ビジネス視点において「お気に入り様」の意味を考えてみましょう
今回はビジネス視点におけるファンサービスの考え方を書いていきたいと思います。
フレデリック・F・レイクヘルドというハーバード大学出身のコンサルタントが「顧客ロイヤリティマネジメント」という本を出しています。この本の内容はずばり、新規顧客よりも今の顧客が大事だという事を説いています。
この考え方は日本では昔から行われてきました。いわゆる御用伺ごよううかがいの商売と呼ばれるものです。お得意様を作る事で買い続けて頂ける事を期待します。お得意様側もこの商人が勧めるものならという形で購入をします。現在ではネット販売が流行っていますので、そういうのは本当か?と思われる方もいますが、飲食ビジネスなどではリピーターという考え方で定着しています。
自身の商売の範囲の顧客の要望を満たすことで、売り上げがアップするという事ですが、そのような事を書くと「顧客に媚びへつらうのか?」という人もいらっしゃいます。しかしながら、私が言いたいことはそうではありません。この「顧客ロイヤルティ」の考え方に、なろう視点として別の考え方があるという事が言いたいのです。
なろうの世界では、読み手と書き手がいます。しかしながら、読み手でありながら書き手でもある人もいます。私の感覚ですが、底辺を嘆いている方の中にはお気に入りユーザー様の登録数が少ない方が多いなと思っています。
「はあ? なんでお気に入りユーザー登録しなきゃいけないのか? 自分の小説は凄いのだから逆お気に入り様が増えるから問題ない!」
と言われる方もいますが、私からすると自分がお気に入り登録もしていないのに、どうして他人から簡単にお気に入り登録されると思っているのかがわかりません。経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんの『お汁粉屋さん』の逸話があります。(←幸之助さんは先生と呼ばれるのを嫌っていましたので尊重して記載しています)
この話は部下に対して、幸之助さんがいきなりお汁粉屋をしろと言いだしたところから始まります。その逸話を書きます。(出典:エピソードで読む松下幸之助 PHP総合研究所)
「君は、まず明日から何をやるか」
「新橋、銀座、有楽町と歩いて、有名なしるこ屋三軒を調査します」
「何を調査するのや」
「その店が何故流行ってのか、理由を具体的に掴みます」
「次は?」
「そのしるこに負けないしるこを、どうしてつくるか研究します。小豆はどこのがよいか。炊く時間と火力、味つけなどです」
「おいしいしるこの味が決まったとしよう。ではその次は?」
「…………」
「君、その決めた味について、奥さんに聞いてみないかん。しかし、奥さんは身内やから『うまい』と言うやろ。だから、さらに近所の人たちにも理由を説明して、味見をお願いしてまわることや」
「はい、必ずそれをやります」
「自分の決めた味に自信をもつこと。それから大事なのは、毎日毎日、つくるごとに決めたとおりにできているかどうかみずからチェックすることや」
「必ず実行します」
「それだけではまだあかんよ。毎日初めてのお客様に、しるこの味はいかがですかときくことが必要やな」
私はこの話は真理をついていると考えています。そして書き手様の中には、これをナチュラルに実行されている方が多いです。また一流の料理人と言われる人は、色々な料理を食べるとも聞きます。つまり、書き手様は読み手様でもあるともいえるという事です。
私自身が行っている事でもありますが、やるべき事はポイントを求めるのではなく、感想を求めるという事になります。そして、感想を書いて頂いた方の小説を読み、その人の小説が他の人にどのように読まれているかを知るという事が、エピソードに沿った考え方になるのではないかと感じます。
ここで顧客ロイアリティマネジメントに戻ります。感想を頂くことができる読み手兼書き手様とご縁を結ばせてもらえたら、その方とのご縁を切らないようにした方がよいです。何故ならばビジネス的な考え方として、一見様は今後自分の所に来なくなるかもしれませんがリピーターになって頂けたら、機会が増えるようになります。
確率論で話をすれば、毎日凄い数の小説が投稿されている中において、なにもせずに自身の小説が読まれる機会と、しっかりと感想を書いて頂ける方と相互でお気に入りになっている状態で小説が読まれる機会はどちらの方が高いでしょうか?
エピソードの話に戻せば、何故流行っているのか理由を具体的に探るのは「タイトルの追及」とよく似ています。しかし、「…………」の先である感想を求める事をやっていない底辺を嘆いている書き手様が多いのではないかと私は考えています。
感想は恥ずかしいという方もいるかもしれませんが、感想を自分が書かないでどうして自分の作品に感想が貰えると思えるのでしょうか? レビューは確かに新着レビューに入るので恥ずかしいというのは分かりますが、感想はそういうものではないと私は考えます。
あくまでも、私は底辺を嘆いている人を対象にこのエッセイを書いています。嘆いている人は今までどれぐらいの評価を付けて来たのでしょうか? このような事を書くと「それは相互評価だ」と断罪する人がいますが、私はビジネス的に反論したいと思います。「あなたは顧客ロイヤルティマネジメント」をしていますか?と……
顧客ロイアリティマネジメントは3つの顧客に分かれます。「見込み顧客」「新規顧客」「お得意様」です。「自分の作品は素晴らしいから読まれるはずだ」と言っている方々は「見込み顧客」で話している状態です。余程の運と才能がなければ、ちょっと書いただけでは作品は日の目を見る事はないとしかビジネス的に言えません。
最後に、顧客維持率を計算で示してみましょう。あるお店で95%と50%の支持があった場合のシミュレーションです。何もしなければ5年後の計算として、95%の支持率があった場合は75%残りますが、50%の支持率の場合はわずか5%の顧客しか残らない事になります。
私は初めてなろうに来た時に、たまたまスコップ(掘り起こしで読む)をして頂いた事もあり、気の向いたときにスコップを行っています。ただ、やはりご縁を大切にしたいのでお気に入り様の作品を読むことが多いです。これは普通の心情だとおもいます。
いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだPT獲得にやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております。