不機嫌な僕の瞳に映る君が微笑んだ。
___僕は、いつも不機嫌だ!
彼女が、僕のいう事を全然聞いてくれない!
___何を僕が、彼女に言っても?
彼女は、横に首を振るだけ。
僕は彼女の、【NO】という答えにうんざりしていたからだ。
___僕はというと?
彼女が、言ったことを忠実に叶える事を心掛けて生きている。
僕にとって、彼女は最強の女だと思っているからだ!
・・・これほど、
僕が彼女に対して、気を遣うのは?
彼女の事が好きという気持ちと、怒られたくないから。
*
___この前も。
二人で、デートをする事になった時、僕は水族館がいいと
言ったのに、彼女が強引に遊園地と言って、そのまま遊園地に
行くことになったんだ。
・・・僕は、高所恐怖症で、高いところもダメだし!
絶叫系も苦手なのに、無理矢理彼女が僕を絶叫マシーンに乗せる。
僕は、あまりにも怖すぎて身体が小刻みに震えているというのに。
彼女は、そんな僕を見て笑っているだけ。
・・・僕は、思わず彼女にこう言った。
『___怖いから、手を握ってて!』
『___嫌!』
『・・・なんで?』
『だって! 私は怖くないから!』
『・・・もう、いいよ。』
『じゃあ~楽しむわよ~』
『・・・・・・』
___僕は彼女の、神経がよく分からない。
僕が怖がっているのを、見て楽しむ彼女に僕は少し
不機嫌そうな顔をすると? また、それが楽しいのか?
僕の瞳に映る彼女は、ニヤッと微笑んでいた。
・・・そもそも、
彼女は、ド・S女で! 僕は普通の男の子なんだよ。
M男じゃないから、こういうのは勘弁してほしい。
僕が嫌がる事や、嫌いなモノをワザと見せびらかしてきたり。
彼女の嫌がらせがハンパないんだよ!
僕の嫌な事を、熟知しているのか?
あれやこれやと何でも、僕で試したがる女。
___それでも、僕が彼女と別れないのは?
やっぱり、僕の方が彼女を好きだからだと思う。
どんなに、彼女が僕に嫌がらせをしてきても。
僕は、彼女を許してしまうからだ。
急に、彼女と街を歩いている時?
彼女が僕の腕を引っ張って、人気のないところで僕にビンタした。
・・・こういう事は、よくある事だった。
急に、彼女がイライラして僕に八つ当たりしてくるんだ。
一緒に居ても?
彼女は、僕を蹴ったり叩いたりする事がある。
たぶん? これは! “DV”というやつだと思うのだけど?
まさか!? 男性が女性にDVされているのは、他の人にバレたくない!
ただの、恋人同士で起きる喧嘩だと僕は思うようにしている。
子供の頃から僕は父親に、【どんな事があっても、子供や女性に手を
出すような男になるな!】と強く言われて育ったから。
僕は彼女に一度も、手を出す事はないし!
ひたすら、彼女に殴られ蹴られても我慢している。
*
・・・だけど?
この日は、いつもと違ったんだ。
彼女がナイフを持って、僕を追いかけ回し刺そうとしたからだ!
『___ムカつくんだよ! いつもいつもヘラヘラしやがって!』
『・・・やめろ! ナイフを離せ! ケガするだろうが?』
『___うるさい! 私はアンタが大嫌いなんだよ!』
『・・・・・・』
___この時、僕は初めて...。
目が覚めたんだ!
彼女が僕に、暴力を振るうのは?
愛情の裏返しだとずっと思っていたから、僕は彼女を許せたんだと。
・・・だけど?
今日の、彼女は違う。
いや? 今までだって! 違ったのかもしれない!
僕が勝手に、そう思っていただけなのだろうと。
そう、この時思ったんだ。
___彼女は、僕を一ミリも好きじゃないと。
僕は、携帯を握り直ぐに、警察を呼んだんだ。
『スミマセン! 今、彼女にナイフで刺されそうになってるんです!
直ぐに、来てください!』
『___分かりました!』
・・・間一髪のところで、警察がやってきた。
『___おーい! 直ぐに彼女を押さえろ!』
【ギャーーーアアア! やめろ! 離せ! うわーーーあああ!】
『・・・奈々未、』
彼女は、2人の男性警察官に4畳半の畳に押さえつけられて。
喚き散らしていた。まるで、精神がおかしくなったように...。
___その後、彼女は殺人未遂で警察に捕まった。
僕は、擦り傷とナイフでかすった傷が数か所あるだけで済んだんだ。
___彼女のあの時の目つきは、いつも以上に僕に対して殺意を感じた。
僕を本気で殺そうとした目。
今でも、僕の脳裏に焼き付いている。
・・・今は?
僕は彼女とは別れて、別の女性と付き合っている。
今の彼女は、おっとりとしていて本当に優しい子。
もう、僕を叩く事もないし! 蹴ることもない女の子なんだ。
___あんまり、
Sキャラの女の子は、彼女には向いていないと思った。
だって! 僕はM男じゃないから!
最後までお読みいただきありがとうございます。