表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人類シミュレーター(リトライ)

作者: SchwarzeKatze

「舞、起きなさい! 遅れるわよ!」

「あと五分……」

「何言ってるの! さっさと起きなさい!」

 お母さんに布団を引っ剥がされた。私は最後の抵抗とばかりに、布団の裾を手で引っ張る。抵抗むなしく、お母さんに手をふりほどかれて。そして、私のもうろうとした寝ぼけた意識は、再起動を始めた。

「お母さん! 今何時?」

「七時五十分よ……全く、寝起き悪いんだから。遅れるわよ?」

「うそ!? 何でもっと早く起こしてくれなかったの!?」

「起こしたわよ! 何度も! いいから準備しなさい!」

 覚醒した私は、急いで学校の準備をする。

 ヤバい! 翔太との通学に間に合わない! 髪を櫛でとかして、上に持ち上げてゴムでとめる。いつもの髪型でお気に入りのポニーテール。

 小さい時に翔太が長い髪が好きだって……って、感傷に浸ってる場合じゃない! 食事をとるために急いでリビングに向う。

『では、次のニュースです。火星探索基地にて史上最高のスーパーコンピューターを構築するプロジェクト、【アースシミュレーター】。本日火星に到着する予定で、まもなく大気圏に突入予定で……』

 ホログラムビジョン、いわゆるHVのニュースを横目に、急いで朝食をかき込む。間に合わない! 私は食べ残して、パンだけかっさらって玄関に飛び込む。

「コラ! 行儀が悪い!!」

「ひかたなひの!!」

 私は学校に向かう。

 玄関を出たあたりで、私の視界にメッセージの着信が左下に入る。仕組みはよくわからないけど、目に見える形で表示する端末、ウエアブル端末の装着をしなければならない。実際の所これが無いと不便。というか、生活が出来ないくらい。買い物や学校にも入れないくらい必須。以前、付け忘れて学校に行って、入れなかったく家にも戻れないなんて、大変な思いをした事もある。

 それはおいといて、私はそのメッセージを慌てて開く。翔太からだ。

『今日はちゃんと起きれた?』

 ギクッ! お母さんとの毎朝のやりとりを思い出す。翔太には知られたくな……って、バレてるだろうけど。

『お、起きれたに決まってるじゃない!』

『わかった、わかった。ボイスに切り替えても良い?』

 今、私は遅れを取り戻そうと走っている。息が乱れているのがバレる!

『直接会って話すのが良いの!』

『どうせ、息切れしてるから、嫌なんだろ?』

『うるさい!』

 そう私は、メッセージを送って、全力疾走で翔太との合流地点に翔太よりも先に着く。そして、呼吸を整える。

「おそーい!」

「……汗」

「き、気のせいなんだから!」

「走ってたの、丸わかりだよ」

「う、うるさい!!」  

 整えた息も無駄になる。そして私は、別の汗をかいてしまう。バレてる、気恥ずかしくなってしまった。

「じゃあ、いつもの話しながら行こうか」

「う、うん」

 翔太の好きな話。『水槽の脳』だったかな。よくわからないけど、私は必至について行こうとする。

「僕はこの世界は、作られた世界の可能性があるって説。僕は否定的だね。潜在意識だけコンピュータにつながれている。そんな世界だと主張する人も居るんだ。けど、僕はそんなことは無いと思うんだよね」

「へぇ……。何でそう思うの?」

「だって、僕達の人生を丸ごとスーパーコンピューターに登録するんだよ? まず先にそんなスーパーコンピューターを作る必要がある。そして僕達の脳内内容を全部移す必要がある。さらにその一人ひとりに自我を持たせなければならない。電子回路が自我を持つって、超高度な技術が必要で、これが出来ないと土台無理な話なんだ」

「う、うん。凄いね! そんなこと考えてるんだ」

「……今までの話、理解してないでしょ?」

「い、いや、理解してる、理解してる! 今の世界が現実で、架空の世界では無いって!」

「いつもの答えだね……まぁ、良いけど」

 翔太の言ってることは、ほとんどわからない。けど、そんな話をしてくる時の生き生きとした表情は、私にとっては癒しになる。今日一日、学校での元気が湧く。

「まぁ、過去言われたネタだけど、『卵が先か鶏が先か』なんて議論があって。それと似た話だよ。ちなみに鶏が先って言うことで片づいたらしいけどね。この話もそう。リアルが先かヴァーチャルが先か。僕はリアルが先だし、僕達がここに存在するから。意志を持って動いているから。自我を持って動いているから。だから、今の世界は現実だと思うんだ」

 他愛のない話。

 哲学のミステリ。

 科学のミステリ。

 そんな話が好きな翔太。

 わからないけど、わかろうとする私。

 きっと、私と翔太とで話をしてても、解決はしない問題。

 いや、解決したら、翔太は有名になるだろうけど。

 そんな生活も悪くないなと、妄想する私。

 この日常が、私は好きだ。

 壊したくない。いや、ずっと壊れない。そう信じてる。


 でも。

 この日は違った。

 不意に周りが光であふれかえる。

「な、なに!?」

「舞! 大丈夫か!?」

 翔太の声。光に負けてしまった目が、徐々に慣れてくる。

 そして。

 空を見上げると、そこには赤い火の玉が見えた。

「あれは……」

 翔太の言葉が届く前に、その火の玉は地面を割った。


 ◆◆◆◆◆◆


「今回の生存率は二十五パーセントです」

「二十五パーセント……これが限界なのか?」

「先生、これで終わりにしますか?」

「いや、人類の生存ルートまで繰り返し、シミュレートする。生存ルートを見つけるまで、実験は続ける」

「分かりました。再起動します」

 

  


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ほんとうにシュミレーターだったんですね…。びっくりしてしまいました。 何回も2人はシュミレートされているのでしょうか。考えさせられます。素敵なお話をありがとうございました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ