第一話、はじめの一歩、株でびゅう! 株でびゅう!
いえーい、みなさん、かぶにちは!
毎度おなじみの、ちょうさんです。はじめましてー。
ちょうさんとおよびー。
というわけで、今日から始める「もう株」。
「もう株」というのは、「儲かる株式」の略ですね、いえーい。
で(ここからはまじめに)
第一話である今日は、俺がこれまで、株というものを売買して、どれだけ損失してきたかを、赤裸々に語っていきたいと思います。
あれはかれこれ、2年ちょい前……。
俺がまだ株っていうものを全くしらない、うぶなちょびヒゲ坊やだった頃のことだ。そんな俺が、何を血迷ったか、株というものを初めてしまったのだお!
俺は2018年6月、R天銀行という所に、口座を作り、そこにひとまず、二万円を振り込みました。その日のうちに、PCで、振り込んだ二万円が確認できました。やったぜ、これで俺も今日から、株トレーダーだ、大人の仲間入りだぜー。
意気揚々と、株売買を始めようとした俺の脳内で、むっくりと起き上がった茶色い悪魔が、私にささやきかけました。
「おい、お前なあ。はあ……。株というやつはなあ、資本が決めてなんやで。2万円ぽっちで、株で儲けようだなんて! 株をなめるなあ!」
俺は、そんな脳内悪魔の言葉にだまされて、二百万円をにぎりしめ、ふらふらとATMまで出かけ、その二百万円を、楽天銀行に振り込んだのであった!
「ちゃりーん! ありがとうござまあす!」
い、いや……。
まだ負けた訳ではない。
俺の元の口座にあった二百万円を、R天銀行に、移動しただけだ!
ははは!
その日から、俺の戦いが始まった!
といっても、その二百万円を、すぐに運用したわけではなかった。なぜなら、茶色い悪魔が、またしても俺の邪魔をしたからだ!
「おい、待て待て!」
「ん?」
「ん? じゃねえだろ! お前今その銘柄買おうとしたろ! 値段が八割引きされたからお買い得だって思ったろ! あかんやろ! それじゃあかんやろ!」
「んー?」
俺は茶色い悪魔の言ってることがわからず、首をかしげました。
悪魔は言いました。
「一日で80パーセントも値段が落ちとるんや、何か悪いニュースでも流れとるんやろ! 何がお買い得や! 顔洗って、出直してこんかーい!」
「ぬう……」
「そもそもな、根拠もなく株を買うなんて、ただのバクチやで? それじゃあアカンやで? 株はな、投資なんや。バクチは、投機や。投資と投機は、別ものやで? 今俺いいこと言った!」
茶色い悪魔がどや顔をしている。俺はむっときて、悪魔を無視してトレードソフトを眺めた。
「ん?」
俺はくりくりとマウスのホイールを回転させる指を止めた。
「ふむ。コード4088、エ〇・〇〇〇ターか。エ〇というキーワードも好みだし、何より今はエコロジーが大流行だ! これを買わずして何を買う! ぽちっとな!」
「あああああああ!」
俺は茶色い悪魔に止められるよりも素早く、「注文確定」ボタンをぽちっと押した。俺の戦いが、今始まったのだ!
「お、お前何しとるんや! 何の根拠もなく購入して、どないするんや!」
「根拠? あるではないか。俺が好きな会社名であるという根拠がな!」
「は、はあ……」
悪魔が頭を押さえて、ため息をついた。
「お、これもエコロジーっぽくていい企業名だな。ようし、おじちゃん投資したろ、ぽちっとな」
「あ、あああああああ!」またもや悪魔が絶叫した。
俺は二つ目の銘柄、「1952 〇日本空調」を購入していた。これまたエコロジーブームを彷彿とさせる、すばらしい企業名である。俺は自分の勘の鋭さに恐怖した。
だが数日後……。
「な? 損したやろ? 俺が言った通りやろ?」
悪魔のいう通りだった。コード4088「エ〇・〇〇〇ター」と、コード1952「〇日本空調」で、俺は約一万二千円の損害を被っていた。元金が二百二万円だから、0.5%の損失だ。これは痛い。いや、どれくらい痛いのか、わからないが。
俺は悪魔に動揺をさとられまいと、強がりを言った。
「ん? お前、損するとか言ったっけ? 俺は知らんなあ」
茶色い悪魔は、またため息をついて、俺のスマホをいじり、エロ画像を収集し始めた。俺は慌てて悪魔を止めた。
「おいお前何してんだ! やめろ!」
悪魔はちらっと俺を見て、スマホを放り出して寝転がった。
「はあ……。お前センスねえよ。もう株なんて、やめちまえ」
「ふむ! だが断る! ぽちっとなあ!」
「お、おいwww」
俺は次の戦いを開始した! 購入したのはコード2083、「〇ニカル」だった。
4日後!
「うおおおおおおお! どんなもんじゃあい!」絶叫する俺。
「なん、だと?」驚愕する茶色い悪魔。
俺が購入したコード2083、「〇ニカル」は急騰し、俺は4日で3万円ちかい利益をたたき出した!
「ふっ、〇日本空調とエ〇・〇〇〇ターの損失を差し引いても、お釣りがきちまったぜ」
今度は悪魔がうなる番だった。
「ぐ、ぐぬぬ……。ど素人め、素人のビギナーズラックめ、おそるべしい」
「ラックだと? そうじゃねえよ。俺は天才だよ。センスだよセンス! ははははは!」
俺は有頂天になっていた。
そんな天狗の鼻を、俺はこの後一カ月で、ぽっきりとへし折られることになるのだった。
<つづく>