強みを上手く使う経営手法をなろうに展開するのはどうでしょうか?
ビジネスで一時期「コア・コンピタンス経営」という言葉が流行りました。
この言葉は、企業コンサルタントのゲイリー・ハメル氏とハーバード大学経営学博士号のC.K.ブラハード氏の共著である「未来のための競争(Competing for the Future)」に出てきている言葉で、1995年の発売当時は日本企業を成功モデルとして書いた本となります。
残念ながら成功モデルと言われた日本はその後、不景気に入ったため基礎研究を辞め自分の強みを手放すという事を行ったので、世界に出遅れてしまうという状況が多くみられるようになりました。そのような中で上手く自分の強みを活かした企業があります。
富士フイルムといえば、皆様もご存じのカメラの会社というイメージがありますが、もともとはフイルムを作っていた会社です。その収益構造は2000年当時にカメラ事業54%でしたが、2020年はカメラ事業15%になっています。その代わりに立ち上がっているのは、ヘルスケア(化粧品)事業や複合機プリンター事業や、それに関連するサービスです。
ここまで書いて、小説と何が関係あるんだという話になるのですが、私が「コア・コンピタンス」という言葉を出させて頂いたのは、強みを活かすと面白いものが書けるのではないかということと、その強みの活かし方には法則があるということです。
私の考えで申し訳ありませんが、書き物は「自分の時間」という対価を支払って読むものです。その有限の時間を使うと考えた場合、それ相応の結果が求められると思っています。例えばゲームを買ったとして、そのゲームが面白くなかったらどう感じるでしょうか? 二度と買わないって思いませんか? では、なろう小説は無料だから読みたくない人は読まなくてもいいということでしょうか?
日々新しい小説が生まれ、面白いと評価されたらランキングに載り、その量が沢山ある中で「無料」ということだけで自分の小説が読まれると思っているのであれば、それは違うのではないでしょうか? それこそ、よほどの才能がない限り、スコップされて読まれるという機会は少ないと感じます。
その時に読み手様に「あ、この作品は面白い」と感じてもらうためのものが「コア・コンピタンス」という考え方になります。
「コア・コンピタンス」は自社の強みという考え方なのですが、前述の富士フイルムの場合は、カメラ事業で培ってきたフイルムの薄膜技術を応用して化粧品を開発したり、写真の転写技術を応用してコピー機を作り、年々縮小傾向にあったカメラ事業を支える異なる事業を立ち上げました。
なろうに応用すれば、自分が得意な知識の展開とかになると思います。例をあげれば、蝉川夏哉先生の「異世界居酒屋のぶ」や、江口連先生の「とんでもスキルで異世界放浪メシ」でしょうか? 料理という専門知識を物語に展開し、読み手にもわかる情景を生み出すことで、読んでいて楽しいという気持ちにさせて頂ける作品です。
実はここで、重要な事を書きました。それは最後書いた「読んでいて楽しいという気持ち」という言葉です。先ほど書いた通り、読み手様は時間という対価を支払っています。つまり「読んでいて楽しいという気持ち」が生まれなければ、せっかく手に取ってもらえる機会を得たとしても次につながる事がないという事になります。
コア・コンピタンスにおける強みの活かし方には法則あると私が書いた通り、「コア技術」と「顧客利益」の組み合わせが重要になります。そして、「コア技術」は磨き続ける必要があり、「顧客利益」は調査し続ける必要があります。
ここで「おいおい、お前は100pt以下の作者を対象としているのでは?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、私は真面目にその方々を対象にして書いています。まず、手に取ってもらえる機会が少ない事が問題なので、手に取ってもらったときに確実にファンになってもらう必要があると思っています。そういう意味では「良いもの」を書いているのにと嘆いている人には、ぴったりと来るのではと思います。
まず、コア・コンピタンスの話です。あなたの得意分野のストーリー展開はなんでしょうか? 心情表現もので主人公がハッピーになっていく物語でしょうか? それともコメディで所々におもしろい内容を盛り込む物語でしょうか? ざまぁ展開にもっていく物語でしょうか? ハラハラさせて気分爽快にさせる物語でしょうか?
ここで間違って貰いたくないのは、あなたが書きたいストーリーそのものではないという事です。あなたが書きたいストーリーとストーリー展開が一致していれば良いのですが、そうでないのであればファンになって貰える方ができるまでは封印しておいた方が良いです。懇意になる読み手様ができたら存分に読んでもらいましょう。
自分の得意なストーリー展開がわからないというのであれば、短編を数作書いてみましょう。その中でポイントが高いのが最初にあなたが持っているコア技術と考えてよいと思います。多分、ここまで書いて実はお前「顧客利益」を先にしていないか? と思った方がいるかもしれませんが、その通りです。まずはあなたが持っている「顧客利益」つまり、顧客に訴える事ができる力がどこにあるのかを調べる必要があるということです。
自分が得意と思っているストーリー展開で少しのポイントも取れないのなら、それは顧客利益と一致していないのですから、当然読まれ続ける確率は下がります。まずは顧客利益がどこにあるのかをしっかりと見極める事です。私の例を言えば、バッドストーリーではありますが、キャラクターを俺様に尖らせることで意外と読み手様から高評価を頂けたということがあります。
そして「コア技術」です。あなたが得意な分野はなんでしょうか? 料理などは競争率が高めな気がします。化学や数学の知識などは一部の方に受けが良いです。ミリタリーなども良いのですが、得意なところを深堀しすぎると読み手様としては引いてしまうので、それなりにわかるという初級レベルで最初は止めておくとよいかと感じます。
この「コア技術」を難しく考える人もいますが、好きなマンガでも良いと思います。ライバル物が好きならライバル物を上手く書くことができるのではないでしょうか? 私はコメディが好きなのでコメディ要素をいれる場合が多くあります。まずは自分がこれなら詳しく書ける(コア知識満載の場合は軽く書いて面白く表現できる)を目指すと、よいのではないかと感じます。
そして「コア・コンピタンス経営」における商品開発で最も重要な事は、その商品が自分で買いたいものなのかどうかです。これを忘れて自身の技術に溺れて「わが社の技術は凄いからお客は買うはずだ」と考える人が多くいます。あえて「間違っている」と断言します。なので、小説を書いた後に自分の小説を読んでください。それは読みたい小説ですか?
最後に「読みたい小説ですか?」と書かせてもらったのは、余りにも中身がない短編が多かったりするからです。短くする美徳がある作品がありますが、物語形式で1000字とか起承転結全部書けないと思います(詩や童話は除きます)。よっぽど洗練した書き手様ならわかりますが、素人で短文で書ける物語は私は殆ど見たことがありません。
あと、自分のこだわりで、改行をたくさん入れたり、「ああああああああ」というのを必要以上にいれたり、文章の書き方のルールを無視したりしている人がいますが、それは自分の作品を読んでもらえるようにしてからやりましょう。厳しい言い方をしますが、私なら時間の無駄だと思ってその小説は直ぐにブラウザーバック(通称:ブラバ)します。
読み手様があっての書き手です。読み手様に媚びろとは言いませんが、自分が書きたい小説ではなく、まず自分の強みを出せる小説を書くというのが、「経営手法」に基づいた戦略だと思います。商売も最後は「顧客満足」なので同じだと思っています。
いかがでしたでしょうか? 「なろう」の世界をビジネスとして捉え、「まだまだPTを獲得するのにはやれることがある!」と思われた方がいらっしゃれば、書いた甲斐があったかなぁと感じております