気に入り様との交流を大切にすることになるのかと思います。やはりご縁を結ばせて頂けると作品は優先的に読まれる機会が高くなるのではないかと感じます。
新製品利益モデルは、顧客マインドシェアを高める前半に力をいれて後半の投資を緩めるモデルです。なろうで当て嵌めると長編新作を投稿するときに、最初は1日に3回投稿して徐々に緩めていく形なのかと感じます。この手法は人気の長編を書かれる書き手様でも使われている手法でもあります。
このように考えると、意外と「ビジネスにおける利益モデル」は「なろうでの創作戦略」に当て嵌まる部分が多いのかと考えます。無理矢理こじつけているのではと言われてしますと否定はできませんが、戦略の考え方は人それぞれなので、そのまま自論エッセイを進めたいと思います。
それでは「なろう」を利益モデルに例えたとして、書き手様にとっての「利益」とはいったい何に当て嵌まるのでしょうか?
書き手様によってはptという場合もあると思いまし、もしくはPVという場合もあると思います。もしかしたらランキングという書き手様もいるかもしれません。たまたま、私の作品には週間ランキングを頂けたものもありますので、現在の私の投稿作品のデータを元に考えてみたいと思います。
■ケース1:ランキング作品
運が良い事に月間ランキング5位以内を頂けた作品です。タイトルは「4つの陶器」という作品でジャンルは童話です。私が取得した事がある月間ランキングとしては最も高い作品です。
総合評価:452 pt
PV:2,616
ユニーク:1,725人
沢山の読み手様に読まれたいという書き手様からみると、このユニークの数字をどのように判断しますでしょうか? 具体的な数字を考えると戦略が変わってきます。
■ケース2:PVが多い作品
長編の作品を書きますと多くのPVを頂ける事となります。完結ブーストを頂けた作品なので週間ランキングを頂くことが出来ました。タイトルは「僕は何故か30才デビューをしたようです」という作品でジャンルはコメディーです。
総合評価:899 pt
PV:146,572
ユニーク:18,342人
ユニークの数は非常に多く、沢山の方に作品が読まれたことになります。ptが欲しいという書き手様からみると、この数字はどのように感じますでしょうか?
■ケース3:1000pt越えの作品
この作品は個人企画に参加した長編ですが、文字数としては18,000文字程度になりますから、コンテストの公募によくある10万文字以上の作品ではありません。タイトルは「私が惚れた人は隣の領主の母でした」という作品でジャンルは異世界恋愛です。
総合評価:1,110 pt
PV:25,568
ユニーク:6,342人
本作品は特に週間ランキングを頂けた作品という訳ではありませんが、月間ランキングを頂けた短編よりも多くの読み手様に読んで頂けています。そして、なろうの一つの指標になっている総合評価1,000 pt以上を獲得することができています。
■ケース4:1,000文字作品
この作品はなろうラジオの企画に参加した超短編です。文字数は1,000文字ですが、多くの総合評価を頂けました。タイトルは「おねぇ聖女が凄すぎて、歴史書には残すことができません!」という作品
総合評価:1,286 pt
PV:6,002
ユニーク:4,652人
本作品は応募開始の初期に投稿する事ができており、企画投稿作品の中で20位~40位に入る事ができていました。ただし、この作品のブックマークは85なので、なろうの一つの指標になっているブックマーク100以上は書くとすることは出来て来ません。
■ケース5:ネット大賞の一次選考を通過した作品
この作品は個人企画に参加した8000文字程度の短編ですが、運よくネット大賞の一次選考を通過した作品となります。タイトルは「天使が地に堕ちるとき」という作品でジャンルは異世界恋愛となります。
総合評価:400 pt
PV:1,042
ユニーク:808人
今まで紹介してきた作品からみれば、全ての数字は確かに少ないかもしれません。しかし、ネット大賞の一次選考を通過することができているという実績を掴むことができました。
ケースを見ていくと色々と感じる事があります。ブックマークを目標としている書き手様からみれば短編での取得は難しい傾向にあるかと感じます。1000ptを目標としているなら10万字書かなくても取得することもできることが分かります。そう考えると皆様には「何を利益としているのか」を改めて考えるということをされるのが良いかと感じています。
皆様に一方的に問いかけるだけだとフェアではありませんので、私が考える「利益とは一体何か」という部分に触れたいと思います。私は本エッセイで確かに総合評価100pt以上を語ってはいるのですが、実は指標(状況や物事に価値をつける際の基準)にはしていません。
では何を指標にしているかというと「感想」です。そして、数が指標というわけではなく、感想を頂ける作品が書くことができているかどうかという部分が大きいです。やっぱり感想というのは嬉しいものであり、モチベーションも上がります。
そもそも私が書き手になったのは、小説を書くという事がどれぐらい難しいかという事を知らないと、感想も書く事が難しいと考えたという経緯からです。
そして、なろうに登録して20,000字程度のヒューマンドラマの長編を書いていましたが、連載中は全く感想を頂ける状態ではありませんでした。長編の連載中に別途書いたSFの短編で感想を初めて頂けたときに感動した事を覚えています。そしてその事を活動報告をした時に活動報告にも初めてコメントを頂けました。
コメディー長編を書き出してから、活動報告の返信や作品の感想を多く頂けるようになり、今では逆お気に入りユーザー数のご縁は190人以上となっています。そして、多くの方から感想を頂けるようになりました。
いかがだったでしょうか? ビジネスの世界の考え方を取り入れる事で、気付きが生まれるということもあるのではないかと感じます。数字を見直すことで色々と戦略を立て直す事もできるのではないかと思います。